ほししいたけは「乾しいたけ」と書きますが、「干」ではなく、「乾」という字を当てるには理由があります。
「干」は多く「天日に干したもの」を示し、「乾」は「火(熱)で乾燥させたもの」を示しています。しいたけは、天日に干すものと思われている方が多いようですが、往々にして勘違い。伝統的に「火」を使って乾燥してきたしいたけには、「乾」の字があてられています。
収穫したしいたけは、昔は薪や炭を焚いて、現代は灯油や電気で乾燥させます。これは、しいたけの持つ性質によるものです。水分の多いしいたけは痛みが非常に早く、日本の気候でゆっくりと天日にほしていたのでは、腐敗してしまいます。そのため人為的に熱を加え、温度を高くして乾燥しやすい環境をつくり、早急に乾燥させる必要があったといいます。しいたけの場合は、急速に乾燥すると、味だけでなく香りも凝縮したようです。乾燥までに要する時間は長くて1日ほどです。
さておき、乾しいたけがどういう経路を経て、手元に届くかご存知ですか?
生しいたけを収穫し、乾燥し、袋に詰める。
流れに沿って大まかに行程を挙げるとこれで説明が終わりますが、どんなものごとも掘り下げると意外と深いものです。まずは栽培から、掘り下げてみます。
一般市場に出ているしいたけは、ほとんどが栽培です。ご存知の方も多いでしょうが、栽培の方法は大きく1)原木栽培 と 2)菌床栽培 の2種に分かれます。後者の菌床栽培は、マイタケやえのきだけ、しめじなどに主流の栽培方法で、おがくずと呼ばれる木の細かい削りくずを集めてつくった塊に、きのこの種である菌を仕込んで栽培する方法です。一定の湿度と温度を保っていれば、比較的楽に栽培できるのが特徴で、季節を問わず収穫できます。家庭用栽培キットとして販売されているものは、往々にしてこの菌床栽培です。対して前者の原木栽培は、くぬぎやならなどの木に「たねごま」と呼ばれる菌を埋め込んで栽培します。肉厚で味の濃いものが取れる半面、栽培の場となる木(ほだ木)を並べる広いほだ場が必要だったり、ほだ木を伐りだす季節があったり、ほだ木を乾かす場所が必要だったり、しいたけが芽を吹くまでに約2年という時間がかかったり、収穫は年2回 春と秋に限定されたりと、手間がかかります。
プレマシャンティの乾しいたけは、前者の原木栽培しいたけを原料にしていますので、原木しいたけについて、もう少し掘り下げてみます。春に収穫されるしいたけを春子、秋に収穫されるしいたけを秋子と呼びます。傾向として、春子は身が厚い「どんこ」が多く、秋子は香りが高い「香信(こうしん)」が多いと云われます。どんこや香信という呼び名は、見た目(形状)によってつけられていますが、この形状は成長期の気温によって左右されているため、収穫季節との関係性が生まれます。つまり、寒い時期に時間をかけてゆっくり育つと肉厚になり、菌が好む高温期に育つと生育が早く肉が薄くなるというわけです。春と秋に収穫されたしいたけは、生で販売するほかは保存がきくよう乾燥し、箱に詰められ市場に出荷します。
出荷された乾しいたけの行き先は、入札所。
集められた乾しいたけが集まる入札所は、入札の権利を持ったひとたちだけに開放された競りの場です。プレマシャンティの乾しいたけは、この競りの場に入る権利を持った乾しいたけ専門問屋さんが、仕入れから小分けまでの工程を担っています。入札所には箱に入れられた乾しいたけが、所狭しと並んでいるといいます。その中からどれを選ぶかで、乾しいたけの質が決まるといっても過言ではありません。粒の大きさや色、肌、傘の内側など、見極めるポイントはたくさんあるそうですが、それらを総合的に判断して、またお客様の用途を踏まえて仕入れをするのが、「目利き」の仕入れ人です。ここでほぼ90%、商品の質が決まるといっても過言ではありません。
ちなみにプレマシャンティの乾しいたけを扱うのは、福岡の目利き問屋「武久」さん。香り高い乾しいたけが集まる熊本の市場と、厳しい審査を経て初めて入札所に入る権利が得られるという大分の市場を軸に、長く九州産の乾しいたけを扱ってこられた乾しいたけ専門の問屋さんです。