和洋中、料理の世界は往々にして「だし」を取ることから始まります。
中華料理は、鶏ガラやホタテ、小エビ。
西洋料理は、魚や肉、野菜、香草。
日本料理は、かつおや昆布、しいたけ。
使う素材は様々、呼ばれ方も様々ですが、素材の旨味が凝縮した「だし」という液体は、
往々にして色目の濁りは、味の雑さにつながると考えられています。
特に油を含んだかつおや鶏ガラなどの動物性の素材や、
ぬめりをもつ昆布などの素材は、火加減を調整しつつ、
どれだけこまめにアクを取り除くかによって確かに味が変わります。
精進白だしも、ぬめりの出る昆布を旨味の軸に据え、だしをとります。
ただしお吸い物などに使うだしとは少し違い、
だしの「旨味を凝縮」してから調味をします。
つまり簡単にいうと、時間をかけてだしを煮詰めます。
煮詰める工程は、火加減とアクとの勝負。
だしが出来上がった後にあくを取り除くのでは雑味が濃くなるので、
煮だしている間は、ひたすらこまめにあくを取らなければなりません。
その時間はなんと、1時間余り!
だし素材の投入から浸水、だし取りまで一人の担当者がつきっきりになり、
鍋の様子を見ながら火加減を調整し、あくを取り除いて仕上げていきます。
もしあくが鍋肌についてしまうと、そのまま固化し張り付いてしまうので、
これも雑味の原因になります。
500Lの鍋全体を見渡し、浮かび上がるあくと気泡をみわけながら、
あくだけを丁寧に取り除く仕事は、決して機械仕掛けでは敵わない、
人間の丁寧さと繊細さが要求されます。
一時間後に出来上がる緑を帯びた琥珀に近い色目のだしは、
とろりとした柔らかな色合いですが、濁りは少しもありません。
昔ながらの技を今に伝える調味料には本物のだしが、
職人のだしには本物の調味料が似合います。
小麦だけで仕上げた発酵調味料「足助仕込三河しろたまり」と
もち米と焼酎だけで仕込んだ「三州三河みりん」、伝統の塩「海の精」。
そしてほのかな甘みを持つ、自家製だし。
それぞれの作り手の想いが融合し、新しい美味しさが生まれました。