液体ミルクが注目のまと
中学生と地域の赤ちゃんが触れ合う授業に立ち会いました。「赤ちゃんがかわいい!」と好評でした。
学校を訪れるような、公的な機会だからでしょうか。私が接したグループの赤ちゃんたちは、皆、液体ミルクを利用していました。缶にアタッチメントをつけてそのまま常温で飲む子もいれば、温めないと飲まないからと、携帯式のミルクウォーマーでサッと温めたものを哺乳瓶から飲む子もいました。
フィンランドで1970年代に発売されて以来、海外では普及していた液体ミルク。日本では、2018年に規格が整備され、法的に製造・販売できるようになりました。自然災害後の避難所でとても助かった、という話も実際にあります。集まったママのなかには、備蓄・災害対応のために、液体ミルクが導入された話をする人もいました。
液体ミルクの便利さ、ギアとしての珍しさは、中学生たちの目を奪っていました。女子のなかには、人前で授乳なんてできないよねーと言っている子もいました。その言葉を聞いて、2017年3月に、日本看護協会、日本助産師会はじめ11団体が内閣府特命担当大臣宛に提出した「乳児用液体ミルク導入にあたり、災害時の安全で適正な使用を担保するルールづくりと母乳育児の保護・支援の推進に対する要望書」を思い出しました。要望書の一部を引用します。
「平常時であれ災害時であれ、最も安全で簡便な乳児栄養は母乳です。物質が入手しづらくなる災害時に乳児を母乳で育てることは最大の自助でもあります。一方、営利企業が母親に母乳代用品の販売促進活動をすることで不安が増幅され、必要のない母乳代用品の使用が促進されることがあります。(中略)法規制なしに平常時への乳児用液体ミルクの普及を推進することは、母乳で育つ乳児を減少させ、ひいては国民の健康にマイナスの影響を及ぼし、医療費の増大にもつながります。他方、平時に母乳で育てられる乳児が増えれば、医療費も削減できます。特に災害時には粉ミルクや液体ミルクを必要とする乳児に手厚い支援ができます」
長い目で見てプラスになるのは?
人前での授乳が憚られる場はあります。思春期の中学生の前で胸をはだけるのは私も遠慮したと思います。以前は、場を辞すか、授乳ケープを使うのが主な対処法でしたが、選択肢が増えています。中学校が当たり前のように授乳スペースを用意したり、授乳ケープを使って授乳するのを見せたりするほうが、長い目で見た教育としてはプラスになるように私は思いました。引用部にあるように、母乳に勝る栄養はないと思うからです。
一方、多胎児ママへの調査では、液体ミルクを利用したママの約9割が「負担が軽くなった」、7割が「ストレスが減った」と回答しています。パパやおじいちゃん、おばあちゃんも気軽にあげられるから、ママが一人で抱え込むことが減る。そう聞くとすごくありがたい存在です。価格は粉ミルクの3~4倍。開封したら飲み残しは捨てないといけないし、未開封でも保存期間は粉ミルクより短い。便利でも、毎日使うには少々厳しい、だから非常時やお出かけ用になるんでしょう。
完璧な育児用品なんて、たぶんありません。母乳は理想的だけど、体調が悪いときもあれば、預けやすいと助かるときもある。母乳が一番楽ですが、赤ちゃんが元気に育って、保護者が笑顔でいられる方法であれば、それが「正解」です。
