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プレマシャンティの作り手インタビュー

食べるひとのことまで考えて作った、隠岐で一番美味しいあらめですよ。~あらめ製造者 伴林さん~

投稿日: 2018年11月1日 更新日:

山の新緑が美しい時期は、海草にとっても芽吹きの季節。
島根県の最北端から「あらめ漁がはじまりますよ」とお知らせを頂いたのは、丁度、田に水がはいりはじめた時期でした。カルデラ地形の島前(どうぜん)と隠岐諸島最大の島である島後(どうご)によって成る隠岐諸島は、大山とあわせ国立公園に指定されている自然豊かな場所です。七類港からフェリーで2時間半。更に西郷の港から島の中心部を一路北へ、新緑に萌える山と早苗が風に揺らぐ風景を抜け、車で約40分。七類港では群青から青に近かった海が、島後(どうご)の中でも最北端に位置する白島海岸付近では、底まで透けて見とおせそうなエメラルドグリーンに変わります。私たちがご紹介している「隠岐あらめ」は、この息を呑むように美しい白島海岸沿いで採草されています。

あらめ漁の解禁日は年によって異なり、新芽が採草できるのは5月から6月初旬までのわずかな期間です。岩肌に根を張るあらめを採草するために切り立った岩沿いに船を寄せるため、完全な凪(なぎ)を狙って船を出し、箱めがねをつかって採草します。海が比較的穏やかだといわれるこの時期でも、雲ひとつない晴天が完全な凪(なぎ)の海を約束するわけではありません。漁が出来るか出来ないかは、すべて海の機嫌次第。風向きひとつで海が荒れ、漁師は浜に足止めされます。採草する漁師と、そしてそれを買い取り加工する製造者との連携によって食卓に運ばれるあらめもまた、自然によって左右される天産物であることにかわりがありません。
空が白みだす早朝5時ごろに船を出し採草してきたあらめを、乾燥し袋詰めするまでが漁師の仕事。そして、袋詰めされたあらめを出荷に応じて加工するのが製造者の仕事です。「隠岐あらめ」は年間をとおして販売されますが、その原料は葉が柔らかい時期に採草されたものだけに限られます。製造者は海が荒れて船が出せない可能性も考えて、1年間に必要な量に加え3~4か月分の予備も仕入れるといいます。特に個人の製造者は、あらめ漁の解禁からあご(とびうお)漁が始まるまでの1ヶ月程度の間に仕入れを終えてしまうようです。この中村地区のあらめ製造者である伴林さんのお宅を訪れると、作業場の屋根裏には、袋一杯に詰まったあらめがびっちりと詰め込まれていました。「まだ漁が始まったばかりだから、これからもっと増えますよ」という彼女の足元には、畳まれたナイロン袋が膝の高さ以上に積上げられており、外には軽トラックの荷台に山のようにこんもりと、サンタクロースの袋のように膨れ上がったナイロン袋いっぱいに、昨日仕入れたあらめが詰められ積まれていました。

「とってきたあらめは漁師さんがそのまま浜で乾燥させます。それを仕入れて、年間とおして加工して出荷します」。
荷台から降ろした袋を開けると、磯の匂いと共にぱりぱりに乾燥したあらめがでてきました。「ここが軸の部分ですよね。ぎりぎりで刈っていますからね。これがこう、こういう風にふたつくらい合わさって、下に一本長い軸に繋がっているんですね。それで軸の先が岩にくっついているの」。刈り取られたままのあらめは、軸から先端までで成人女性の片腕くらいの長さでしょうか。固い軸に繋がった薄く繊細な葉。少し緑がかった黒さの表面に、細かくうっすらと塩がふいています。漁師から仕入れたばかりのあらめを口にすると、磯の香りを追うように苦味が口の中に広がります。5mmにも満たないカケラを口にしただけでも、とにかく苦く渋い。あらめを加工する第一歩が、この苦味、アクを抜く作業です。

「この網の袋に入れて一旦また海に戻すんです。最低6時間か7時間くらい。前は一晩中戻していたんですけれど、温度があがってくると、私はちょっと長すぎるかなと思って短くして、朝つけたら夕方あげています」。巾着袋状の目の荒い網は、おとながひとりすっぽり入れそうな大きさで、女性の肩の高さぐらいの長さがあります。この袋一杯に乾燥したあらめをいれ海に戻すと聞き、思わず「重たいでしょう」と声が漏れます。
「重たいです。だから機械であげるんです。それをね、引き上げると真っ黒な汁が出るんですよ。ほんとにもう、真っ黒な汁がどんどん出てきます」。
海からあげたあらめからは、染めに使えそうなくらいの黒い色がどんどん出てくるといいます。
「でもそうしないと食べられないんです。よく(アクが)抜けてないと、苦味がのこっちゃう。美味しくなくなっちゃうんです」。

