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中川信男の多事争論

「多事争論」とは……福沢諭吉の言葉。 多数に飲み込まれない少数意見の存在が、 自由に生きるための唯一の道であることを示す

プレマ株式会社 代表取締役
ジェラティエーレ

中川信男 (なかがわ のぶお)

京都市生まれ。
文書で確認できる限り400年以上続く家系の長男。
20代は山や武道、インドや東南アジア諸国で修行。
3人の介護、5人の子育てを通じ東西の自然療法に親しむも、最新科学と医学の進化も否定せず、太古の叡智と近現代の知見、技術革新のバランスの取れた融合を目指す。1999年プレマ事務所設立、現プレマ株式会社代表取締役。保守的に見えて新しいもの好きな「ずぶずぶの京都人」。

【Vol.62】人は役割を生きることで元気になれる

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人にはそれぞれに役割があります。たとえば私は父であり、夫であり、子であり、経営者であり、お客様のサポーターでもあります。ほかにもいろいろな役割をもっていて、それをできるだけ果たそうとしています。人生がドラマであるとするならば、まさにそれは天から与えられた配役であるともいえるでしょう。役割ということについていろいろ考察していますと、最初に「一人では役割を生きることはできない」というポイントに至ります。役割という概念そのものが他の誰かとの関係で成り立っているものですから、必然的に役割という言葉は社会、すなわち自分以外との第三者との関係すべてのなかに存在していることになります。なんだか難しい話にきこえるかもしれませんが、「私たちは他の人との関係において、同時にいろいろな役割を演じて生きている」、ということを思い出していただきたいのです。

役割が奪われるとき
多重的に存在している私たちの役割のうち、仕事をしている人にとって職業における役割は非常に大きなウエイトをしめていることでしょう。弊社のスタッフの9割近くは女性です。家の中での仕事をしながら、決まった時間に仕事にでかけ、重責を果たしてまた家事もするという大変さを私自身も身をもって知っています。子どものケアや親の介護、そのうえ仕事と、パラレルにいくつもの役割を演じることのできる人は尊敬に値します。仕事だけに邁進している方もいるかもしれませんが、それでも組織のなかでは複雑で難しい人間関係のなかでたくさんの役割を演じる必要があるわけですから、それも尊敬されるべきでしょう。子どもは子どもで、長く生きた人生の先輩もそれぞれに役割があり、それらのすべてが価値あるものです。役割は、ときに人を疲れさせることもありますが、それが突然失われたときにはとても大きな虚無感や失望感を抱かせます。

その典型的な例が、福島でおきた人災たる原発事故と、それによって役割を奪われた人たちです。特に農家さんの悲痛な叫びは、起こしてしまった出来事の大きさと深さで、心が震います。震災と原発事故が起きてから、菅野さんという無農薬農家さんと縁がつながり、被災後の福島県二本松市で出会いました。菅野さんは三十年以上前から、子どもたちに安全な食べ物を食べてもらいたいと困難の多い無農薬農業に邁進され、いまではそういった心ある農家さんのリーダーとして活動されています。9月26日にプレマ基金で開催した被災地応援イベントでも登壇いただき、その厳しい現実をたくさんお話しいただきました。そのなかで、「あまりに多くて全くニュースにはならないけれども、福島で命を絶った農家さんは、原発事故以降、19人にも及ぶ。」という事実です。ニュースとは物珍しいことの集まりであり、メディアはスポンサーや自身の利害関係に悪印象が及ばない出来事を血眼になって探しています。つまり「差し障りのない、個人的な特殊事情」こそ、一番やりやすいネタとなります。福島で役割を奪われ、自らの命を絶つに至った人のことはすでに珍しくもなく、特定利害に反しますからほとんど報道されることはありません。「農家はそう簡単に農地を選べないし、長年大切にしてきた良質な土が一朝一夕に手に入るはずもない。」という菅野さんの一言一言には、多くの仲間たちの魂の叫びが眠っています。「安心でおいしい食べ物を次の世代のために届ける」という彼自身が決意して選びとってきた役割が、多くの人に認められるようになるためには、膨大な努力を要するのです。

役割を突然奪われる悲しみは農家さんだけにとどまりません。相馬の漁師、阿部さんとは仮設住宅にお邪魔したときに出会いました。彼は今も行政が委託する港の瓦礫引き上げだけの毎日です。宮城以北の漁港が順次操業を開始する中でも、彼は魚を捕ることができません。津波で破壊された船や漁港は、時間はかかれども再建可能であり、再建自身が新しい役割や生き甲斐となり得ます。しかし、放射性物質に汚染された海の中で、新しい役割をみいだすことがいかに難しいかということは、ご想像の通りです。

もう一度、役割を
農業や漁業など自然に依存する産業において、原発事故がもたらした影響は甚大であり、私個人や弊社がお手伝いしうることは決して多くありません。その現実を前に、自分の無力さにうちひしがれていたとき、ひとつのことを考えました。それは「他にも役割を奪われた人がいるはずだし、人が健康に生きて役割を全うできない原因になっている要素も他にもたくさんある。それらを結びつけることで、新しい役割を作り出せないか」という問いでした。ちょうど、今年の冬に有害電磁波をカットするホットカーペットが大手の撤退によって販売中止となり、お客様からたくさんの問い合わせをいただいていた頃です。自社で作るとなると数千万~数億円の投資となり、とても私の手に負えないと考えていました。しかし、「これをもし、福島で縫製することができれば、強制退去や津波被害で家や職という役割を失った人にも、もう一度がんばってもらえるかもしれない」と考え、調べ始めました。案の定、福島の被災地域には多くの縫製工場があり、役割を奪われ苦しい状態の人がたくさんいることがわかりました。『電気(発電)の問題で事故が起き、職を失った人がいる。その一方で、電気そのものを原因とする健康障害で、役割を全うできない人がいる』、この両方に小さな一石を投じる方法がついに見つかりました。そのためには多大な資金リスクを伴いましたが、ここでひるんでいる場合ではありません。私たちは便利さと引き替えに多くの犠牲を払っています。それはときに人の役割を奪いとってしまうことすらあるのです。経営者としての私の役割の一つは「誰かにとっての役割を作り出すこと」であると心新たに、このプロジェクトをすすめました。ぜひ、続きはウェブでご覧ください。

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- 中川信男の多事争論 - 2012年11月発刊 Vol.62

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