前号では、AIを使った世界のニュース分析サイトをご紹介しました。そして、今の私が作っているのは弊社マインド・クラフトのECサイトのシステムです。AIを相棒にすれば、一人で本格的で自分好みのショップを作れてしまう時代が到来しています。
これまでなら、何年も修行を積んだプロのエンジニアがチームを組んで、数百万円から数千万円の予算と長い時間をかけて作るのが常識でした。それが今や、AIと対話を重ねるだけで、わずか数日で形にできてしまうのです。この変化は、私たちの働き方や、これからの社会の仕組みを根底から変えていく予感がします。
これまでは資金のない個人や小さな商店が「こんなシステムがあればいいな」と考えても、高額な費用を前に諦めるしかありませんでした。しかし、 AIがプログラミングの「職人」となったことで状況は一変しました。言葉で頼むだけで、AIは瞬時に何百行もの正確なプログラムを書き下ろしてくれます。ただし、ネットでよく言われる「だからだれでも簡単に作れる」というのは少し違います。AIは目の前の課題を解決しようとしますが、「なぜそれをするのか」という目的や全体のつながりまでは理解していません。そのため、できあがった仕組みの辻褄が合わないこともよくあります。そこで必要なのが、人間の「エンジニアの視点」や「設計図を描く情熱」です。これらを人間が担うことで、かつて専門業者に支払っていた開発コストはほぼ「ゼロ」に向かって突き進んでいきます。本質的な変化は、「知識そのものの価値」の転換です。
私たちはこれまで、学校教育や資格試験を通じて、「たくさんの専門知識を記憶していること」に高い価値を置いてきました。法律、プログラミング、税金の計算など、その「知識を持っている専門家」に高い報酬を支払うのが当たり前でした。しかし、AIの登場により「ただ知っているだけ」の知識に払われる価格はだだ下がりしています。医療、法律、会計、教育やコンサルティングにいたるまで、あらゆる分野で「知っていることへの対価」が下がり、だれもが最高峰の知識の恩恵を瞬時に受けられるようになっています。
知識の壁が消えた先には、どのような世界が待っているのでしょうか。私は、これまでにない「大個人の時代」と、そこから生まれる「新しい産業」の誕生を予感しています。例えば過疎地に住むおじいちゃんや、育児に追われるお母さん、独自のこだわりを持つ職人が、大企業でしか手が出せない高度なシステムを自ら立ち上げ、世界と直接つながることができるようになります。勝負の舞台は、知識の量ではなく、「どれだけ他人の痛みに寄り添えるか」「どれだけ面白い組み合わせが可能か」という、人間にしかできない「感性」や「編集力」へと移るのです。これにより、人口数百人の村限定の「見守り&買い物回覧板システム」や、伝統工芸品を愛する世界中のファンのためだけの「超レア物オークションサイト」といった、「超ニッチ・超ローカル」な新しい経済圏が次々と誕生することでしょう。
技術を独占していた「専門家」の壁が崩れることは、一見冷たい変化に見えるかもしれません。しかしそれはもっと人間の経験や感性が重んじられ、直接社会へ表現できるようになるという、極めて人間味あふれる時代の幕開けだと思われます。私がひとりで書き上げた『ひとり通信社』やオンラインショップのコードは、それが夢物語ではないという小さな証拠です。
「もう歳だから」「専門的なことはわからないから」と身を引く必要はまったくありません。これからの時代は、生きてきた経験が長い人ほど、その豊かな人生経験をAIに語りかけることで、世界をあっと驚かせる素晴らしい仕組みを生み出せるチャンスが溢れているのです。
