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きのくに子どもの村通信より

堀 真一郎 (ほり しんいちろう)

1943年福井県勝山市生まれ。66年、京都大学教育学部卒業、69年、同大学大学院博士課程を中退し大阪市立大学助手。90年、同教授(教育学)。大阪市立大学学術博士。大学3回生のときにニイルの自由学校「サマーヒル・スクール」の存在を知る。「ニイル研究会」「新しい学校をつくる会」の代表をつとめ、92年4月、和歌山県橋本市に学校法人きのくに子どもの村学園を設立。94年に大阪市立大学を退職して、同学園の学園長に専念。宿題がない、テストがない、チャイムが鳴らない。週1回の全校集会を含むミーティングは子どもが議長。ニイルとデューイを実践において統合した教育を方針とするため自由学校を創設した。

【Vol.25】学校づくりのこぼれ話(6)校舎の基準はきびしい

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きのくに子どもの村通信より  学校づくりのこぼれ話(2)休校施設払い下げ交渉

学校法人きのくに子どもの村学園
かつやま子どもの村小・中学校
かつやま子どもの村小・中学校の教育目標は「自由な子ども」です。生き生きとし、好奇心旺盛で、集団生活に必要なマナーを身につけている子どもです。

〒911-0003 福井県勝山市北谷町河合5-3
TEL 0779-83-1550 FAX 0779-83-1833
http://www.kinokuni.ac.jp/katsuyama/



たった3センチで
 「えーい、けったくそ悪い。いっそ、全部やり直しだ。」

 棟梁の堀等(ひとし)さんがカンカンになっている。校舎の完成検査で、玄関の幅を少し広げろといわれたのだ。大工さんたちは怒って大幅に広くしてしまった。学校建築の基準は厳しい。

  1. 廊下の幅
    片方に部屋がある場合は173センチ、両側が部屋なら230センチ以上。これは鉄の掟である。
  2. 教室の出入口
    教室には必ず2つ以上の出入口が必要だ。ドアはだめ。必ず引き戸。
  3. 天井の高さ
    3メートル以上。小学校の時は、240センチでOKが出た。理由は不明。
  4. 消火設備
    床面積が500?以上なら消火栓の設置が不可欠。それ以下なら消火器でよい。
  5. 天井裏
    いくつかに仕切る。防火版を2枚重ねてはる。
  6. 窓の大きさ
    床面積の5分の1以上。
  7. 教室の数と広さ
    たとえ4学級でも6つ以上の普通教室と特別教室数室が必要。木造教室の広さの上限は50?。
  8. 建築確認
    設計図を揃えて県の建築事務所に申請する。確認が出るまで3週間かかる。その前に着工してはいけない。
  9. 構造計算
    木造でも床面積が500?以上だと資材と構造の計算を求められる。時間とお金がすごくかかる。これを避けて、当初のプランでは一体だった小学校と食堂を、二つに分け間に廊下を置いた(!?)
  10. 壁とカーテン
    壁紙とカーテンは不燃材に限られる。

検査当局同士が大げんか
 小学校の寮を中学校の校舎に変えた時のことだ。校舎の階段の基準では、一段の高さが17センチ、奥行きが30センチだ。これより急ではいけない。寮には非常階段が付いていた。建築事務所の係官は、学校に非常階段は要らない。残すと違反になるから取りはずせという。そこで消防署の担当者が怒った。ほんの少しだ。ないよりあった方がよいという。建築事務所は「残すと違反だ。はずせ。」といい、消防署は「子どもの安全のために残せ。」といってゆずらない。さて、その結果は…?

 ことほど左様に基準は微に入り細をうがっている。しかしすべてがバカバカしいわけでもない。子どもの安全という観点からは、やむを得ないものも少なくない。係官や建築基準を悪の権化のようにいうのはやめよう。

新しい酒は新しい革袋に
 日本の伝統的な校舎では、長い廊下の片側に教室が連なっている。大きさも形も同じだ。その中で同一年齢の子どもが均等に分けられて、同じ授業が行われている。学級規模も教材も指導方法も固定されているのだ。

 新しい理念でつくられる学校には、それにふさわしい建物が必要である。つまり子どもの年令、自発性と興味、能力に柔軟に対応できる学びの場でなくてはならない。つまり子どものグルーピング、学習形態、学習方法が大胆に変えられるとよい。子どもの移動が容易でないといけない。学習材は手近にあるべきだ。この目的に適うように発明されたのが、イギリスのオープンプラン・スクールである。

壁のない学校 多様な学習
 オープンプラン方式の校舎には廊下がない。廊下がないので建築費が少なくてすむし、学習スペースを広くできる。大きさと使用目的の違う空間が上手に組み合わされている。教材や道具類が子どもの手の届くところに整理されている。子どもの個性と学習の性格に合わせて、一斉授業、小グループ学習、そして個別学習ができる。校舎内および外との行き来もスムーズにできる。

 オープンプラン方式は、自由で体験中心の学校をつくりたくて、資金の乏しい私たちには格好の構造である。かくして小学校と体育館(現食堂)の建築費は、床面積が670?で6千万円弱であった。坪単価は27万円より安い。設計上のアイディアと堀棟梁のあつい心のおかげである。

- きのくに子どもの村通信より - 2009年9月発刊 Vol.25

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