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中川信男の多事争論

「多事争論」とは……福沢諭吉の言葉。 多数に飲み込まれない少数意見の存在が、 自由に生きるための唯一の道であることを示す

プレマ株式会社 代表取締役
ジェラティエーレ

中川信男 (なかがわ のぶお)

京都市生まれ。
文書で確認できる限り400年以上続く家系の長男。
20代は山や武道、インドや東南アジア諸国で修行。
3人の介護、5人の子育てを通じ東西の自然療法に親しむも、最新科学と医学の進化も否定せず、太古の叡智と近現代の知見、技術革新のバランスの取れた融合を目指す。1999年プレマ事務所設立、現プレマ株式会社代表取締役。保守的に見えて新しいもの好きな「ずぶずぶの京都人」。

【Vol.70】僕たちの「龍」

投稿日:

先日、ブータン王国から政務次官およびマーケティング担当者の2名が弊社との商談や他の所用で来日され、私と担当者2名で延べ3日間、日本での視察に同行させていただきました。彼らの今回の視察の目的は、両国間で既に確立している「国と国」、「人と人」という交流からさらに前進させ、「無農薬農産物を通じた、持続可能な商取引の関係」を推し進めるためのものです。ご存じのように、ブータン王国は、王室、政府あげて国民総幸福量(GNH)の追求を掲げている国です。地政学的に中国とインドという巨大な2国に挟まれ、近隣のいわゆるチベットと呼ばれる地域が、無慈悲にも中国共産党によって望まぬ併合支配されているのを間近に感じつつ、独立を維持し続けることに関しては歴史的に難しい局面があったことは想像に難くありません。そのなかで、持続可能で公平な経済的開発を行うという目標と、文化および環境を保護するという相反しやすい目標を達成するためには、農薬を使わない農業の振興が重要という判断を政府自ら行い、驚くべきことに『国内農業の100%を無農薬化する』という明確な目標を掲げています。この明確さたるや、どこの先進国にも負けない論理性があり、その論理の根拠になっているのが、GNHとオーガニック農業の原則の間には、表のような多くの共通項と強い関連性がある、という認識です。

逆にいえば、幸せの追求と薬剤や遺伝子組み換えに頼る農業の間には、持続可能な関連性は見いだせないともいえるわけで、国家がこれを理解し、きわめて野心的に100%無農薬化することを目標に掲げているということは、とても痛快です。せっかくですので、原文のままご紹介します。

蕎麦を巡って
 さて、彼らが輸出できる可能性が高いのが蕎麦であるという話を事前に聞いていたため、視察先の一つに蕎麦の製粉所を選びました。急にお願いしたにも関わらず、快く視察を受け入れていただいたことに感謝しています。さっそく、お二人を製粉所にお連れし、多種多様な機械が蕎麦を引き続ける様子を興味深く見学しました。製粉所では、蕎麦店や販売店の要望を反映して、いろいろな国や産地、異なる色調の蕎麦粉を季節や原料の状態を確認しながら適切にブレンドして、完成品として納品するというのです。日本人としては当たり前に聞こえることでも、裏方としての製粉所の努力は並大抵でないことがうかがい知れました。なにより、地産地消を伝統とするブータンのお二人には驚愕に値する話だったかと思います。そして、具体的な数字の話に及んだとき、彼らの顔は固まってしまいました。それは製粉所が調達している玄蕎麦価格の話です。日本産はキロ当たり200円台、アメリカやカナダ産は100円台、中国産に至っては50円未満…。広大な土地で、効率的な土地活用をし、なおかつ収量の多い品種を栽培し、膨大な量を作って輸出されている蕎麦の価格は驚異的な安さです。ブータンでは山間地の斜面で少量栽培し、海がないので陸路延々とインドまで運んで輸出するわけですから、とても太刀打ちできません。しかも、持参したブータン蕎麦のサンプルを確認した専門の方の意見
は「この蕎麦は小粒すぎ、なお殻が堅く、色も黒すぎます。水分量も適切な比率から見て乾燥しすぎですから、乾燥設備を考えないと厳しそうですね。」というご意見です。私はこの話を聞いていて、とても胸が辛くなると同時に、一つの物語を思い出しました。

龍はどこに住んでいるのか
東日本大震災のあと、当時プレマ基金が足繁く通っていた福島県相馬市に、ブータン国王夫妻が訪問されたことはご記憶にあるでしょう。訪問された国王が、地震と津波と、原発事故に心も体も元気を失っていた桜ヶ丘小学校の子どもたちに語られた話です。

「龍が存在すると思っている人は手を挙げて下さい。(挙手)ありがとう!では、龍の存在を信じない人は ?(挙手)ありがとう!私も妃も見たことがあります。(中略)

龍は私たち一人一人の中に存在します。私はいつもブータンの子供たちに、自分の龍を養いなさい、管理しなさいと教えています。
私たちの中に、人格という龍が住んでいるのです。年をとっていろいろな経験を積むと、龍はそれを食べ、その龍も大きく、強くなっていく。大事なことは、自分の感情とか、湧いてくるものをコントロールすることです。」

ブータンが掲げる、気高い理想の前には多くの困難が立ちはだかるでしょう。それは関与することを決めた私たちにとっても同じことだと思います。私の好きな「それでもなお、前を向く。」という心持ちは、私たちのなかにいつか大きな龍を育ててくれるのかもしれません。あなたの龍は、困難の数だけ、そしてそれを乗り越えた数だけ、それらを食べて大きく育っていくものだと信じています。

- 中川信男の多事争論 - 2013年7月発刊 Vol.70

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