大豆の旨みが凝縮されたこうや豆腐は、古人の智恵を今に伝える保存食です。
東日本では凍み豆腐(しみどうふ)と呼ばれ、西日本ではこうや豆腐と呼ばれることが多いですが、
どちらも大豆(豆腐)からつくる保存食でつくり方の基本は同じ。
大豆から豆乳をとって豆腐にし、スライスしたあと凍らせ、さらに解凍したものを干しあげてつくります。
大豆とにがりだけでつくるシンプルなこうや豆腐は、大豆の旨みにあふれています。
大豆を水に浸漬して粉砕した豆腐の素「呉(ご)」は、加熱するとおからと豆乳が容易になります。
製造効率を考えると、加熱分離が良いのですが、一度加熱した豆乳に「にがり」を加え、
再度加熱したのでは大豆そのものが持つ「旨み」が飛んでしまいます。
効率ではなく美味しさを追求したいから、大豆は「生しぼり」。
「呉(ご)」を加熱せずに豆乳とおからを分離することで、加熱の回数を減らし大豆がもつ香りや旨みを閉じ込めました。
美味しさの秘密はそれだけではありません。
スライスし凍結した豆腐を、凍ったまま冷凍庫で長期間熟成させます。
出来上がったこうや豆腐には、膨軟剤、重曹を使用していません。
乾燥させる前に重曹液をしみ込ませると、ふんわりとしたスポンジのような食感にしあがります。
しかしこうや豆腐そのものの滋味ぶかさは、しっかりと噛み締めたときに口内に広がるものです。
素材の味と食材の味。
その両方を生かすために、無駄なものをすべて省いてつくったこうや豆腐は、
素材やだしの味を含んで一層おいしく仕上がります。
植物性たんぱく質たっぷり。現代人が不足しがちなカルシウムやリン、マグネシウム、鉄分などを
豊富に含んだこうや豆腐は、毎日取り入れたい食品のひとつです。