わらび餅の「わらび」は、春に芽がでる山菜の蕨(わらび)だと、ご存知でしたか?
先日ご訪問した先で、「蕨の根」からとったでんぷん100%の本わらび粉の中でも、最上級の本わらび粉でつくったわらび餅を頂く機会に恵まれました。
わらび餅って、ぷるんとした食感、もちっとした食感と表現されますが、これが全然、似て非なるもの。ねっとりと絡みつくような質感なのにキレが良く、口の中でもまったりとしているのに滑らかで、馴染み深い「わらび餅」の食感とは一線を画した全くの別物でした。味はというと、淡白なのに甘みがある。甘みや苦味とは違う質量のある味に、きな粉の香ばしさが不思議にぴったりと合わさって、精白糖よりも黒砂糖などのより雑味の多い味と合わさると、さらに深い味わいになりそうな重みと奥行きのある味わいでした。
春の山菜で頂く蕨は、芽がまだくるくると巻いたままの若芽を摘みとって、あく抜きをして、味をつけ、供するもの。少し苦味があって、蕨を頂くと「あー春のがきた」と実感できます。けれども、わらび餅の主役は根っこ。芽は摘まれることなく、根っこを肥やして、たっぷりとでんぷん質をため込みます。根っこを肥やすといっても、1本が大人の腕や脚のように太くなるわけではありません。ひげのような頼りない根っこを集めて、でんぷん質を搾り取りますが、「蕨」からとった「わらび粉」は、日本国内の料亭や和菓子さんなど、毎年決まったお客様にお届けするので精一杯。特に最上級のわらび粉は、ほんの数パーセントしかないと云われるほど、とても貴重なものです。
絞りとったでんぷん質を、晒して乾かし粉は灰色をおびた褐色。グレードの高いものほど、このグレーが薄くなります。手ごろに購入できる「わらび餅粉」は白いですが、これはタピオカや甘藷などの「わらび」以外のでんぷん質を使って、わらび餅に似た食感を再現しています。わらび粉以外をつかった「わらび餅粉」のいいところは、値段の手ごろさもひとつですが、固くなりにくく、作った時の食感が翌日にまで持ち越せること。あとは家庭での扱いやすさ、でしょうね。
昔、わらび餅は、「そのひ餅」とも呼ばれていたと聞きました。和菓子屋さんで、朝につくったものをお昼までに売り切ってしまうものだったとか。蕨のでんぷん質は老化が早く、つくった直後からゆっくりと固くなり、ある点からはどんどん固さが増すのだそうです。夕方には、朝とは全く別物ともいえる固さになってしまうから、ある意味贅沢なおやつだったといえます。
流通の範囲が広くなり、同じ食感を長く保つ必要が出てきた今、タピオカやサツマイモなど、食感が長持ちする他の植物性でんぷんが、蕨粉に代わり「わらび餅粉」と呼ばれるようになりました。
蕨の根っこを集めてくれる人も少なくなれば、蕨自体も珍しくなり、価格面でも手軽に使えるものではなくなったという事実も、蕨でんぷんのはいらない「わらび餅粉」が普及した外せない背景でしょう。
供給量が極端に少ないので、なかなか手には入りませんが、蕨粉はいつかプレマシャンティでもご紹介したいアイテムです。