酒に酔った勢いで暴れてしまい、やがて酔いからさめてきたときに、唖然としました。それは、初めて人を殴ってしまったことにではありません。その自分の酔っぱらったみじめな姿は、小さいころからずっと忌み嫌っていた父の姿そのものだったからです。その時に、ハッと気がつきました。自分の父は、想像の中の「モンスター」ではなかったのだと。ただの「アル中の酔っぱらいおやじ」で、酒を飲まないと人に何も言えない心の弱い、気の小さい男だったということに。それはそのまま自分の姿に重なりました。それが父に対するこれまでの認識が変わった瞬間でした。
子供の時はまだ知識も少なく、世界も狭く、さまざまな可能性を考えることも、想像することもできません。しかし、人は成長することで、多くの知識と様々な視点を獲得することができるようになります。父を一人の人間として、その欠点や長所、強いところと弱いとこなどを自分の物語の中に、新たに書き加えることができるようになります。物語の筋が少し変わるだけで、そこから出てくる感情は変わってきます。
しかし、人が持つ物語にはすでに感情がくっ付いています。物事をありのままに、感情抜きに中立的に見ようとしても、特に自分に関係のある事柄については、実際は困難なことが多いのです。つまり、多くの人は感情があるかぎり、「ありのままに見る」ということができないことが多いということです。 そこに、なぜ「バッチフラワー」を使うのか、一つの答えがあります。今から70年以上前、花には感情をマイナスからプラスに変える力があることをバッチ博士は発見しました。感情がニュートラルな状態に戻されると、人は自己の物語に対して、それを書き換えるチャンスが生まれます。物語の筋を少し変えるだけで、そこから出てくるマイナス感情は変わってくるのです。多くの場合、この変化のプロセスは無意識に自動的に起こっていて、気がつくと感情は変わっています。自分の中の何かがが変わったということは、実は自己の物語に少しの修正が加えられ、どこか成長したことになります。人は成長することでしかマイナス感情を克服して変わることができないのです。
それでも中にはどうしても変わりたくない、ずっと恨んでいたい、物語を変えたくない、という人もいます。その場合は、また元の状態に戻ってしまいます。かたくなに過去の思い出に固執してしまうと、記憶はコンクリートのように強化され、それを書き換えることがとうてい不可能に見えます。しかも、人は少しずつしか変わることができません。
人が今の感情を持つに至ったのは、ある意味で、現在の環境に適応していると見ることができます。マイナス感情を持つことで、これまで何とか苦しい現実と折り合いをつけてこられたのかもしれません。マイナス感情が適応の一つの形態ならば、急激に感情を変えることは、新たな適応の形を見つける必要があるので、それで、人はゆっくりしか変われないのです。何度も繰り返し元に戻ろうとしながら、人は少しずつしか成長していくことができないのです。その時に必ずバッチフラワーが心の成長のために役に立つはずです。
ポジティブシンキングというと、多くの人は、考え方が積極的で、何事にもプラス思考の人をイメージすることでしょう。しかし、元々生まれつきプラス思考の人はほとんどいません。プラス思考の人ほど話を聞いてみると、元々はそうではなくネガティブ思考で、ある時からプラス思考になっていく人が多いことに驚かされます。つまり、プラス思考の人ほど実際は「苦労人」が多いのです。様々な困難を経て、自分の意志でプラス思考を選びとった、という人達です。
人が成長するためには、マイナス思考を乗り越えて、プラス思考を選びとる「意志」がどこかの時点で必要になってきます。
そのためにもまず、自分が無自覚に持つマイナス感情に気付いているかどうかが最初に問われるのです。
矢吹 三千男
矢吹 三千男氏 生来の虚弱体質で16歳の時に十二指腸潰瘍を患い、ヨガと占いにはまる。二十歳の時には身長が175センチで体重は50キロ。いつも複数の薬を持ち歩く。様々な健康法を実践するもほとんど効果なく、ようやく食養生で体質改善に成功したのは30代も半ばを過ぎていた。その時、生まれて初めて「健康」を実感する。製薬会社勤務などを経て、その後バッチフラワーに出会い、現在(株)プルナマインターナショナル代表。 著書『感情のレッスン』文芸社刊 |
こころと感情を癒す花のメッセージ「バッチフラワーレメディー」 イギリスで70年以上の伝統がある花の療法です。依存性や習慣性もなく、世界60数カ国で多くの人々に愛され続けています。 バッチフラワーレメディーの詳細はこちら>> |