プレマシャンティ開発チーム 横山です。
先日、お客様から頂いた「板わかめ」のお問い合わせで、
ご紹介を始める前のことを、ふと思い出しました。
「島根のわかめは養殖ですか?天然ですか??」
漁師や生産者に、何度か似たような質問をしましたが、
彼らの返事は、いつも似通っていました。
「養殖でもあって、天然でもあるんだよな」
当時の私には、養殖と天然は、似て非なるもの。
決して相いれないと思っていたので、誤魔化されたような
騙されたような、変な気持ちで、頭の中はぐるぐる。
養殖で天然なんて、まったくもって腑に落ちず、
しかめっ面で目を合わせると、
「だからさ~」と始まりました。
「養殖わかめは、種をつけるでしょう。
種をつけて、海に沈める。
けれど海は、仕切りがない。
成長したわかめは、胞子を出す。
その胞子が流れて、海の中を漂って、岩にくっつく。
それが、どんどん成長する。
「このわかめは、養殖か、それとも天然か。どっちだと思う?」
明確な答えがないまま、いらだちは残りましたが、
その後、いくつかの漁場を見る機会を得て、
問いの輪郭が、ぼんやりと判ったような気がします。
自然の海藻は、岩場に根を張ります。
波の荒い場所であったり、穏やかな場所であったり、
深い海の底であったり、岸に近い場所であったりと
海藻によってそれぞれです
対して養殖は、多くが人工物を使います。
海藻の種類によって、陸上で胞子から育てた苗を種付けしたり、
胞子が漂う時期に、海中に網を沈めて種付けをしたり、
タンクを沈めたりと方法が異なります。
養殖の漁場が海岸に隣接しているときもあれば、
かなり離れたところにいかだが浮かんでいるときもあり、
場所もまちまちです。
養殖の場合は、網やロープをひきあげて収穫するから、
「養殖」された海藻であるとわかります。
「天然」の場合は、岩場で繁殖したものを採藻するから、
天然だというのであれば、そのとおりですが、
胞子をつけた網を沈めて、養殖している近くには、
岩に同じ海藻が茂っていることが、少なくないのです。
海がつながっている以上、海藻も胞子を出して繁殖する以上、
これは、至極当たり前の出来事です。
けれども、「養殖」と「天然」という区分が、
市場での価値を変化させる大きな要因になるのなら、
何をもって区分するのか、定義づけが重要です。
採取された海藻を見ても、食べても、養殖か天然かは、
判別できない場合が非常に多いにも関わらず、です。
島根でのやり取りから、一年ほどした頃、変なご縁で、
ドイツからの訪問者の質問を受けました。
「オーガニックの海藻を探してます。知りませんか?」
日本の有機JASには、海藻の規格は存在しません。
細かい理由は知りませんが、生育する場所や方法、
土壌から検分する農産物や畜産物の有機認証制度は、
「区切り」がされているかどうかが、鍵であるなら、
明確な区切りのない海は、対象から外れているのだろうと、
想像ができます。
日本における海藻の養殖は、外洋や湾で行います。
けれども、その方の常識は、「養殖=大きな水槽」。
海藻であっても、例外はなかったようです。
のりの養殖場を見に行って、納得されたかどうかはわかりません。
その後もまだ、他の人を頼って、オーガニックの海藻を求めて、
別の地域へ足を運んだようなので、決して満足のいく
結果ではなかったのだと思います。
現場をみること。
現場で関わる人たちに、多く話を聞くこと。
そのうえで、全体を見て自分で判断をすること。
島根での禅問答は、恐らく、聞いただけでわかるのか?
という彼らからの問いだったように思います。
ドイツ人バイヤーの行動もまた、同じです。
板わかめに限って云えば、断片を組み合わせると、
岩場にあるものも摘みとって、混ぜる人もあるようなので、
「敢えて断言しなかった」が、一番実態に近いようです。
けれどその一件以来、一層、情報は自分で集めるように、
より慎重に考えるようになりました。
有機JAS認証のように、細かい規格が設けられて、
表現までもが、制約を受ける場合もあります。
けれど可能な限り、形骸化した表現に頼ったりせずに、
言葉を選んで、事実に一番近い言葉を選びわけること。
これは、恐らく私たち開発チームの、
大切な役割のひとつです。