京都産業大学御中
京都市中京区三条通猪熊西入御供町308
プレマ株式会社
代表取締役社長 中川信男
http://prema.co.jp
2020年4月8日
前略
貴校に関する常軌を逸する誹謗中傷が行われている現状につき、心よりお見舞いを申し上げます。
貴校の教職員、在校生の皆さまの心痛を考えますと、私の思いをお伝えせずにはいられず、お手紙をいたしました。
弊社は京都市内で自然食の通信販売、店舗販売、飲食店事業(東京にも店舗あり)を行っている事業者です。弊社の飲食事業部門におきましては、世間一般よりもいち早く、徹底した消毒や強制換気、社会的距離の確保のための座席数の間引き措置を行い、また公に告知してまいりました。また、うち1つの店におきましては、貴校のアルバイトの学生様が店舗移転などの通勤が難しくなる状況にも、個人の都合は横において、店のため、お客様のために一心不乱に努力してくれました。
私どもも、今般の非常事態宣言の京都適用を待たずして、より社会的距離の確保のために協力するべく、一昨日から店舗内での飲食を全面禁止し、デリバリーや通販のみで営業することを決めましたが、悲しいことに「プレマには、京都産業大学の学生がいるから店を閉めるのだ」といような言われなき噂が立ち上がり、驚いております。当該学生につきましては、報道されているクラスターに関する人的つながりがないことを確認(ゼミ、学年、クラブ等すべて)したうえで勤務の継続を許可し、今後も「京都産業大学の学生だから」という、全く科学的でも合理的でもない判断基準で、勤務停止をさせることは一切考えておりません。
このような、「見えない仮想敵」に対して、どの辺が感染源であるとか、どこの大学であるとか、事実確認を経ない感情の反応でしかないような事象で惑わされることは弊社において一切なく、またこのような根も葉もない差別的な噂や中傷に断固として反対するものです。
同様の現象は、東日本大震災後にもありました。「福島県産だから」「東北産だから」「東日本産だから」というだけで放射性物質及びその放射線量の測定も経ず、印象だけで反応する状況を危惧し、弊社ではいち早くベラルーシ製のベクレルモニタを多数確保、福島や東京のしかるべき組織に無償提供したこともありました。9年経過したいまも、弊社の名前を冠するすべての食品は、それがどこ産であろうとも一律に検査し、その安全を担保し、差別的な対応をしないことを旨としております。この取り組みを開始した直後、当時は九州の生産者グループの方から「福島と一緒にするな!」と電話で怒鳴られたこともあり、その後関係はなくなりましたが、今おつきあいのある九州の別の生産者様からは、今も検体をいただき、きちんと検査しており、その趣旨をご理解いただいています。同じく、当時は福島県のナンバーが京都市内で走っているだけで差別的言動に遭遇された方がいたことも、私の生涯を通じて忘れることはなく、私の命ある限りこのような不合理な差別を許容しないつもりです。
学ぶこと、教えることは、より公正、より反応的ではない、より人間的な心を育むことである、それが唯一の目的である信じて疑いません。貴校に関与する皆さまが、このような実に不条理な立場に置かれていることについて、弊社及び私は深い同情の念をお送りするとともに、貴校がさらに発展され、強くて優しい学生を輩出されることであろうことを確信いたしております。
弊社を巡る環境も極めて厳しく、今すぐにアルバイトさんを受け入れる余力がありませんが、なんとしてもこの苦境をともに乗り切り、来たるべき将来には、貴校の学生様を積極採用したく、その希望を申し述べさせていただき、私の心からの応援とさせていただきます。
貴校のますますのご発展を心よりお祈りいたします。
草々
以上、郵送にて投函いたしました。
私の偽りのない気持ちです。
アジア人だから、中国人だから、日本人だから・・・・
いつでも、そのようないい方で、私たちは個別性を損なった、感情的判断に惑わされ、「フェイク」はそこで水を得て育ちます。
確かに政府の水際対策が曖昧であったことは間違いなく、それが不安と感染の拡大に繋がっていることも理解しています。
しかし、私たちはいつでも被害者になることも、またいつでも「加害者にも」なり得るのです。
「誰がその根源なのか」を、印象で決めつけて魔女狩りをしたところで、何も問題は解決しません。
むしろ、不安と恐怖によって、私たちは打ちのめされてしまいます。
事実と感情を切り分ける努力こそが、私たちにとって今こそ、とても大切であると考えています。