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インタビュー取材しました。

【Vol.96】世界で生きていける子供たちに育てよう~フィリピン、貧しい母子たちの診療所、活動22年からの学び ~

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2015年7月28日東京開催。フィリピンでバルナバクリニックを営む、助産師・看護師の冨田江里子さんによる講演レポート第一回。

活動のきっかけとなった、モルジブでの衝撃

協力隊として行ったモルジブで、「途上国を教えてあげなければいけない」という思い込みが180 度覆された、26 歳の冨田さん。「支援」は本当に必要なのでしょうか?

今48歳で、26歳のときからほとんど途上国に暮らさせてもらってる状態です。26歳のときに、看護師と助産師として協力隊でモルジブ共和国に2年間行かせてもらって、いろんなことが衝撃的でした。医療職の人って、途上国は先進国が教えてあげなくちゃいけない存在やと思い込んでます。でもそれがそもそも間違い。
モルジブで、私はお産のお手伝いができると思っていきました。でも病院に来られた方というのはごくわずか。いろんな島を入れて3万人をカバーしてる病院だったんです。それらの島をワクチンを持って回るんです。ひとつの島あたり20人とか、多かったら40人とか。ということは月に100件くらいはお産があるんです。でも私が病院でお産にあたったのは、年間50数件。そのほとんどは、メディカルヘルプが必要な人でした。それ以外の人はみんな自宅でお産してたんです。自宅でのお産っていうと野蛮とか汚いとか危険とか、助産師は医療教育で聞かされます。だからワクチンの接種のときに妊婦さんと話すチャンスがあるから、「お産のとき何か役に立つかもしれんから呼んでな」って呼んでもらったんですよ。

最初のお産がものすごく衝撃的でした。私の横にふんぞりかえってるおばちゃんがいたんですよ。その人に、家族の人がカレー持ってきたり、おやつもってきたり、えらい接待してるなと思ったら、産婆さんやったんです。医学の発達していない時代は、お産って赤ちゃんがどんな状態でお腹にいるのか分からないし、お産後の出血っていうのは医療が発達してても予測不可能です。何があるか分からない。簡単に動揺するような人だったら産婆はやってられない。たいてい、めっちゃ気強い人がやってるんですよ。自己主張が強い。だから家族が一生懸命引き留めてました。お産がかなり進んできて、妊婦さんは気張りはじめてるのに、産婆さんはまだ食べてる。でも「手出ししたらあかん」と思って。「絶対おかしいことするから、現場を押さえて、原因と結果という状態でいわないと響かへん」と。それほど仲良くない人に、しかも言葉が不自由な状態で「間違ってるよ」っていわれてもぴんとこないですよね。そしたら産婆さん、さっきまで食べていた手でそのまま出産介助。「絶対感染症、産褥熱とか起こるわ」って思って、「熱が出たりとか何かあったらすぐ呼びや」っていって帰ったんです。でも何も起こらなかったんですね。少々汚くても、最低限度のところを抑えて、産婦さんが良い体調であったら、感染症は起こらない。人の免疫力ってそういうことなんだと、お産は普通でいいということが、腑に落ちました。

モルジブでは、病気の種類が日本とまったく違ったんですよ。モルジブでの病気は、おもに感染症です。日本でよくある、アトピー、ガン、認知症、脳梗塞……そういう病気がほぼゼロ。何が違ったかというと、食事がまったく違いました。モルジブには何もないです。珊瑚礁でできてるので、野菜が育ちません。だから家畜も養えない。あるのはインドから輸入してるお米とか香辛料とかぐらい。海なんで、いっぱい魚食べてたんかなって思うでしょ。それも違うんですよ。朝起きて、顔洗ったりするのに海に行くんですけど、そのついでに排泄も終わらせる。ほとんどの家にトイレがないので海で全部するんですよ。結果、小魚が自分たちの排泄物を始末していってるを見てるんですね。「せめて近海のものを食べようよ」と、食品分析表から「これにはこんな栄養があって」って一生懸命書いたら、島の人から総スカンです。「俺らのウンコ食べてるものを食べろっていうのか、汚いやっちゃなあ」って大否定。彼らが何を食べていたかというと、遠海で獲れるカツオとかマグロとかの大型魚。でも大型魚って魚群探知機とかあるからいっぱい釣れるわけで、群れになって泳いでるものですから、当たれば釣れるし当たらないと釣れない。だから漁獲量っていうのはすごく少なかった。彼らは鰹節の技術を持ってました。鰹節を作って、カレーの汁の中に混ぜてっていう食事。一日のタンパク質の量としてはたぶん10g以下だと思います。でもアトピーも、ガンもない。CTスキャンとかなかったですから、内臓のガンとかあったのかもしれないですけど、モルジブでナンバー2の中核病院で、表面的に見える部分では一例も見なかったというのは、食事や環境との関連性は否定できないと思います。

