前号では、特異な機能性をもつ葉っぱの「色」に着目して、日焼け防止の赤(ドラセナ)、目引きの紫(ブーゲンビレア)、排塩の黄(マングローブ/ヤエヤマヒルギ)の熱帯植物を紹介しました。今号では、葉っぱの「形」に着目して、環境適応して特異な機能をもつ熱帯植物をご紹介します。
針葉樹というと寒帯に適応したイメージが強いかと思いますが、宮古島にも、琉球松(実は沖縄県の県木)やナンヨウスギやモクマオウといった熱帯系針葉樹が存在します。これらは葉が細いことで水分の蒸発を抑え、また風による損傷を最小限に抑えることで、乾燥や風害への環境適応を果たしています。海岸付近に広がるオオハマボウは、熱帯針葉樹とは違った形態で乾燥への耐性を備えています。葉の裏面に白く短い毛を密生させていて、これによって水分の蒸発を抑えています。熱帯植物は高温で干ばつにも耐える力も備え持つ必要があって、「南国の強い日差しを葉面いっぱいに受けてのびのびと成長」と常に簡単にはいかないのですね。
アダンやパイナップルは分厚い葉っぱが放射線状に広がる構造をしていて、葉っぱの両端には鋭いトゲがずらりと並んでいます。またアダンに至っては葉の途中でトゲの向きを上下逆転させていて、どちら向きにも刺さるような構造になっています。これは、葉っぱや実が動物にかじられないように食害に対する防御手段であると考えられていて、実際、トゲを除去すると食害が増加したという調査結果もあるようです。
観葉植物として人気のモンステラですが、葉の真ん中に大きく開いた穴が最大の特徴でしょう。この穴は、太陽光を下の葉まで通す「光の通路」と、スコールの水圧や強風を逃がす「水・風の通路」の機能を持っていて、熱帯雨林の環境への適応と考えられています。
さまざまな個性をもつ植物が、共生関係・競争関係のバランスを維持して生息しています。葉の形一つにも、環境との対話が秘められ、自然の奥深さが宿っているのですね。
左から琉球松、アダン、モンステラの葉っぱ