これまで様々な味噌を紹介してきたプレマシャンティは、伝統的な食と伝統的手法で作られた食品を大切にしています。
味噌の種類と原料
伝統的な味噌の材料は”穀物”と”塩”、そして”水”ととてもシンプル。代表的なものは、麹をつけた米と大豆でつくる米味噌、麹をつけた麦と大豆の麦味噌、この二つの合わせ味噌、そし八丁味噌としても有名な豆味噌です。もちろん、豆味噌と麦味噌、米味噌との合わせ味噌もあります。そして粟、ひえなど様々な雑穀の味噌も雑穀ブームとともに注目されました。雑穀の味噌は、戦時中に米や麦が手に入れられずやむなく雑穀で作ったという話もあります。また、味噌を色で種類分けすることもありますが、これはあくまでも見かけの色で分けるものです。
味噌の色と味
味噌の色の違いは、原料の配合と熟成期間の違いによって生じます。中部・関東から以北に多い塩が効いた辛口のものは雑菌の繁殖を抑制する塩分濃度で、より熟成期間を長くすることができます。熟成期間を長くするとメイラード反応により徐々に色が濃くなっていくのです。また、麹の割合を増やすことによって甘い味噌ができると一般的には言われていますが、同じ割合でも塩加減や発酵期間の調整で甘くなったり辛くなったりするのは、熟練の職人の技でもあります。日本料理で使われる滑らかで美しい白い味噌は、米の精米(精白)の加減や材料を吟味し、熟成期間を短くして白さを追及して作られた味噌です。あくまでも大まかにですが、白い味噌は甘め、色の濃いものは辛目と思っていいでしょう。原料がシンプルなだけに、原料の違いと熟成期間により味わいが変わってくるのも味噌の面白さです。
天然発酵と加温発酵
伝統的な味噌は麹と合わせた米や麦と大豆、あるいは大豆に麹をつけて一切の人工的な温度調節をせずに熟成させる天然発酵(天然醸造)で作られます。加温発酵は、明治時代の終わりに開発され、人工的に温度を上げ、温度管理することで発酵を促し熟成期間を短くして製品化する方法で、促醸・速醸などとも言われます。これに加えて、発酵促進剤や乳酸菌などを加えて加温することで更にスピードアップして作る方法もあるようです。これらは、同じ設備で年に何回も製品化ができ、大量生産によるコストダウン売り上げアップにつながることで広がり始め、戦前に新しい速醸法が開発公開され全国に広まりました。今では、多くの味噌が加温発酵で作られています。加温し、温度を管理すると、発酵スピードが速くなりますが、一定の温度に適した菌だけが働くことになります。一方天然醸造は、季節の温度や湿度の変化に対応した様々な菌が働くことにより、深い味わいとたくさんの豊富な栄養が生み出されると言われています。
食卓に味噌を
味噌汁を食さない、味噌を使わない家庭も増えているようですが、味噌の健康効果は計り知れません。味噌には酵素、乳酸菌、肉や魚今ほど食べていなかった時代の貴重な蛋白源であったといわれるほどのたんぱく質が、分解されたアミノ酸としても含まれ、ビタミンミネラル等数え切れないほどの栄養素が含まれています。また、体内で起きると老化の原因として大きく取り上げられるようになったメイラード反応(糖化反応)ですが、味噌のメイラード反応で生まれるメラノイジンは抗酸化作用が注目され、医学的にも研究が進められているスーパーフードです。
長崎の原爆後、味噌汁と玄米とで放射能に打ち勝ったという秋月医師の体験とその著作「体質と食物」も有名になりました。日本には「味噌で医者要らず」「味噌汁は朝の毒消し」「味噌汁一杯三里の力」「味噌汁は不老長寿の薬」「医者に金をはらうより味噌屋に払え」など多くの健康に関する味噌のことわざがあり、味噌が大切にされ、健康に寄与してきたことが伝えられています。
味噌を見直し、味わいのもっと食卓で味噌を味わい楽しんでいただきたい、そんな思いから今回は九州で熟練の職人が作る天然発酵の味噌を紹介します。