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中川信男の多事争論

「多事争論」とは……福沢諭吉の言葉。 多数に飲み込まれない少数意見の存在が、 自由に生きるための唯一の道であることを示す

プレマ株式会社 代表取締役
ジェラティエーレ

中川信男 (なかがわ のぶお)

京都市生まれ。
文書で確認できる限り400年以上続く家系の長男。
20代は山や武道、インドや東南アジア諸国で修行。
3人の介護、5人の子育てを通じ東西の自然療法に親しむも、最新科学と医学の進化も否定せず、太古の叡智と近現代の知見、技術革新のバランスの取れた融合を目指す。1999年プレマ事務所設立、現プレマ株式会社代表取締役。保守的に見えて新しいもの好きな「ずぶずぶの京都人」。

【Vol.56】出来事の解釈

投稿日:

3月24日、弊社では「『それでもなお、桜咲く。』3・11から1年~福島の現実と決意を未来に生かす京都から1000年続く応援シンポジウム」を開催しました。その中で、4人のスピーカーの皆様に福島の現実と、それに向かい合う決意についてのお話をいただきました(プロフィールは表をご覧ください)。シンポジウム自体は春の行楽シーズンの週末、さらに決定から開催までわずか2週間という難しい条件のなか、多くの皆様にご参加いただき無事に終えることができました。

琵琶湖のパワースポットへ
私が今回お伝えしたいのは、その翌日の話です。せっかく福島から京都までお越しいただいた皆様をどこにご案内しようかと考えた結果、春まっさかりの京都の日曜日は大渋滞に見舞われ、車でお供が難しいと考え、お隣の滋賀県にある琵琶湖界隈を楽しんでいただくことにしました。当日の朝は春とは思えない寒さでしたが、空は青く晴れわたっています。「では、さっそく竹生島(ちくぶしま)に行きましょう!」と雪をいただく比良山系を左に、右には輝く琵琶湖を眺めながら北に車を走らせます。竹生島は琵琶湖の北に浮かぶ小さな島ですが、「神の住む島」と呼ばれ、「神の斎く(いつく)住居(すまい)」を意味し、その中の「つくすまい」が「つくぶすま」と変じ「竹生島」になったといわれます。かつては神仏一体の思想で発展してきましたが、明治時代の神仏分離令によって、弁才天を本尊とする「宝厳寺」と浅井姫命を祀る「都久夫須麻神社」に分かれています。島全体にお寺(仏様)と神社(神様)が混ざり合った状態で存在しており、日本人が八百万の神々を分け隔てなくお祀りしてきたことを実感できる島です。

終わらない喜び
島への舟が発着する今津港には、船が起つ直前につきました。ぎりぎりの到着だったのですが、船会社の人の配慮で少し離れたところにある駐車場ではなく、目の前の小さな駐車場に案内されました。車に乗っている一同からは「これは朝からツイているね!」という声が上がります。港に着く直前からは春の雪が降り始めていましたが、乗り込んだ船中では「晴れと雪が両方体験できるなんて最高ですね!」と皆さん。島に近づいてきますと、こんどはあれだけ嵐の様相だったのに雪がやみ、島に光が差し込んでいます。「なんてラッキーなんだろう、これはいいことがたくさんありますよ!」とお喜びです。島では雪に降られることもなく、ゆっくりとお参りを済ませ、そろそろお昼ご飯を食べましょうかという声が上がった頃に、風を伴った大粒の雨が落ちてきました。「なんて素晴らしい!清めの雨だよ、これは最高だね!」との声があがります。雨は一気に大粒の牡丹雪に変わりました。すると「うわあ、美しい!なんて今日はツイているんだ、中川さん、連れてきてくれてありがとう!」といわれました。舟が出発するまでに濡れた体と空腹を癒すために島の小さな食堂に入りますと、「期待してなかったけど、このうどんもおでんもほんとに美味しいよ!」と喜びあっておられました。

ほんとうの自由
このように起きたことを書いていますと、「いったいどんな人を連れて行ったんだ」とお忘れになっているかもしれません。もう一度いいましょう、皆さんはあの日、津波で財産のすべてを流され、または故郷は放射性物質に侵され誰もいなくなり、または沿岸の電車で被災して直感で内陸に向かってひたすら歩き、命を存えた人たち・・・何をするのも難しい福島県の相馬周辺で「それでもなお、負けないで先頭に立つ」皆さんたちです。この日本に住んでいる限り、災害に遭う、遭わないというレベルでは可能性の差は大きくないでしょう。今回の震災も誰にとっても想定外の出来事でした。つまり、災いのまえに完全な自由は存在しないのです。しかし、その災害をどう受け止め、どう生きていくのかを選択する自由が私たちはあります。私はこれこそが「ほんとうの自由」だと受け止めています。私たちは災害の前には小さな存在ですが、この出来事をどう解釈し、どのように生かすのかについては、実に大きな自由を与えられています。私は常に「危機管理の要諦は最悪を想定することである。最悪を想定したうえで、そのあとはひたすら楽観的に行動する」ことを意識しています。人は往々にして平時には最悪を想定せず、何か起きたら悲観的になって周りまで不幸にしてしまいます。今回同行した皆さんは口々に「起きたことは実に耐え難いことばかりだけれど、それでもなお生かされたことを感謝して、亡くなった人たちの分まで生きていきます」と決意を述べられました。ほんとうの感謝と自由とは、出来事のあとにふつふつと湧き出すものなのです。

※本シンポジウムは9月26日、東京三越劇場にてより多くのスピーカーをお招きして再度開催することになりました。詳細は決まり次第お知らせします。

基調講演:川嶋 舟(東京農業大学農学部講師 獣医学博士)
相馬中村神社の禰宜である妻の地元、福島県相馬市への帰省途中、3・11震災が起こる。救援物資も充分に届かない混乱期から、自ら率先して指揮を執り活動を行ってきた。

現地報告:小野 芳征(有限会社カネヨ水産社長)
津波ですべてを流され、現在は仮店舗で水産業を営む。原発問題が収まらない今、まずは自分たちでできる復興・再建を考え、地域でともに行動していくことが大事と考えている。

現地報告:高橋 誠(相馬市飯豊小学校校長)
全員避難命令が出た飯舘村出身。3・11震災の日、当時の勤務先で目前に押し寄せてくる津波の恐怖を体験。現在は子どもたちの家族と除染活動を行うなど、福島の復興のために様々
な活動を行っている。

3月24日に開催しました「それでもなお、桜咲く」の詳細はこちら>>

- 中川信男の多事争論 - 2012年5月発刊 Vol.56

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