【Vol.57】つきの妖精たち

　月シリーズCDに「つきの妖精たち」というCDがあります。このCDは、五感（聴覚、視覚など）、そして第六感（ヒラメキ）の活性化というコンセプトで作られていて、イラストレーターや音楽家など五感や第六感をフル活用している方が「イメージが湧きやすくなる」と愛用して下さっています。また、夜明け、朝、昼、昼下がり、夕方、夜という一日の流れをイメージした変化に富んだメロディーラインも好評で、一日の始まりにご家庭でご活用頂いている方も多数いらっしゃいます。

　五感や第六感はどれも大切ですが、「聴く」という文字を見ると決まって思い出す、ある出来ごとがあります。

立ち直れないと思ったこと
　昔、とてもショックなことがありました。どんなにダイエットをしても減らなかった私の体重が一週間で6キロ減りました。それでも、会社を休むわけにもいかず、家族に心配をかけたくなかった私は、必死で平静を装っていました。とにかく、いつも通りの自分でいることに必死で、その時の記憶がほとんどありません。いつまでも立ち直れない自分が嫌で、色々なことを試しました。気分転換にウォーキングをしたり、お笑いのDVDを見たり（笑）。本屋さんに行っては、今の自分を勇気づけるような本を何冊も買い、気に入った本は100回以上読み返しました。
　いろいろなことを試しましたが、その中でも一番効果があったのは、人に聞いてもらうということでした。
　本当は人に相談するのが怖かった。自分の弱い部分を見せるのは正直恥ずかしい気持ちがあった。それでも勇気を出して相談してみると・・・みんな、本当に一生懸命相談に乗ってくれました。友人によって表現の仕方も言葉も百人百様でしたが、１つだけ共通点がありました。それは、本気で私の話を聞いてくれたということ。
　私達は毎日多くの人と話をします。その中で、「この人は適当に話を聞いているな」とか「この人は真剣に話を聞いてくれている」というのは何となくわかるものではないでしょうか。
　私もそういうことには敏感な方で、私の相談に乗ってくれた友人は皆「本気で話を聞いている」ということが良く伝わってくる聞き方をしてくれました。それは、どんな言葉よりその時の私にとって嬉しいことでした。この時期をきっかけに、私は少しずつ復活することができたのです。

「聞く」と「聴く」の違いは？
　以前、「聞く」と「聴く」の違いについて教わったことがあります。「聞く」には「門」がついている。都合の悪い時には、その「門」を閉じてしまうことができる。一方、「聴く」には「門」はなく、その代わりに「心」がついている。心を込めて聴くことができるのだと。
　私の友人は皆、私の話を「聴いて」くれました。「しっかりしなよ」「もっと前向きに考えないと」と言いたいこともきっとたくさんあったでしょう。でも、まずは私の話をしっかり「聴いて」受け止めてくれたのです。
　人は様々な考え方を持っています。自分と違う考え方の人と出会った時、私たちはその人の話を自分の価値観という「門」を通して聞いてしまいがちです。そうすると、その人の本当に伝えたいことに気づけない時があります。
　「そんな考え方では駄目だ」と叱咤激励したい時もあるでしょう。もちろん、その叱咤激励がその人の為になることもあります。でも、そう言う前に、まずはその人の話を「聴いて」みてほしい。その人が今何を求めているのか、何を伝えたいのか、感じてほしい。それこそ、五感と第六感のフル活用です。
　それでも言うべきだと思ったら言えばいい。ただ、そんな時は相手が弱っている時が多いので、言い方には注意したいですね（笑）。
　皆さんは忙しい。時間との戦いの中で、人の話を本気で「聴く」のは相当な体力気力が必要かもしれません。そんな中でも、ここぞという時は人の話は本気で「聴いて」ほしい。その時間は相手にとっても、皆さんにとっても、きっとかけがえのないものとなるはずだから。

片岡由季

片岡由季氏武蔵野短期大学にて国際教養学科および秘書コースに在籍。その後、玉川大学英米文学科に編入。前職はNPO法人日本ケアフィットサービス協会にて「サービス介助士」の育成に携わり、全国の企業研修を担当。 2010年4月より父である片岡慎介氏の後を継ぎ有限会社ビュージックの代表取締役となる。現在は、断食道場やサロンなどで「月のお話会」を行い、「なりたい自分」「輝く自分」になる為の月のテンポ活用法をお伝えしている。