年明け 1月6日に東シナ海で、イランのグローリーシッピングが運営するパナマ船籍のタンカー「サンチ(Sanchi)」が座礁しました。石油製品を大量に積み込んだこのタンカーは、数日間炎上したのち沈没、1ヶ月経った今もまだそのままの状態で同海域にあります。
日本では、まるでタイミングを合わせるように歴史的な大型寒波が到来、国内の報道の多くは各地の気象状況を伝えていました。その影響か日本国内では大きく取り上げられていないこの事故ですが、海外では「日本の海が死滅するのではないか」とも予測されている歴史上最悪の海難事故です。
場所は上海の東沖合約160海里の海域。香港船籍の貨物船と衝突したタンカーは、衝突で火災が発生、その後ほぼ1週間炎上を続け、14日に同海域に沈没したと伝えられています。沈没したタンカーには、13万6000トン(19日に、交通運輸省により 11万1000トンと訂正)の軽質原油が積載されていましたが、このほぼ全量が流出したのではないかと言われています。「サンチ(Sanchi)」が積載していた原油は、1月15日のFrance24ではLight crude oil(特軽量原油)と書かれていますが、1月8日のBBC(Sanchi: Burning tanker off Chinese coast ‘in danger of exploding’)では、Condensateとあり実際にどちらが積載されていたのかが報道機関により表現が異なっている様子です。いずれにせよ、一体どの程度の量が海に流れ出したのか現時点でも明確ではありませんが、1月18日のAFP BB Newsでは「中国国家海洋局(SOA)は17日夜、流出した石油が4方向に帯状に広がり、約101平方キロメートルの範囲に油膜が浮いていると発表した。これはフランスの首都パリの広さに相当する」とあり、その後2月3日には「日本の南西諸島の沿岸に「油のようなもの」が漂着していることが分かった」と報道されています。場所は鹿児島県宝島で、「約7キロにわたる海岸線で油状の漂着物が確認されている」。
重油の流出は過去にもありましたので、油にまみれた海鳥の姿を覚えておられる方は少なくないと思います。しかしながら、「サンチ(Sanchi)」に積載されていたのは「重油」ではありません。積載されていたのがLight crude oilであれ、Condensateであれ、いずれにせよ共通する性質は、無色透明に近く粘りが少ないということ。そして毒性が強く、爆発しやすい性質があり、海洋生物に大きな被害を与える可能性が高いとの予測がなされているという点です。潮の流れを踏まえた予測図も複数の機関が発表しており、いずれも九州沖から日本海・太平洋に流れ込むのではないかとされているものの、現時点でははっきりとした予測も立たず、また被害の範囲はわかりません。
過去に発生した多数の原油輸送タンカーの事故も、1) 流出量、2) 流出した原油の量、3) 流出海域の海流 によってその影響も被害範囲も変わっていますので、今の段階では何ともいえません。
プレマシャンティを立ち上げて以来、産地を巡り収穫物を確認する傍ら、いつもアンテナを張っています。気象状況、海の様子、産地の様子など多岐にわたる情報を集め、観察し、分析することが習慣でありながら、気づきや予測の大多数はお伝えしないと決め内側に留めています。無用な混乱を招きたくないという想いから、また予測でしかない内容をお伝えするのは無責任ではないかという想いからの決断です。しかしながら今回、弊社代表 中川に背中を押され、敢えて影響が未知であるこの海難事故に触れています。
プレマシャンティでご紹介している九州産のわかめやひじきなどの海草類、隠岐のあらめ、伊勢の海草類、北海道産の昆布、ふりだしや濃縮だしに使っている節類やこんぶまで、すべて海から頂いている恵みです。今回の事故が今後の日本の海にどのような影響を及ぼすのかによって、これらのご紹介状況は変わります。またお塩の状態も変わるかもしれません。私に出来るのは、情報を追いかけ、的確に分析し、全体像を把握するという1点のみで、先に挙げた内容はすべて「可能性」でしかありません。どうか大事にならないようにと、祈るのみです。
(文責:プレマシャンティチーム 横山)