プレマシャンティ開発チーム横山です。
ドレッシングやたれ、液体だし、○○の素、
お惣菜といったいわゆる加工食品をつくる時に、
いつも気になるのが甘さです。
開けたら食べられるレトルトのお惣菜はもとより、
ドレッシングや○○の素といった料理を簡単にする
合わせ調味料や「これ1本にお任せ」な液体だしなど
”ナンデモカンデモ”甘く仕上がります。
曰く、「甘くないと売れない」。
食品業界の都市伝説です。
いや、現実なのかも。
私が関わる作り手さんは主に、
粗製糖を使われるところが多く、
お菓子など甘味をつくる会社は主に
粗製糖一本やりでした。
ですがある時から何故だか、
サトウキビ糖より甜菜糖が優勢になって
作り手がじわじわシフトしています。
「甜菜糖を使ってほしいという
お客様のご要望が増えたんです。」
とおっしゃる作り手さんも多く、
これは、とても謎。
「甜菜糖を使ってほしい」とご要望される
その背景が気になるところです。
話がそれました。
どんな砂糖を選びますかと問われたら、
勝手の良い食べるものをご紹介する生業では、
汎用性が高く安定するのは分蜜糖です。
前回のお砂糖のお話でふれたように、
普段使いしているお砂糖は、黒糖以外(※)は、
度合いは違えど「分蜜糖」に属します。
※赤糖、和三盆は除きます。
原材料から考えるなら、
圧倒的に甘蔗糖。
つまり サトウキビ糖でしょうか。
日本国内では甘蔗よりも甜菜の方が、
より多く原料から精糖されているのですが、
砂糖単体の自給率はわずか30%ほどで、
残りの70%は輸入原料糖頼みです。
世界的にも甘蔗糖の製造量が多く、自然と
国内流通する砂糖=甘蔗糖>甜菜糖の
図式がなりたってしまいます。
つまり甘蔗糖は、1)供給量が多く、2)手に入りやすく
3)価格的にも甜菜糖より安価 ということです。
有機認証をうけた砂糖を探すなら、
断然 甘蔗糖でサトウキビ原料です。
国産よりも輸入の割合が増えますが、、
原料糖の供給量が違います。
ちなみに・・・。
甜菜糖でオーガニック(有機認証)がないかなと
ネット検索してみると、リトアニアとスイスの
2種のヨーロッパ大陸産がでてきました。
リトアニア産は、25キロで希望小売価格が21,222円。
大体 1キロ当たりが849円です。
輸入元は、ムソー商事。
スイス認証は、25キロで小売価格が42,000円。
1キロ当たりが1680円で、輸入元はナカショウ。
ただし現在、販売は休止中。
甘蔗糖で探すと、業務用で目に留まったのは、
コロンビア原料で25キロ 希望価格が9,800円。
輸入元は、ダーボン・オーガニック。
1キロ当たりは、392円です。
有機認証をキーワードにするなら、
甜菜糖は高級品かもしれません。
閑話休題。
製品化されている製造量が多いものほど
入手価格は下がる傾向にあるので、
粗糖は上白糖よりも高め。
製造に手間がかかるとその分、
値段に反映されるので、手間がかかる順に、
黒糖、グラニュー糖、上白糖で、
価格も黒糖が一番高額です。
キリッ、パリっとメリハリがあり、
大衆受けしやすく味が仕上がりやすいのは、
甜菜糖よりもサトウキビ糖。
渋みが少ない分、
甘蔗糖(サトウキビ糖)の方が、
使い勝手がよくなります。
また砂糖の種類で考えたなら、
ショ糖の純度が高いグラニュー糖が、
味の輪郭がはっきりしやすく、
少量でも甘く感じます。
同じく砂糖の種類で変わるのは、
保存性の高さでしょうか。
水分含有量が一番低いグラニュー糖は、
湿気にくい特質をもっています。
業務用20キロ、30キロ単位で購入するところは、
温度変化の少ないところで保存するようにしていても
それでも「湿気にくい」は安心感が増します。
甜菜糖をと云われると、どうしても、
味がはっきりしやすい甜菜グラニュー糖、
ビートグラニュー糖に手が伸びます。
それは甜菜糖が持つ渋さも
原因のひとつです。
また甘蔗糖より「ぼやけた」
甜菜糖の甘さも原因のひとつです。
液体の調味料は特に、甜菜特有の渋みが出やすく、
調和するためにより濃い味付けにしたりと
親しみやすい味にする工夫が必須です。
砂糖が必須の甘いお菓子類もまた同じで、
甜菜糖の渋みが「コク」と呼べないものもあり、
どうしても甜菜糖に変えるなら、よりフラットな
グラニューが使いやすいとする声も少なくありません。
ただひとつ。
ショ糖純度の高いグラニュー糖を、
「良くない」とする声も多い中、
敢えて言うなら・・・。
同じ「甘さ」に仕上げるのであれば、
時として、甜菜糖と甜菜グラニュー糖なら、
甜菜グラニュー糖を使った方が、
少量で事足りたりもします。
あとは甜菜糖に限って云うなら特に、
栽培環境との絡みがあって「精製度が低い=ベター」と
一概に判断しても良いのかなあと個人的に、
あくまでも私個人的に考えます。
甘蔗糖も甜菜糖も、種類も、
食材や作るものとの組み合わせでの
「使い分け」です。
ただ敢えていうのなら、サトウキビも甜菜糖も、
原材料の産地が熱帯か寒帯かの違いはあれど
含有成分の違いはあれど、本質は「糖」。
ショ糖です。
砂糖は、お菓子だけ。
日々の食事には、使わない。
甘いお菓子は、週に一度、
月に数回のお楽しみ程度にするのが、
無難だよなあとは思います。
どんなに「甜菜糖を!」の追い風を受けても、
有機認証との兼ね合いで甘蔗糖を使うところもあるし、
分蜜糖のなかでも甘蔗糖の原料糖(粗糖)が一番と
一本やりの作り手さんもおられます。
譲れない芯は確かにあるのだけれど、
それぞれの作り手さんの考え方を聞きとりながら、
こちらの考え方を伝えながら、お互いの接点を探り、
ひとつひとつ積み上げながらつくっていく過程は
独楽が回り続ける中心を探すのと似ています。
私たちが、私が、考える「味」の定義や、
「規格」、「価格」、「価値」など
砂糖ひとつ、甘さひとつを取り巻くあれこれを
ゆっくりすり合わせながらモノづくりをするしか
ないのかなあとも考えています。
目指せ、甘くない食卓。
まずは「甘くないと売れない」都市伝説から
脱却するのが第一の目標です。