前号では、亜熱帯の草本性植物(茎が木にならない草)について、葉っぱを途中で枯らして窒素やリンの養分を若葉に使い回すバナナ・サトウキビと、緑の葉のまま働かせ続けるコシノシロバナセンダングサの対照を紹介しました。本号では、同テーマについて、亜熱帯常緑樹の代表格ガジュマルを例に、木本性植物(茎が固く木になる植物)との対比で考えてみます。多年性といえども数年内で枯れてしまうバナナやサトウキビと比べて、樹齢100年を超えるガジュマルでは、葉っぱのつくりや寿命が大きく異なります。薄くしなやかなバナナやサトウキビの葉っぱは数ヶ月の寿命であるのに対して、ガジュマルの葉っぱは厚くしっかりとしたつくりで、寿命は年単位です。
ではそもそも常緑樹の葉っぱの寿命とはなんでしょうか? 日照によって損傷を受け、葉っぱの光合成能力は加齢とともに低下します。そして、光合成で産出するエネルギーと葉っぱの機能維持に必要な呼吸活動に要するエネルギーとの収支が合わなくなったときが葉っぱの寿命になります。これには葉っぱ自身が持つ加齢の要素の他に、冬季の低温・日照不足や、乾季の乾燥など、光合成しにくい環境要因も加わります。
ガジュマルは年中鮮やかな常緑ですが、実際には寿命を迎えた葉っぱを順次落葉させ、新しい葉っぱと入れ替えることで常緑を保っており、株元には黄色い枯葉が落ちています。ガジュマルの葉っぱは配管(維管束)も太く、防御膜(クチクラ)も厚く重い葉なので、年単位で働きます。一方、バナナやサトウキビの葉っぱは軽量・薄型なので、「次々に新しい葉っぱを生産して、古い葉っぱは数ヶ月スパンで落とす」短期的な入れ替えのほうが合理的であると理解できます。すなわち、葉っぱ一枚の製造から維持、回収までライフサイクル全体でのコスパ(エネルギー収支)を勘案し、葉っぱの産出・入れ替えの数量やタイミングを緻密に計画・修正・実行しているのです。
植物間の過酷な生存競争もありますが、本質的には自然を司る秩序には、無駄がなく、美しさがあります。

ガジュマル
