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中川信男の多事争論

「多事争論」とは……福沢諭吉の言葉。 多数に飲み込まれない少数意見の存在が、 自由に生きるための唯一の道であることを示す

プレマ株式会社 代表取締役
ジェラティエーレ

中川信男 (なかがわ のぶお)

京都市生まれ。
文書で確認できる限り400年以上続く家系の長男。
20代は山や武道、インドや東南アジア諸国で修行。
3人の介護、5人の子育てを通じ東西の自然療法に親しむも、最新科学と医学の進化も否定せず、太古の叡智と近現代の知見、技術革新のバランスの取れた融合を目指す。1999年プレマ事務所設立、現プレマ株式会社代表取締役。保守的に見えて新しいもの好きな「ずぶずぶの京都人」。

【Vol.66】3・11 から2年にして思うこと

投稿日:

京都からは遠く、東北沖で起きた地震が災禍をもたらしてから、早2年が過ぎました。あのときの「ドスン」という異様な音に、京都でミーティング中だった私はただならぬ胸騒ぎを感じ、近くにいたスタッフに「すぐネットで地震情報調べて、大急ぎで ! 」と告げました。普段と全く変わらない京都の平和な日常のなか、状況に似つかわしくない私の「オーバーアクション」は、キョトンとしている周りの人たちからはきっと奇異に見えていたことでしょう。なぜなら、私自身はこの2日前に銀座でのランチミーティング中に遭遇したかなり大きく深い縦揺れについて、単発の地震という確信が持てなかったのです。揺れの瞬間に話していたのは、「命って連綿と続くっていうけど、あれはDNAそのものの欲求なんだよ、ある意味私たち大人が生きて命を繋ぐのは、DNAの乗り物としての身体を貸しているに過ぎないのかもしれないね。」などという、ずいぶん感傷的な内容でした。翌日には東京で続くはずのすべての予定を切り上げて、夜遅くには京都に戻っていました。動物的な勘といえばよいのでしょうか、何ら確信がないので周りに話していたわけではないのですが、とにかくこの場を離れた方がよいという直感に従ったのです。京都に戻って溜まった仕事に向かっていた昼下がり、スタッフが必死に再読み込みをしても全く繋がらない地震速報ページを確認した段階で胸騒ぎはとんでもない事実になっていることを確信し、その後はネットと電話に張り付くほかなかったのを思い出します。その後、3・11の本震には、実は前震があったことが指摘され、それは私が銀座で遭遇した地震だったと知ったときには、身震いがしました。

生かされている
その後、福島や東北に向かうようになってからのご縁で、あの瞬間に体験されたいろいろな話を聞く機会に恵まれました。たまたま私がご縁をいただいた方々がそうだっただけなのかもしれませんが、「あの瞬間を迎える場所は、当初の予定の場所ではなくなって被災せずに済んだ。」「理由はなく、直感に従って周囲の人を率いて内陸に向かって歩いていて助かった。」「とにかく、わけもなく西に(もしくは日本海側に)車を走らせました。」という、津波からの命拾い、もしくは原発爆発による被曝を回避されたことに対するツキの話だったのです。そして皆さん最後に必ず「この命は、いただいたものです。そしてあの震災を超えて、自分が生きていることに強い意味と責任を感じます。だから、亡くなった人の分まで、がんばって生きようと思うのです。」とおっしゃいます。誰に申し合わせた訳でもなく、皆さんがそうおっしゃることの背景にある深い悲しみと、そして強く生きるという決意を前に、被災の当事者ではない私は申し訳ない気持ち半分、自分もそのように生きたいと思う気持ち半分という複雑な気持ちになります。震災や津波そのものの被害はもちろんですが、続いた人災たる原発事故が引き起こし続ける苦難の連続は、本誌でも何度も何度も書き続けた通りです。実に表面的なやり方による景気回復ムードの演出の陰で、この痛みはどこか遠くのことのように追いやられ、「経済的合理性」を理由として原発の運転再開は半ば既成事実のようになってしまいました。私は経営者として経済的合理性の観点からも「原発は結局高くつくのは間違いない」と考えています。円安だから、輸出産業を回復しなければと全うに聞こえる数多くの「理由」の背景には、巨大な利権と、そこで美味しい思いをする人がまだまだたくさんいるのだという事実の表出に他なりません。全てのものごとは、時間軸を短く、地域を狭く設定すると判断を誤ります。もっと長期的、広域的な視点に立たない限り、中国から押し寄せる汚染物質の根本原因について言及する資格すら持てません。昼下がりの喫茶店で漏れ聞こえる「僕らは年金しっかりもらえる最後の世代やから、もらえるもんはしっかりもらっとかなあかんで。息子も役所に入ったから安泰やで。今、株は買いやで、中国がどかんと一発暴れたら暴落やから、そのときは売り浴びせや。」という下品な会話には耳を覆いたくなります。ここが被災地から遠いからなのか、それとも日本人のモラルが低下したからなのかはわかりませんが、私にはそんなに他人事では済まされないことだけは明らかです。生き残った人間には、生き残ったなりの生き方が求められます。

男社会の終焉
偉そうなことを書いてばかりで恐縮ですが、正直、私も短期快感を求めやすい典型的な男社会の一員です。物流センターの移転で数々明らかになった問題をしっかり見続けると、どうも「男の論理」という訳のわからない怪獣がそこに住んでいるように見えます。「とにかく、求められた分を出荷できれば問題ないだろう。」という新委託先の基本的なスタンスに、女性のお客様からはとても丁寧なご要望をいただきます。要約すれば、「以前は、こんなのじゃなかったのに。」というお声が大半です。ここで「じゃあ、とにかくこうすればいいだろう。」と開き直るつもりはありません。ここは根気強く、見えないところにも配慮する、つまり美しい梱包にはしっかり清掃された倉庫があってこそ、働く人の環境も大事と、儲けとは直接関係ない背景にも気を配り続ける努力と配慮が必要です。男の論理とは短期的利益の追求と言い換えられるかもしれません。永続的な社会のあり方を考えるとき、男だ女だを超えて、あるべき未来を空想して、そこから逆算する思考をもつほかありません。今の問題のクリアだけにフォーカスすれば、きっとまた「男の論理」がつきまとうことになるからです。震災の経験は、生かしてこそなのです。

- 中川信男の多事争論 - 2013年3月発刊 Vol.66

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