料理酒もみりんも、醸造というだけあって蔵によって特徴が違います。
みりんは得てして脇役なもので、蔵による味の違いがあまり強調されていないように思います。日本酒はもちろん、醬油やみそも味比べするのに、みりんはないんだ?と不思議でしたが、プレマシャンティで味醂ができると決まったので・・・開発チームの横山は、2015年春頃から、かねてからの念願「利きみりん」行脚としゃれこんでいました(私は下戸です 笑)。
みりんといえば、三州三河(愛知県碧南)と千葉県流山。
愛知県碧南から岐阜にかけてはみりん蔵があつまていますし、千葉県流山から野田にかけてもいくつかの蔵があります。醸造なので、蔵ごとにも特徴がありますが、大きくわけると色目で区別が出来てしまいます。曰く、「愛知の琥珀色のみりんに対して、千葉の白いみりん」。みりんは「はちみつみたいな琥珀色」と思い込んでいただけに、千葉の無色透明なみりんには驚きす。
知られたところでは、千葉は、流山の「マンジョウ(万上)本みりん」、 佐原の「最上白味醂」、野田の「宝船」。三河は碧南に集中して、「三州三河みりん」、「愛桜」。それから岐阜の「七福寿」。ざっとこのあたりでしょうか。
プレマが一番お世話になっているのが「三州三河みりん」で、実はこれ、北米では別の名前で動いています。(大昔からお世話になっていたのに、ほんの数年前に知りました。)
みりん醸造の方々と話をすると、「みりんには酸味は不要」とおっしゃいます。正しく表現するなら「あってはならない味」という表現に近いようです。業界には往々にして力の強弱があるので、1票が1票にならない変な理屈もあるのですが、「酸味」に対する考え方は大小関係ないみたい。ですので「三州三河みりん」は、ある意味規格外。飲み比べると明確に、甘さの最後にちょっとした酸味を感じます。この「酸味」、面白いくらい他のみりんにはありません。みりんはもちごめと焼酎と糀を醸造させる「酒類」ですから、この酸味はどこからくるのか?という疑問がでます。産地や配合、糀が違えど、「酸味」を生じる要素はありませんから、どうやら蔵によるらしいと予測ができます。まあ、砂糖のかわりと位置付けてしまうと必要なのは甘みですが、砂糖にも「酸味」はありますから、不要とされる理由はいまいちわかりません。脇役に個性は不要、というところなんでしょうか?(でも、脇役に個性がない芝居は面白くない、と私は思うのです。)
ちなみに・・・もし「三河のみりん=酸味がある」と思っておられるなら、是非 愛桜や もお試しください。今までの概念が崩れ落ちますし、みりんが面白くなること間違いなしです。
琥珀色のみりんは、色目にもみえるとおり味にねばりがあります。ねばりは、あとにずうっと残るというニュアンスですが、後ひく味というのともちょっと違い、舌に絡みついて残る感じです。白いみりんは、これと比較するとさらっとしています。どっちがいいのか?と聞かれても、あくまでも好みと用途。魚介の臭みを消すなら断然「琥珀のみりん」で、野菜の煮物なら「白みりん」という感じでしょうか?「琥珀色」はカラメル色素ではなく、メイラード反応と呼ばれる糖化反応のひとつ。熟成させるとついてくる色合いだそうです。ということは、(三河に限っていうなら、)長期間熟成させなければ白いということ?醤油や日本酒のように多くの蔵があるわけでもなく、母体が限られているため、敢えて熟成前に出そうとするところはまずありません。尾張・三河で味比べなんかできないよな~と思っていたら、出会いました。熟成前の白いみりん。
ひとくち頂くと、初対面は印象が薄いのに、あとからじわじわ。
ちょっとこの子、誰?最初からいた?という感じ。
火を入れると味が変わるし、「あ、いいなあ」と一目ぼれでした。
この出会いが、2015年末。
次の仕込みがあがっていたらとお約束して、首をなが~~~くして待っていたら、なんと●税さんが「きらーん!」と目を光らせたせいで、お蔵入り。
いつまでたっても出てこない 汗
製造方法に、国○さんが気になるような「個性」が加わっていたらしく、曰く「これは製造方法がみりんではなく。。。」で、ひと悶着。
無関係な外野の私が、「どうみてもみりんでしょう!」とツッコミを入れたところで、状況は変わるわけではなく、泣く泣く待ちぼうけをする羽目に。待っている私は待っているだけで済むものの、醸造元は恐らく大変なご苦労です。
そして、待ちぼうけること、数か月。
蔵から出てきたから良し、としましょう。
何がどうだったのか、詳しいことは知らぬが華、らしく・・・知らないままです。
長々と待った甲斐あり、控えめなのに忘れがたい、一度見るとまた見たくなる桜のような、一度口にするとまた欲しくなるみりんが出てきました。
三河ではないものの、蔵はもちろん愛知県。
似かよった水の質でつくる「琥珀色でない」愛知のみりんです。
千葉の白みりんとは違って、琥珀みりんのような舌に絡む味。けれど「さらりと飲める」キレのあるみりん、とでも表現しましょうか。白身魚や魚介との相性は良くて、しょうがとあわせて煮付けると当然、期待どおりに仕上がります。意外と相性が良いのが、鶏もものような脂ののった動物性のお肉。カモ肉も最高。あとは意外と、玄米をつかった炊き込みごはん。すこしいれると、照りと艶だけを増して、みりん臭さと味が消えます。食欲と視覚情報は強く繋がっていますから、味付けではなく、見た目から食欲を刺激するのにも活用ください。
ちなみに、料理酒も同じ蔵で仕込んでいます。飲んでも悪くないお酒ではあるものの、おおっぴらに「晩酌にどうぞ」といえないのが残念です。みりんと料理酒、蔵がおなじだからなのか、この子たちもお互いに相性が良く、微妙なさじ加減も必要なくて、あれこれ考える面倒がなくて個人的には気に入っています。