バナナやサトウキビは、最も太陽の光がよく当たる先端部の7~10枚の葉っぱが活動葉として光合成を担い、下の方の葉っぱは老化葉として順次枯れていきます。一方で、宮古島に蔓延する強靭な雑草のコシノシロバナセンダングサは、老化葉を作らず常に緑の葉を広げて繁殖を続けます。植物の成長戦略としては、緑の葉を残したまま成長を続けるほうが、有利なように思えますが、実はそうとも限らない理由はどこにあるのでしょうか。
背丈が数mを超えるバナナやサトウキビのような大型植物では、1枚の葉っぱのサイズも1mを超えてくるため、下の方の葉っぱには光が届きにくくなります。光合成できない葉っぱに、根っこから数m上の遠くまで水や養分を送り込んでも、効率が悪くなってしまいます。それよりもむしろ老化葉として枯らし、葉緑素を分解・回収した窒素やリンの養分を若葉に使い回す(転流)ほうが全体効率を高めるのです。つまり、活躍できなくなった老化葉が活動葉に遺産(養分)を相続して再利用させることでエネルギーを集中させ、植物というチーム全体がより強く育つための仕組みとして理解できます。
一方、コシノシロバナセンダングサは、老化葉を作ることなく、常に光合成を続けるタイプの植物です。おおよそ1m以下の背丈で葉を広げ、枝分かれしながら成長するため、葉っぱ全体に十分に光が届きやすい構造になっています。また、背が低いために根からの養分の吸収が早く、老化葉からの転流に頼る必要がありません。すなわち、光や水・養分が安定して得られる環境では葉っぱを「捨てないで生きる」ほうが理にかなっているのです。
生命体としての全体最適を考えた結果、高く伸びる草は光を求めて葉を入れ替え、地面に広がる草は長く葉を保つ戦略を選択したという風に考えられます。因みにバナナの場合は、老化葉が残す遺産は養分だけではありません。葉面は枯れても、葉鞘(葉っぱの鞘の部分)は10キロ級の果実を支える強さを保ったまま、株元に幾重にも重なっています。

サトウキビ(写真上部)とコシノシロバナセンダングサ(写真下部)
