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中川信男の多事争論

「多事争論」とは……福沢諭吉の言葉。 多数に飲み込まれない少数意見の存在が、 自由に生きるための唯一の道であることを示す

プレマ株式会社 代表取締役
ジェラティエーレ

中川信男 (なかがわ のぶお)

京都市生まれ。
文書で確認できる限り400年以上続く家系の長男。
20代は山や武道、インドや東南アジア諸国で修行。
3人の介護、5人の子育てを通じ東西の自然療法に親しむも、最新科学と医学の進化も否定せず、太古の叡智と近現代の知見、技術革新のバランスの取れた融合を目指す。1999年プレマ事務所設立、現プレマ株式会社代表取締役。保守的に見えて新しいもの好きな「ずぶずぶの京都人」。

【Vol.72】ちょっと残念な会社

投稿日:

ある女性スタッフ(以降Kさん)と食事をしているときに「どうしてプレマに応募しようと思ったの ? 」と改めて聞いてみました。彼女は応募当時、それまでのキャリアを投げ捨てて専念していたお母様の介護が一段落したときだったといいます。なんでも、「残念な会社リスト」というものを個人的に作っていたらしく、その中に介護中にとても接触の多かった弊社の名前も入っており、たまたま求人を目にしたので飛び込んできたというのです。面接のときに「御社はちょっと残念なので、私が助けにやってきました。」と云われたら、たぶん落としていたと思いますが、彼女のいわんとしていることは、そもそも完璧を目指したり、嘘や無理を重ねたりしていない私のスタイルからいって充分理解できるところです。さっそく、より正確に理解しようと、残念について調べてみました。

ざん‐ねん 【残念】 ﹇名・形動
1.もの足りなく感じること。あきらめきれないこと。
また、そのさま。「―なことをしてくれた」
2.悔しく思うこと。また、そのさま。無念。 「負けて―だ」

これを読んでいますと、残念とは怒りや失望というよりも、その前提に一つの理想レベルがあって、もっと良くなれるはずなのに、という願いが含まれているようなのです。解釈をかえると、これくらいはやってくれよという激励にも感じられます。つまり、『理想-現実=残念』という公式が見えてきました。

Kさんから、ずいぶん前にその残念さについて聞かされたことがあり、当時は「とってもいい品ばかりで筋が通っていることも理解できるんですけれども、なんだかプレマからは土の臭いがしないんですよね。」と云われたことがあります。それから2年後に宮古島で、積年の夢だった農業生産にも乗り出すことができ、日増し賑やかになりつつあります。今年に入ってからは、自社基準を満たし「ほんとうに限られた天産物なので、ごまかしはしないかわりに欠品はあり得ます。」と公言した食品シリーズであるプレマシャンティも次々に発売を続けてきました。この秋から、野菜と日配品の通販を開始する準備も進めており、お届けする箱を開けるとまさに土の臭いが立ちこめます。

そうやって理想と現実の隙間である残念領域を埋めることにコツコツ努力を続けてきましたが、まだまだ残念は山積しています。別の解釈をしますと、仕事とはこの残念を埋めることであるようにも感じます。大変恥ずかしいことですが告白しますと、一時期、会社内で「さくさくっとやる」「めんどうくさい」「おっくう」「手間がかかる」という言葉が蔓延したことがあります。非常に象徴的で、この言葉の広がりとともに、ボタンの掛け違いがあちこちで露呈し始めました。お客様にとって、直接品質やホスピタリティーに影響しない単純作業や、社内のやりとりはできるだけ簡潔に、スピーディーに行う必要がありますが、それを手間がかからないように改善したいときには仕組みの構築が必要です。手間のかかる作業を改善し、空いた時間はお客様のために活用すべき時間であって、単に楽ができて良かったということにはなりません。お客様にとっての「こうだったらいいのに」という残念の隙間を埋めていくという作業は、実に根気と努力のいることですが、その先には理想が待っています。それは、いくらやっても終わることがない営みだからこそ、終わることのない組織の、そして人の成長があり得るのです。

ボトム オブ ピラミッド
さて、Kさんですが、現在は弊社で従前から行ってきた欧州やアジアとの貿易関係を生かしてBOPビジネス構築の先頭として活動中です。BOPとは、途上国におけるBOP層(Bottomof the Pyramid)を対象とした持続可能なビジネスであり、現地における様々な社会的課題の解決に資することを目的とする、欧米では最先端のビジネスモデルです。単に途上国の貧困層を未開拓の巨大市場として展開する多国籍企業の世界戦略としてこの言葉を用いる場合もありますが、私たちは、途上国の生態系や多様性を破壊しないで生活の質の向上を応援するという意味合いでこの言葉を用いています。単なる資金援助やフェアトレードとは異なり、ビジネスを軸に社会の問題を解決していこうという壮大なテーマに、「残念な会社」は小さくトライ中です。

そもそも、創業の段階から生産者の皆さんの努力あってこそ良質の品が提供でき、良心的な製法と努力によって周辺の環境やコミュニティーも守られ、作り手に充分な対価をお支払いすることでこれを継続していただくことができると考えてきました。もちろん、得た利益は世界がよりよい場所になりえるように還元するのが当たり前と考えてきた私たちにとって、相手が海外の途上国であれ国内であれ、何かが違う訳ではなく、同じ動機に基づいています。途上国を貧困に固定し続けているのは、安いことが価値、汚染の原因は貧しい地域へという原発や基地問題と根は同じ、消費者、先進国、都市至上主義であると考えています。これらがもたらした弊害を解決するのは、生産と消費、開発と保全のバランスをとること、そしてお客様から得る売上以外の紐付き資金を頼らないで事業を組み立てることです。さらに持続可能な資金の循環を安定的に回転させることこそが、政治や国境を越えた新しいパラダイムとなって、子どもたちに残したい次の社会の基礎となると考えています。

充分な人材も資金もない会社がこれにチャレンジする公式は、『理想(あるべき未来)× 現実(いまある資源)=残念をすごいにかえるイノベーション』ともいえるかもしれません。なかなか面白いチャレンジです。残念をよりよい未来に変えていけるよう、プレマ株式会社は変化とチャレンジを続けてまいります。

- 中川信男の多事争論 - 2013年9月発刊 Vol.72

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