祖母が健在だった頃、彼女がよく云いました。
「ひじきと大豆は、あいくさ。」
海の恵みであるひじきは、山の恵みである大豆と炊き合せると美味しいと
いう意味だそうです。「大豆」がなければ、油揚げでも構いません。
ひじきには必ず大豆をいれる祖母に、「どうして大豆?」と尋ねても、
「昔からそういうからねえ」と笑うばかりでした。
はっきりとした理由はわからないけれど、昔からそう云われていること。
それがおばあちゃんの知恵袋なのでしょう。
プレマシャンティの芽ひじきは、ぷりぷりとして食感も良く、
磯の味も濃いのに、ペースト状にしても独特の苦みや渋みが残りません。
海藻を英語でSea Vegetable と呼びますが、
まさしく海の野菜という名前にふさわしい摘みたての野菜のような新鮮な味わいです。
水で戻した後、さっと湯がいてサラダのように召し上がって頂ける芽ひじきなのに、
ひじき料理で思いつくのは煮物。
そしてひじきの煮物と云えば、甘辛いか、醤油で煮しめたような醤油辛いものが多いのです。
「芽ひじきの持つ素材本来の味を引き出そう。」
そう決心して考えたレシピは、
意外にも、大豆とひじきの相性を体感できる味に仕上がりました。
芽ひじきのプチプチとした食感に、大豆のバターのような滑らかな食感。
ふっくらと柔らかい大豆のふくよかな風味と甘みに、
塩分と滋味のバランスが取れた芽ひじきの持つ磯の風味、
そして後を追うように続く本醸造醤油の深みのあるコク。
薄味なのにあっさりしすぎない、まとまりのある味わいです。
食品市場を席巻するのは、たったひと口で、
脳に「おいしい!」と強烈なメッセージを送る商品です。
味付けも濃く、インパクトのある味を『設計』するのもまたひとつの方法だとは思いますが、
それではせっかくの素材の味が死んでしまいます。
素材の味を引き出すことは、身体をいたわること。
身体をいたわることは、最後に「美味しかった」と思える味にすること。
ただしひとつ、大切な条件が加わります。
味を引き出せる「素材」を選ぶこと。
結局、これが一番のカギなのかもしれません。