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カンボジア地雷除去支援

江角泰 (えずみ たい)

NPO法人テラ・ルネッサンスのカンボジア事業担当者。
大学時代に、NGO地雷ゼロ宮崎のメンバーとして参加した「テラ・ルネッサンスのカンボジア・スタディツアー」が、テラルネッサンスとの出会い。
現在は、カンボジアにおける地雷問題に取り組む他、弊社が進めるラオス支援活動も担当中。

【Vol.29】「誰もが未来を創る力を持っている」ことを教えてくれる村人たち

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 NPO法人テラ・ルネッサンスは、2008年10月からカンボジア北西部、バッタンバン州のオッチョンボック村で活動しています。いくつかの支援活動をしている中の1つに、村での健康保険の制度作りがあります。貧困層を中心に、村の中に作った住民組織のメンバーおよそ100家族が、毎月少額(1000リエル※=0.25ドル)ずつを住民組織に貯蓄していき、メンバーが病気や怪我、もしくは死亡した場合に保険金として提供します。

 この健康保険の仕組みの重要性を実感したのは、2005年に戦争で負傷した除隊兵士の家族をサポートしていた時でした。大半の家族は生活を向上させていましたが、少数の家族は、いくらサポートしてもなかなか生活を向上できずにいました。そうした家族の多くが抱えていた問題は、家庭内での不仲か、健康面での問題でした。前者で多いのは、家庭内暴力や不倫や離婚。家庭内の問題は、干渉することが難しいのが現実です。一方後者の場合は、ちょっとした風邪をひいたり、交通事故にあったり、デング熱やマラリアになったりするなど、誰でも罹りうる一般的な病気や感染症、怪我が大半でした。しかし最貧困層にとっては、ちょっとした病気や怪我も、生活に大打撃を与えてしまいます。貧困層の場合、病院に行くのは本当に重病や重症な時だけで、あとは薬局で薬を買って飲むぐらいが普通です。そのため、きちんとした治療を受けられずに重症化する場合もあります。また、病気や怪我をしているのが一家の働き手だった場合、その期間の収入がなくなってしまいます。社会保障制度が整っていないカンボジアでは、貧困層の生活は非常に脆弱なのです。本来は国や行政がやることですが、今のカンボジア政府が、社会保障制度を整えることができるようになるのは、まだまだ先の話だといわれています。大きな行政単位では、貧困層の住む農村地域に必要な政策は後回しにされます。

 オッチョンボック村で始めた健康保険の仕組みでは、こうした脆弱な貧しい村人たちを救うために、村人たちが自分たちで健康保険制度を運営します。しかし、当初その制度には問題もありました。この制度は、住民組織のメンバーから回収したお金の中から、健康面に問題があったメンバーへ健康保険を適用し、お金を渡すやり方にしていましたが、適用される保険額が少額なので、村人の生活を守るほどの効果を十分発揮しているとはいえませんでした。驚いたことに、公式に証明するものがあれば長寿世界一の可能性もある120歳のおばあちゃんが村に住んでいますが、彼女のケースもその1つの例でした。名前はソック・ポッさんといい、乾季が始まり、涼しくなる時期に決まって風邪をひくそうです。去年も風邪をひいて熱が出ましたが、薬を購入するために50
,000リエルを使いました。そのうちの10,000リエルは、健康保険が適用されました。80歳になる娘夫婦は、「健康保険はとても重要なものだ、ただ、今の保険額は少ない」と話していました。

 テラ・ルネッサンスのスタッフからは特に、この問題について村人たちに話をしませんでしたが、この少ない保険額をどうにかしようと、村人たちは自分たちで会議を開き、話し合いました。そして問題を解決するために、健康保険として無利子・無担保で貸し出す方法に変更しました。今まで健康保険がないときは、高利貸しから月5~10%の利子で借金をしなければならなかったのに比べれば、融資でも十分生活の保護になると村人たちは考えました。また、融資にすることで、貯蓄額を増やし、借りられる額を徐々に増やしていくことができます。アイデアを村人たちが出し合い、変更したのです。このことは非常に重要なことです。自分たちの生活を守るために、自分たちが積極的に話し合い社会を変えていく―。この村では、村にアクセスする道が非常に悪く、そのために農作物も安く買いたたかれていましたが、村人たちが自分たちでお金を出し合って道路を修復したこともありました。強権的な独裁状態にある今のカンボジアの政権を選挙で変えることが難しいなかで、諦めるのではなく、自分たちで社会を変えようとしている村人たちに勇気づけられます。去年まで地雷原の中で暮らしていたほど、ほとんどの村人が貧しいですが、村に来ると、なぜか将来への大きな希望を感じます。「誰もが未来を造る力を持っている」ということを、村人たちが改めて教えてくれるのです。

※カンボジアの通貨。1ドル=約4000リエル。カンボジア北西部のバッタンバン州では、カンボジア・リエルの他、タイ・バーツやUS$も流通しており、使用できる。


江角泰(えずみ たい)

江角泰(えずみ たい)氏
NPO法人テラ・ルネッサンスのカンボジア事業担当者。
大学時代に、NGO地雷ゼロ宮崎のメンバーとして参加した「テラ・ルネッサンスのカンボジア・スタディツアー」が、テラルネッサンスとの出会い。
現在は、カンボジアにおける地雷問題に取り組む他、弊社が進めるラオス支援活動も担当中。

- カンボジア地雷除去支援 - 2010年1月発刊 Vol.29

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