「プレマルシェ・オルタナティブ・ダイナー」は、前号でご説明した通り、一時閉店となっています。しかし、今回の閉店はあくまでも外的な要因によって急に生じたものであり、私の志を完全に断念したわけではありませんので、引き続き開発の経緯をお伝えしてまいります。
健康的なジェラートのレシピの開発、そしてその運営からスタートした飲食店が「プレマルシェ・オルタナティブ・ダイナー」であったことは、この連載でこれまで明らかにしてきた通りです。ダイナーの開店当初は、京都の青山と称される北山駅付近の居抜き店舗でその歩みをスタートしたため、各種の食事に加え、ジェラートも同じ店舗内で出すスタイルで始まりました。京都府立植物園、そして賀茂川が近く美しい場所だったこのエリアでは、近くにお住まいの皆さまから観光のついでに立ち寄られるお客様までご来店いただいていました。しかし、なにぶん閑静な住宅地でしたので、平日の営業はとても厳しい状況でした。さらに、食事を提供することを前提にした余裕のあるテーブルと椅子が並ぶ店内で、当時は500円だったジェラートだけを数時間かけてお召し上がりになるお客様が多くなりすぎ、食事を召し上がるお客様の席がなく、売上が伸びないという状態に陥ってしまいました。そのため、移転、そしてジェラートは同じ店舗内では提供しないことを決断する必要に迫られました。その一方で、私の食事やデザートメニューのレシピの着想はジェラートから膨らませていたため、素材の骨格が同じというものがかなりあります。
発酵を活かすお菓子
飲食店をスタートして忙しくしているなかで、『豆汁グルト』という、大豆をまるごと発酵させてクリーム状に仕上げた製品を作っている会社の社長が亡くなったという知らせが届きました。その会社はリブレライフという社名で、「米ぬかを美味しい食糧資源として普及する」「日本の穀物食、豆食、発酵食の魅力を示す」を創業の志として、平成12年3月に設立されました。創業者である町田建治前社長と私・中川信男は、お互いに創業時期に出会っており、その縁もあって最終的に私がこの会社を引き継ぐことになり、現在はプレマラボ株式会社として継続的に製品の製造をおこなっています。
この豆汁グルトは、NS乳酸菌という非常に高い機能性を発揮する乳酸菌で発酵されています。大豆の不溶性・水溶性食物繊維がすべて含まれているため、豆乳を発酵させたヨーグルトとは違い、繊維の栄養も摂れる一方で、テクスチャーがかなり重いのです。これをベースにして、チーズケーキの味わいを持つ、乳製品を使わない発酵したヴィーガンジェラートを作り出し、「チーズを使わないチーズケーキ」という謎の名前を持つジェラートを作りました。さらに、このジェラートベースに米粉などを加えて焼成し、作り出しているのが「チーズを使わないチーズケーキというケーキ」になります。
私には製菓のキャリアも経験もありませんでしたが、ジェラートの骨格をしっかり作っていれば、焼き菓子のレシピにも流用できることに、このとき気づきました。また、植物性素材だけのチーズ風の食べ物は、残念なことに添加物山盛りのものが大半で、さらに正しく発酵させたものはほとんど存在していません。そんなこともあって、ほんとうに発酵していて、多様な食機能があり、食べる人を元気にし、なおかつおいしいというのがプレマルシェの目指す姿そのものであり、ジェラート、ケーキ、そして豆汁グルトそのものまで、弊社内で一貫して作り出しているプラントベースの革命的な食べ物と呼べると自負しています。
