前号では、量子力学は物質ではなく、単体で動ける電子の話が多いことをお伝えしました。続いて放射能の話をしたいのですが、先に電磁波の話をします。なぜなら、電磁波がわからないと放射能を理解できないからです。電磁波の話は、基礎知識の共有もせずに健康関係の話題によく出てきます。

電磁波の発見は、「レントゲン検査」で使われるX線から始まります。電磁波は電気の振動で起こり、身近なところではコンセントの周辺で発生しています。なぜそんな危険に見えるものが使われているのでしょうか。電気の黎明期、アメリカで電力供給サービスが検討されたとき、エジソン率いるジェネラル・エレクトリックは直流を主張しました。一方、ニコラ・テスラは交流が電力供給では優れていると学会で発表しました。実証実験の結果、エジソンは敗れたのです。当時の権力構造ではエジソンが勝つのが当然でしたが、アメリカ政府は実績を重視したようです。

中学生のとき、水の電気分解実験をやりました。そのとき、電極がボロボロになったと思います。直流は電極を腐食させます。また直流は極めて危険です。交流の100Vはビリっときても死ぬことはないですが、直流の100Vは死んでしまいます。

電磁波の作用はさまざまなので多くの人が誤解します。下の図を見てください。

目に見えない電磁波はもっぱら「電波」と呼ばれます。目に見える電磁波は「光」と呼ばれます。さらに周波数が上がると紫外線、X線、ガンマ線などの「放射線」と呼ばれます。電波、光、一部の放射線はすべて電磁波です。強い電磁波が人体に与える影響は、主に「刺激」と「熱」です。刺激とは電波が人体に到達すると、わずかに電流が生じて神経や組織に影響を与える作用です。紫外線は高い周波数であるため皮膚を通り抜けます。結果として日焼けになります。

もうひとつの熱は電子レンジで知られています。食品に含まれる水分子を電磁波が振動させることで熱が発生します。このように、目に見える光から、体に刺激や熱を与える作用まで、すべて電磁波が引き起こすことなのです。　　

ではなぜ「電磁」波と呼ばれるのでしょうか？　それは電力と磁力が密接にかかわっているからです。家の中には多数のモーターがあり、エアコン、換気扇、冷蔵庫、洗濯機などで使われています。これらは電気を通して磁石を作り、回転力に変えたものです。電気が流れると磁力（磁界）が発生します。また逆に磁界を動かすと電力が発生します。水力発電所は水の落ちる力で羽根車のついたモーターを回し、火力発電所や原子力発電所は熱で水蒸気を発生させ、タービンのついたモーターを回します。そうやって磁界を動かすことで電気を発生させるのです。電波は、電気が発生し磁界が発生する、磁界が発生すると電気が発生する、を繰り返すことで空間に広がっていきます。だから電磁波というのです。