先月号では、私がかつて、京都大学吉田寮(以下、「吉田寮」といいます)のイベントでダンスをしたことをご紹介しました。
また、2019年、京都大学が吉田寮生らに対して訴訟を提起し、昨年、これが和解により終結したことや、私が吉田寮生側の弁護団の一員だったことについても、少しだけ紹介しました。
和解が成立してから1年ほど経ちましたが、この訴訟については、いまも関心のある方が少なくないようです。また、和解は成立したものの、吉田寮と京都大学との紛争が完全に解決したわけではありません。
そこで、今回からは、京都大学が吉田寮生たちに対して提起した訴訟について、ご紹介したいと思います。まず今月は、主に訴訟に至るまでの経緯について、ご紹介します。
吉田寮
先月紹介した内容と少し重なりますが、おさらいのため、吉田寮について、簡単に紹介したいと思います。吉田寮は、1913年に開舎された、京都大学(開舎当時は京都帝国大学)の学生寄宿舎です。吉田寮は、京都大学吉田キャンパスの南側にあり、現棟と呼ばれる建物と、新棟と呼ばれる建物、そしてそれらの間にある食堂とで構成されています。このうち、現棟は、吉田寮設立以来、建て替えられることなく維持されてきており、日本最古の学生寮とされてきました。
吉田寮では、長年にわたって寮生たちによる自治が営まれてきました。具体的には、吉田寮生たちを構成員とする吉田寮自治会が、寮の運営を担ってきました。また、1971年以降、吉田寮自治会と京都大学との間の確約により、吉田寮自治会が、吉田寮への入寮選考を実施し、入寮者を決定するという運用が確立しました。なお、吉田寮の寄宿料は、月額400円とされてきました。
基本方針策定・公表、提訴
吉田寮自治会と京都大学は、長年にわたって、吉田寮の運営や建物の補修などについて、継続的に団体交渉をしてきました。そして、京都大学は、吉田寮に関することは、すべて吉田寮自治会と話し合い、合意の上で決定することを、幾度も確約してきました。
ところが、2017年12月19日、京都大学は、「吉田寮生の安全確保についての基本方針」を策定し、これを京都大学HPに掲載して公表しました。
この基本方針は、概ね次のような内容のものでした。
①2018年1月以降、吉田寮への新規入寮を認めない。
②2018年9月末日までに、現在吉田寮に在寮するすべての学生は退寮しなければならない。
③退寮に当たり、2018年4月時点で京都大学の正規学生の学籍を有する在寮生のうち、希望する者については、京都大学が代替宿舎を用意し、現在の寄宿料で居住させる。
この基本方針においては、前提として、「築後100年以上を経過した吉田寮現棟は耐震性を著しく欠き、大地震が発生した場合には倒壊あるいは大破のおそれがあるにもかかわらず本学学生が居住しているという、極めて危険な現状にある」などとされていました。
吉田寮生のなかには、この基本方針に応じて代替宿舎へ転居した者もいましたが、これに応じず、吉田寮への居住を継続した者も少なくありませんでした。そうしたところ、2019年4月26日、京都大学は、吉田寮生のうち、現棟に居住しているとされる者の一部に対して、建物明渡訴訟を提起しました。
次回は、この訴訟の争点などについて、確認したいと思います。