アクが抜けきったものを、次は釜で煮ます。大釜の燃料は、なんと薪。大きな釜ふたつを火にかけると、夏場はとんでもなく暑くなるといいます。
「炊く時間は(加工者によって)みんなそれぞれ違うんです。その時間によって、固かったり柔らかくなったり・・・。企業秘密ですね」。
「とんだ企業秘密ですね」と伴林さんは笑いますが、薪火も煮あげる時間も、すべて美味しさに繋がっているのでしょう。煮あがったあらめは、次は網に並べて乾燥させます。干し網の木枠は、あらめの色素で漆を刷いたように黒く染まっています。
「幅広のばあいは、この状態で包丁で切ってます。どうもね、乾燥させた状態で切るとこなるし、すごい塩がね、舞って大変なので、煮てから切ることにしました。でね、大きいまんま煮たほうがいいような気がして。美味しい気がするんですよね。細切りの場合は仕方がないですけれど、幅広は私の場合は大きいままで煮るんです。そのほうが栄養が逃げないんじゃないかって」。
乾燥網1枚あたりに200~300g、一度の加工で大体60枚。一回に沢山できるものではない上に、それを連続するのだから決して楽な仕事ではありません。昔はお父様とふたりで作業されていましたが、今は製造行程は彼女ひとり。つけるのに1日。煮るのに2日。乾燥させるのにまた1日。細切りをつくろうと思うと、締めるのにもう1日。あらめの製造には最低でも5日はかかります。
「体力との勝負です。どういうわけか年々きつくなりますよ」。
伴林さんは笑いますが、海水に戻して水分をたっぷり吸い込んだあらめを引き上げ、釜で炊き上げ、乾燥させるという作業は、言葉以上に過酷でしょう。また力仕事でありながら、繊細で丁寧な配慮が必要な仕事でもあります。優しくそれでいて分厚い彼女の両手。柔らかく味わい深い本物の美味しさを作り出すのは、身体をつかって働く伴林さんの力強い両手と心遣いでした。

中村の浜で出会った地元の方がいいました。

「彼女はね、食べるひとのことも考えてつくっているんですよ。彼女にしか出来ない心遣いがあって、だから彼女のあらめは柔らかくて美味しい」。

仕入れたばかりのあらめを見せていただく中で、葉の先端に近い部分が一部変色したように白くなっているあらめが目立ちました。 「最近、こういう風に茶色くなっているのが増えてきているんです。焼けているんでしょうかねえ。これは茶色ですけれど、白くなっているのもあります。南の方から、だんだん海草が白くなってきているという話も聞いたのですけれど・・・、石灰化というのかしらね。あらめもいずれそうなっちゃうんのかしら、と思ったりね」。
九州方面から暖流に乗ってやってきた魚も、昔は冬季の島根の海では生き残ることができなかったといいますが、今では海そのものが暖かくなったせいか、暖流の魚がそのまま定着しているといいます。陸地の生産者からも耳にする気候の変化。ここ隠岐の海でも少しずつ変わりつつある何かが、あらめにも影響を及ぼしているのかもしれません。

この記事を書いた人

プレマシャンティ開発担当。料理人
横山奈保 (よこやま なほ)

日本生まれ、海外育ち。
肉体の極限を追い求める競技者として育ち、肉体と食、食と精神、精神と肉体の関係を知る。現プレマシャンティのお母さん。突き詰め出したら止まらない、研究者気質でマニアックな料理人。

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あらめが苦い、と思い込んでいる方にお勧めしたい、磯風味豊かな隠岐あらめ

隠岐島から柔らかな食感、磯の風味が豊かなあらめをお届けします。調理方法であらめの苦みがでたり、でなかったりするものだと思い込んでいる方にこそ試して頂きたい、隠岐島の郷土食「幅広あらめ」。4月から6月初旬にかけての限られた時期に収穫されたあらめの新芽のみを丁寧に釜ゆでし乾燥させました。

プレマシャンティ 隠岐 巾広あらめを見てみる>>

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執筆者紹介

中川信男

中川信男 (なかがわ のぶお)

京都市生まれ。
20代は山や武道、インドや東南アジア諸国で修行。3人の介護、5人の子育てを通じ、東西の自然療法に親しむ。 ただし、最新科学と医学の進化も否定せず、太古の叡智と近現代の知見、技術革新のバランスの取れた融合を目指す。
1999年プレマ事務所設立、現プレマ株式会社 代表取締役。
2018、2019、2020年イタリアジェラート協会開催の世界大会で3年連続入賞。
宅地建物取引士、電気工事士(2種)、健康不動産株式会社 代表取締役、電磁波環境測定対策士組合長。
趣味はマリンスポーツ。脳内は基本、海か湖のことを考えている。

久野真希子

久野真希子 (くの まきこ)

2010年入社。海外事業担当。「フォーリア」や「コトー・ナンテ」などさまざまな輸入品の取り扱いにはじまり、海外での事業展開を進めています。

岸江治次

岸江治次 (きしえ はるつぐ)

