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GNHの国からブータン人にききました

国際事業部 ブータン駐在員

松尾 茜 (まつお あかね)

東京の大手旅行会社に5年間勤務した後、2012年よりブータン王国の首都ティンプー在住。ブータンの持続可能な観光開発事業に携わっている。地域固有の自然や文化、昔ながらの人々の生活を守りながら、ゆるやかに交流人口を増やし、地域経済を、訪れた人の心身を、着実に豊かにしていくような観光を、世界各地で促進していくことがライフワーク。

死は怖いですか?

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ブータンと仏教

ブータン王国は世界で唯一チベット仏教を国教とする国。8世紀から現在まで、その信仰は人々の生活に深く根づいてきました。08年の民主化以降、政治は議会が担っていますが、現在も、ブータン仏教の権威である大僧正のジェ・ケンポは国王と同等の地位にあり、ジェ・ケンポが占星術で定めた「ブータン暦」が使われています。人々は毎朝晩、自宅の仏壇か近くの寺院で「すべての生きとし生けるもの」のために祈りをささげ、徳を積みます。

お葬式も、もちろんチベット仏教の教えにのっとって執りおこなわれます。自宅でのお通夜の後、ご遺体は火葬場に運ばれます。火葬に適した日もブータン暦に基づいて定められているため、複数のご遺体が同時に火葬されることがほとんど。参列者は自分の親族や知人のみならず、火葬されるすべてのご遺体を廻って供養の祈りを捧げます。火葬場は寺院に併設されており、僧侶たちが朝から晩まで供養の祈祷(プジャ)を執りおこないます。その後、遺灰を粘土と一緒に混ぜ「ツァツァ」という小さな円錐形の仏塔を、煩悩の数108個作り、川辺や山の頂、寺院の屋根裏など風通しが良い場所に供えます。四十九日後、亡くなった方は別の身体に生まれ変わっているとされ、遺灰は形だけのもの。風に吹かれて自然と風化することを良しとします。そのためブータンには、お墓も無ければ遺影を仏壇に飾ることもありません。

ブータン人の死生観

では実際のところ、ブータンの人々は「死」についてどう考えているのか聞いてみました。仏教の死生観が、そのまま考え方に表れています。若い人たちも死について日頃から考えているため、みなさん即答。チベット仏教の考えでは、そもそも「人間」として生まれてきたことが苦行の始まりで、必ず死がやってくることを認識しています。そして、死後のさらなる苦しみから逃れるために、生きている間、なるべく多くの「徳」を積むのです。興味深いのは、輪廻転生を信じるブータンの人々のこんな考えです。「人間に生まれたからこそ、徳を積むことも罪を重ねることもできる。私たちは、それを判断する知恵を持っているのです。もし来世、動物に生まれ変わったら、知恵が無いので『徳を積む』という選択すらできません。ゆえに人間に生まれたことは、ものすごく幸運なこと。いま徳を積まなければ、次にいつ徳を積むチャンスがあるかわかりません」。

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「死」を考えることは「今」を考えること。与えられた状況で常に最善を尽くし、徳を積むように努めていれば、万が一、災害などが起こって死んでしまっても天国に行けるので、後悔は無い。現代の日本社会で、そう考えるのは難しいかもしれません。でも、毎日を大切に、常に「良いこと」をするように心がける……そんなちょっとした心の持ちようであれば、生活に取り入れられるかもしれませんね。

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遺灰から作られた小さな仏塔“ツァツァ”。
ひっそりと仏像と共に供えられ風化していく

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公益社団法人日本環境教育フォーラム
国際事業部 ブータン駐在員
松尾 茜(まつお あかね)

東京の大手旅行会社に5年間勤務した後、2012年よりブータン王国の首都ティンプー在住。ブータンの持続可能な観光開発事業に携わっている。地域固有の自然や文化、昔ながらの人々の生活を守りながら、ゆるやかに交流人口を増やし、地域経済を、訪れた人の心身を、着実に豊かにしていくような観光を、世界各地で促進していくことがライフワーク。
http://www.bhutan.jeef.or.jp/

- GNHの国からブータン人にききました - 2017年3月発刊 vol.114

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