畑のお肉 ソイミートには、脱脂大豆が使われています。
この脱脂大豆はヘキサン(ノルマルヘキサン)を使用せず、国産大豆100%を原材料とした脱脂大豆であり、適度に油分が残った脱脂大豆です。
水に浸したタオルを両手で力を込めてぎゅっと絞った時と、洗濯機の脱水機能を使用したとき、どちらがより水分が少ないでしょうか。
水分を完全に絞り出すことは物理的にも不可能に近い作業です。これは植物油もおなじ。
圧力だけで搾り出す『圧搾法』では、胡麻やなたね、大豆の油分を多量に搾り取ることができません。
搾油率が低いと、必然的に原材料が沢山必要となりますし、効率が悪くなります。そこで考え出されたのが、油が油に溶け易いという性質を利用した、ヘキサン(ノルマルヘキサン)抽出です。
タオルの例を当てはめるとそれぞれの抽出率は、圧搾法が手絞り、ヘキサン(ノルマルヘキサン)抽出が脱水機能に似ています。
原材料をヘキサン(ノルマルヘキサン)に浸し油分を抽出した後、沸点の差を利用して植物油を分離します。
ヘキサン(ノルマルヘキサン)の沸点約80度に対して、例えばごま油の沸点は約200℃以上。
加熱すると沸点が低い油の方が先に揮発し、必然的にごま油が残ります。
ヘキサン(ノルマルヘキサン)の沸点は、植物油よりも低く完全に揮発するため油には残存しないとされており、
現在は家庭用植物油として一般的に販売されているものの多くが、有機溶剤である『ヘキサン(ノルマルヘキサン)』に原材料を浸け油分を溶かし込んだ後に、
油分だけ分離するという抽出法で作られています。「圧搾」と書いてあっても、共に「抽出」と記載があればこのヘキサン(ノルマルヘキサン)を使用しているのが現実です。
丸大豆が使用される以外の大豆加工品にも、ヘキサン(ノルマルヘキサン)を使用し大豆から大豆油を取り出し、
残りの脱脂大豆を原材料としている商品は少なくなく、実は国内で製造する醤油ですら対象外ではありません。
搾油するという目的で利便性や効率を考えた結果、使用されるようになったヘキサン(ノルマルヘキサン)。
原料大豆に油分が残っていると、加工しにくい食品も沢山あり、畑のお肉 ソイミートもまたそのひとつではありますが、
ヘキサン(ノルマルヘキサン)抽出では、大豆が本来持っている旨味も損ねてしまう場合があります。
目的は油を搾ることではなく、脱脂大豆をより旨味と簡便な食材に変化させること。
だとしたら、ヘキサン(ノルマルヘキサン)を使用せず、加工の邪魔にならないギリギリのラインまで大豆を搾油できるのであれば、美味しさと旨味を保証できるのが一番。
科学(化学)技術は確かに様々な利便性や効率の向上をもたらしましたが、「素材の旨味」をそのまま伝える食文化においては、時には非効率と思われる手法が一番いいのかもしれません。
常温では無色透明で、灯油のような臭いがする液体。
有機溶剤の一種で、示性式CH3(CH2)4CH3で表される直鎖状のアルカン(飽和炭化水素)です。
水溶性は非常に低く(20℃で13mg/L)、灯油やガソリンに多く含まれておりベンジンの主成分としても知られています。
ベンジンとは、染み抜きに使ったりするあのつんと鼻を突き刺す刺激臭の液体です。
ヘキサン(ノルマルヘキサン)は約700℃で熱分解を起こし、
水素、メタン、エチレンを生ずることが知られていますが、
極性の低い溶媒として、油脂の抽出をはじめ様々な用途に使われています。