20代に桜沢思想に出会いマクロビオティックを始め、新卒でムソー株式会社入社、及び、正食協会にて30年間勤務。現在プレマ株式会社執行役員

横山奈保

横山奈保 (よこやま なほ)

プレマシャンティのお母さん。突き詰め出したら止まらない、研究者気質でマニアックな料理人。

花井良平

花井良平 (はないりょうへい)

学生時代からマクロビオティックを始め、オーサワジャパンにて27年間勤務し、同社社長を歴任。その後、海の精企画部長。現在陰陽ライフ代表取締役

山口勝弘

山口勝弘 (やまぐちかつひろ)

1955年 大阪市生まれ。 アルファウェーブ開発者。

山崎美穂

山崎美穂 (やまさき みほ)

「仕事と家庭を両立しながら頑張っています!」プレマ株式会社プロモーションセクション プロモーター

上ヶ谷友理

上ヶ谷友理 (うえがたに ゆり)

娘たちは2人とも生まれつき卵・牛乳アレルギー&アトピーで、小さいころは食べるものや日々の生活に四苦八苦していました。これからは自分自身の健康も意識しながら、前向きに笑顔で過ごしていきたいです!

寺嶋康浩

寺嶋康浩 (てらしま やすひろ)

電磁波環境測定士協会理事長。電磁波対策だけしかしない第二種電気工事士。関西大学工学部卒。
広告制作や宣伝に携わる傍、身体、心、食事、運動4つの面から健康をサポートする
ポラリティセラピーやクラニオセイクラル(頭蓋仙骨療法)を学ぶ。2011年、父の死を機にボディワーカーに転身。全国で述べ1,000人以上の身体と向き合いセルフケアを提供している。趣味は山登り、古武術、ダンス。

坂井歩

坂井歩 (さかい あゆみ)

ひとたびハマると、どっぷり浸かってしまう根っからのオタク気質。恐竜、日本史、きのこ、首都、絵本、百人一首……子どもの成長にともない、その無駄な知識をひけらかしては喜ぶ毎日。

西村初美

西村初美 (にしむらはつみ)

京都生まれの京都育ち。2013年よりプレマ勤務。普段はおっとり型なのに、考えるより先に見切り発車で行動してしまい後から困ることも多々。犬と中学生との二人と一匹暮らし。

中川愛

中川愛 (なかがわあい)

1996年、インド生まれ。帰国後は男の子と外を駆け回る活発な幼少期を過ごす。小学4年から中学までをかつやま子どもの村小中学校で、高校はきのくに国際高等専修学校で充実した学校生活を送る。立命館大学を卒業後、母校のかつやま子どもの村小中学校で教員を務め、2022年プレマ株式会社に入社。

望月索

望月索 (もちづき さく)

人一倍不摂生な出版仕事人が37 歳、40 歳、44 歳で出産、育児の経験も積み、健やかな暮らしについて学び合う協会の設立メンバーに。編集、ライター、一般社団法人日本マクロヘルス協会理事。

内田光香

内田光香 (うちだ みか)

編集職を経て、2021年入社。生まれた時から数多くの土地で暮らし、各国を旅した経験から、そこだけの「人・もの・文化」の魅力を伝えるのがライフワーク。
おいしいヴィーガン料理を愛する食いしん坊。野菜ぎらいな小学生の娘と二人暮らし。

十二村英里

十二村英里 (じゅうにむらえり)

プレマルシェ・スタジオ中目黒でイベント運営や展示販売などを担当。2021年に待望の第一子を妊娠し、翌年に無事出産。新米ママとして育児と仕事に奮闘する日々。

鈴木 啓子

鈴木 啓子 (すずき けいこ)

現代の忙しい女性たちに、米ぬかと大豆の自社製品を使った簡単で美味しいレシピや食材をまるごと食べる一物全体の大切さをイベントや講座で伝えています。

松本春菜

松本春菜 (まつもとはるな)

ジェンダーフリーの長男と、ラガーマンの次男を育てる2児のシングルマザー。子どもたちも大きくなり、子育てに余裕が出てきたのでいろいろなことに興味津々。

堂尻友子

堂尻友子 (どうじり ゆうこ)

自然への畏敬の念と自然食品への関心を深める。システム管理会社勤務を経て、現在2児の母。プレマシャンティのデータ&家電担当。

城島淳子

城島淳子 (じょうじま じゅんこ)

自然療法や波動医学を実践。解熱剤や抗生剤等を使わず3人の息子を育てている。九州在住でご当地商品の開発担当。

峰村東子

峰村東子 (みねむら はるこ)

発酵などの実験・体験が好きなみそソムリエ。家にある発酵中の瓶は数知れず。 まれに個人で調味料作りのワークショップ開催。週末は卓球に勤しむ2児の母。プレマ株式会社 東京在住スタッフ。