美味しい油にするために、搾り手にも出来る工夫があるのだといいます。
「コンバインや乾燥機を導入し、より効率的な生産方法を導入する農家が増えるのは、時代の流れで致し方ないことです。
しかし美味しい油にするために、搾り手にも出来る工夫があるのだといいます。
先代から引き継いだ「なたね油の美味しさや美しさが一番際立つ搾り方」に忠実に、
収穫したなたねを唐箕(とうみ)がけし、天日干しした後に俸禄鍋に薪火をくべて焙煎します。
釜は、先代の何十年の実績から生まれた世界にたったひと組しかない特注の「ほうろく釜」です。
「面白い話で、重油ガスのバーナーでやってみたんですけれども・・・
科学的な根拠はないけれどまきで炊いたお風呂はお湯が滑らかだといいますよね。
油もさらさら感っていうんですかね、落ちる時にもどろーっと落ちてくるんじゃなくて、
さらーっというような感じだったんですよ。
薪で焙煎するだけで油が滑らかになって、本当に違うのでびっくりしたんですよね。
だから先代と二人で、手間だけどやっぱり薪だと。
僕としても火加減の調整がまきのほうが楽なんですよね。
ただ、薪を集めるのが大変なんですけど。」
薪をくべながらじっくりと約一時間。
美味しいなたね油をつくるには、一番大切なのが焙煎工程だと確信しているから、
どんなに面倒でも少量ずつ薪火で焙煎する工程は変えません。
焙煎が強すぎると油を湯洗いしないといけなくなるし、浅すぎると歩留まりというんですか、
搾油の量がぐんと減ります。だから丁度いい具合に焙煎して搾油機にいれるっていうのが、一番大切なんです。
焙煎を何度で何分やるのって良く聞かれるんだけれども僕は温度計をいれたこともないし、
焙煎している間にこうやって手で何分くらい握っていられるかなあとか、
たねをひとつひろってつぶしてみたりしながら火加減を調整しています。
棒でこうやって押しつぶした時に、ぱちぱち~って音がしてつぶれるのは火が入っているんですが、
入っていないのはぐじゅぐじゅーって音がする。
何度ぐらい・・・といわれたら、大体はわかりますけど重さと時間と種の様子を
みながら焙煎しているし、その日の湿度気温や、農家によっても違うんで、毎回ちがうんですよね。」
現在販売される食用植物油の多くが、圧搾後に「湯洗い」という工程が入ります。
お湯(水)に何度かとおすと油に混ざる不純物(臭いなども含む)が取り除けるのですが、
同時にミネラルなどの本来油に含まれている物質も一緒に取り除かれしまうと云われます。
早く商品化しようとすると、湯洗いは非常に効率的な工程なのだそうですが、
低温でじっくりと焙煎し、最低二週間静置させればその必要もなくなります。
効率が良くなくても、先代から引き継いだ手間のかかるやり方を変えないのは自然が与えてくれた
「そのまんま」を、できる限りまるごと凝縮して届けたいから。
商品にも工房にも、本当に美味しいものを生み出すためには、手間暇を惜しまない覚悟が根を張っています。
薪火焙煎。
湯洗いなし。
昔ながらの黄金色の色合いと独特の風味は、製法から引き継がれます。
前回お届けした商品と色目や香り、味わいが、微妙に違うかもしれません。
しかしこれも、すべて脱色せずに手しぼりでお届けしているから。
自然のまんまのなたねだからこそ生まれる色あいの違いだとご了承ください。
また本当に希に、黒い点のようななたねの絞りかすが濾紙をすり抜けて入ってしまうことがあります。
これは180度まで加熱する最後の工程でも焦げたりしない、なたねの殻のちいさな欠片です。
品質には影響ありませんので、そのままご使用ください。