私自身、ひどいアトピーだったんです。モルジブは、暑いし、水は汚いし、栄養はよくないし、「絶対ひどなるわ」っていっぱいステロイド剤を持って渡ったんですけど、全然使わなかった。軽い断食状態だったんですね。パンとか牛乳とか卵とか、一切ない。食べてるものはご飯とカレーの汁だけ。だから栄養失調にはなりました。他の協力隊もみんな栄養失調。協力隊って上の人の方針で、現地に入ったら現地の人と同じ暮らしをってスローガンにしてるんですよ。体が違うのに現地の人と同じ暮らしをしたらみんな病気になって倒れて。でも現地の人は、誰も栄養失調にならない。
かつてWHOが世界の子どもの8割は栄養失調だと発表したことがありましたが、そこにはトリックがあります。WHOを作ったのは白人です。身長とか体重を測るって西洋から来た文化で、WHOが最初に持っていたデータは全部白人のものです。そのデータを途上国に当てはめた。でも20何年前にやっと途上国のデータも出揃ってきて、今、WHOはかつてのようなことは一言もいってないです。栄養失調を起こしてる国というのは、内戦とか、異常気象とか、普段の生活が維持できない状況が長く続いた国です。
1800キロカロリーを目標にいろいろなものを食べましょうという概念は、経済を回すんですよ。現代の流通を生かすためのものかもしれない。エスキモーの人たちや、砂漠の人たちも、野菜をとらなあかんようになる。野菜をとらなくたって、生きて来られたんですよ。文明が続いてきた。そういう人たちは病気の種類が少なくて、今の日本はいかがですか。厚生労働省が正しいことをいってるんでしょうか。分かりやすいのは牛乳ですよね。学校で買えば牛乳が1・5円と、すごい安かった。そこまでしてを広めないといけない理由が後ろにあったんですよね。牛乳自体が悪いものではないと思います。ただそれは寒帯の人々の食文化であって、熱帯の人に必要かというと疑問です。
病気の他にも、歯磨きしないと虫歯になるって思ってますよね。じゃあ、歯ブラシっていつからあったんですか? 昔は歯磨きしなくても歯垢がつかなかった。1900年代初旬頃にヨーロッパの歯医者の先生がその点に着目されて、伝統的な食事をしている人たちと、合成物・工業製品が入る人たちの口腔内の状態を調査されています。精製された砂糖と人工的な添加物のミックスで細菌叢が変わる。口腔の温度も変わる。そういうことで虫歯菌が繁殖するっていわれています。モルジブの人も歯磨きを持っていませんでしたけど、誰も虫歯になってませんでした。白砂糖はすでに入ってたんですが、他の添加物がほとんど入ってなかった。

ひとつの種がすごく増えてしまうというのはどういう状態かというと、天敵がいなくなったとき。でも食料を食べ尽くしてしまったら衰退していく。これが自然の法則です。人間も自然界の一員ですから、食べるものが増えると人口も増えるんです。アメリカのモンサントによる農薬と種子のコントロールで、1ヘクタールの収量が3倍になりました。これは人口爆発のグラフと比例します。
(次号、フィリピンでのお話に続く)

談:冨田 江里子
フィリピンで1997 年から暮らし、現地の貧しい母子が
置かれる状況に診療所を開設。3人の子供の母親。
ブログ:フィリピン、貧しい母子のためのクリニックより
http://blogs.yahoo.co.jp/barnabaseriko

文:らくなちゅらる通信編集部

- 特集 - 2015年9月発刊 Vol.96

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