プレマシャンティ開発チーム 横山です。
食品一括表示の原材料欄に書かれている「食塩」が食用の塩の一般呼称であり、それ以上でもそれ以下でもないと書きました。また一般社団法人日本塩工業会や公益財団法人塩事業センターが、品質規格としてもうける「食塩」にも触れました。
「じゃあ、結局『食塩』とは何?」に踏み込む前に、「塩」について少し触れます。
塩には、様々な分類の仕方があります。
1)「岩塩」、「天日塩」、「せんごう(煎熬)塩」と3種にわける分け方。
2)「特級塩」、「食塩」、「並塩」、「白塩」と4種に分ける分け方。
3)「精製塩」、「天然塩(自然塩、自然海塩)」と2種に分ける分け方。
1) は、ざっくりと表現するなら、”作り方”による分類です。
「岩塩」は日本では採掘されないので、ほぼ輸入されています。「天日塩」も緯度と天候の加減で、日本で大規模流通にのるほどの生産が難しいため、メキシコやオーストラリアなど大規模な塩田を持つ国からの輸入に頼っています。日本で「国産塩」として流通している塩は、ほぼ「せんごう塩」に分類されます。「せんごう塩」とは、釜で炊いてつくった塩すべてを含みます。
2) は、塩化ナトリウム濃度(含有率)による分類です。
一般社団法人日本塩工業会のウェブサイトによると、日本で海水からつくられる塩は、以下のように大別されています。
特級塩 |
塩化ナトリウム含有率が99.5%以上 (うち塩化ナトリウム99.7%以上が、特選特級塩) |
食塩 |
塩化ナトリウム含有率が99.0%以上でかつ粒子が平均0.4mm |
並塩 |
塩化ナトリウム含有率が95%以上 かつ 水分を1.4%以上 かつ にがり分を0.7%程度含む湿った塩 |
白塩 |
塩化ナトリウム含有率が95%以上 かつ 平均粒径が大きいもの ※通常粒径別に4分類される |
食塩は、「製造直後は99.5%程度の純度」がありますが、「にがり分が0.3%位含まれ」ているので、にがり分が吸湿してナトリウムの割合がさがるようです。一般的に、最も汎用性が高いとされているのが並塩です。価格が手ごろであることも手伝って、食品製造の現場では頻繁に目にします。
(参考:【日本の塩/塩の種類】一般社団法人 日本塩工業会※外部リンク)
3) は塩に関心を持ってこられた方が、一番馴染のある分け方かもしれません。
「精製塩」とは、公益財団法人塩事業センターが販売している塩化ナトリウム含有が99.5%以上の食用塩の『商品名』です。
この塩化ナトリウム純度の非常に高い「精製塩」に相対するものとして、「天然塩(自然塩、自然海塩)」と呼び名が生まれました。背景には、戦後日本の「食用の塩」をめぐる国(政府)と人々との交渉と議論の歴史があります。(客観的に歴史を追うと、当然のことながら、それぞれに、それぞれの立場と云い分を読み取りますが、ここではこれ以上踏み込みません。)
非常に頻繁に耳にするにもかかわらず、「天然塩(自然塩、自然海塩)」という呼称自体は、実は明確に定義されていないようで、一般的にはミネラル分を多く含んだ塩や日本伝来の製法で作られた塩といった理解をされているきらいがあります。ただ2021年の現在、食用塩公正競争規約によるなら、食用塩業界は「自然塩」という呼称を認めていません。
また自然塩だけでなく、「自然」や「天然」が、塩とその製法(あるいは性質)を修飾してはいけないと決めていますので、天然塩や自然製塩などの表現も認めていません。
「食用の塩」という意味での食塩には、1)2)3)のすべてが当てはまります。これが、広義の「食塩」で、同時に加工食品の一括表示の原材料に記載されている食塩でもあります。
対してここでの狭義の「食塩」は、一般社団法人日本塩工業会が定義している2)のナトリウム含有率が99.0%以上で かつ 粒子が平均0.4mmの「海水からつくる塩」です。