前号まで、3回にわたって、旧優生保護法被害に対する補償制度についてご紹介しました。
そのなかでも重要なのは、前号で紹介した「旧優生保護法に基づく優生手術等を受けた者に対する補償金等の支給に関する法律(以下、「補償法」といいます)」です。
補償法の内容
補償法の内容については前号でご紹介したとおりですが、ここで簡単におさらいをしておきます。
まず、法律の前文において、旧優生保護法の規定が憲法に違反することが明記されるとともに、旧優生保護法の被害を受けた方に対して国に賠償責任があることや、国が誤った施策を進めたことにつき心から深く謝罪することが、明記されました。
次に、具体的な内容の面ですが、まず、優生手術を受けた方は、1500万円の補償金の請求と、320万円の一時金の請求をすることができるようになりました。
また、優生手術を受けた方の配偶者の方も、500万円の補償金の請求をすることが認められました。
さらに、手術を受けた当事者の方や配偶者の方が亡くなった場合、その遺族の方が補償金を請求できることになりました。請求できる遺族の範囲や順位についても、補償法に規定されています。
そして、優生思想に基づく人工妊娠中絶の被害者の方も、200万円の一時金を請求できることになりました。
請求方法
補償金や一時金の請求方法についてご紹介します。
前提として、補償金や一時金の支給を受ける権利を有する人であっても、なにも請求しなければ、補償金や一時金の支給を受けることはできません。つまり、権利者が、自ら国(内閣総理大臣)に対して請求をする必要があるのです。ただし、請求は、都道府県知事を経由しておこなうことができるとされているため、権利者の居住地の都道府県に請求書を提出するのが通例です。
請求にあたり、手術を受けたことを裏付けるような公的記録や医療記録があれば、それらを提出することにより、補償金や一時金の支給を受けられる可能性が高くなりますが、現実には、公的記録や医療記録が残っているケースはほとんどありません。
したがって、手術を受けたことを裏付けるために、医療機関で診察を受け、現時点の診断書を作成することが考えられます。
しかし、このような場合、手術を受けたことを確実に裏付けられるとは限りませんし、そもそも、手術を受けた方がすでに亡くなっており、今から診断書を作成してもらうことができない場合も少なくありません。このような場合には、関係者の陳述書を作成するなどの方法により、可能な範囲で手術を裏付けることが求められます。
サポート弁護士制度
このように、補償金や一時金の請求にあたり、手術を裏付ける資料などを準備する必要がありますが、それらの資料を権利者や関係者だけで取り揃えるのは簡単ではありません。
そこで、補償金や一時金の請求について、国は、「サポート弁護士制度」を設けました。請求しようと考えている方がこの制度の利用を都道府県に申し出ると、都道府県がサポート弁護士を選任し、その弁護士が、請求や資料の収集作成をサポートすることになります。サポート弁護士の費用は国が負担するため、利用する方が自己負担する必要はありません。
補償金や一時金の請求を検討されている方や、関係者、支援者の方におかれましては、ぜひサポート弁護士制度をご活用ください。