オーストラリア発のサステナブル下着ブランド「BOODY」。オーガニック栽培の竹を原料とした快適な着心地で、世界中に愛用者がいます。日本にBOODYを広めてきたジョリコエンタープライズの支店長・坂爪さんに、肩肘を張らずにサステナブルを貫くブランドのあり方について伺いました。

「BOODYがいいブランドなので人にも恵まれてきた」と話す坂爪さん(左)。職場でもフレックスタイム制などサステナブルな働き方を実現している
ジョリコエンタープライズ日本支店
支店長
坂爪 恒(さかつめ あつし)
20代で株式会社TSI ホールディングスに入社し、海外ブランドの日本導入やセレクトショップの立ち上げ、ライフスタイルの提案等に多数従事。50歳を目前にキャリアや生き方の見直しを経て、2019 年より現職。ジョリコエンタープライズ日本支店長として、オーストラリア発サステナブル・アンダーウェアブランド「BOODY」の日本展開を牽引している。私生活では、一児の父。
▶︎公式サイト https://www.boody.co.jp
「憧れの暮らし」を
追い続けた先の挑戦
——2019年にBOODYへ参画される以前は、どんなお仕事をされていたのでしょうか?
もともとファッションが好きで、20代のころからアパレル業界にいました。多数のブランドを扱う企業で、海外ブランドを日本に紹介したり、日本でセレクトショップを立ち上げたり。世界中を巡って商品を買い付けるため、一年の3分の1は海外にいる生活を長く続けてきました。服だけでなく、家具や雑貨、カフェなども含めて、「暮らし」を提案するのが好きだったんです。海外で見つけたインテリアを日本で再現したこともあります。服だけでなく、ライフスタイルをまるごと持ち込むような仕事をしていました。
——サステナブルへの意識に触れたのも海外ですか?
そうですね。2015年ごろまでは、日本では「サステナブル」という考えはまだ浸透していませんでした。でも欧米では、オーガニックやCO2排出量の削減など、環境への配慮が自然と日常に馴染んでいたのです。2016年に国連がSDGsを掲げてからは、日本でも企業が「サステナブル」という言葉を使い始めましたが、私はどこか違和感がありました。日本ではどうしても「環境のために我慢する」とか「特別な人がやること」というような、窮屈さが感じられたんですよね。
一方で、当時のアパレル業界は売上をつくることが最優先。たくさん作り、売れなければセールをし、それでも残れば廃棄する。まったくエコとは言えない世界でした。「このまま走り続けていいのかな」と思い始めていたときに、母が大病を患ってしまって。それが、自分の人生を深く見つめ直すきっかけになりました。50歳を境に、「これからは家族との時間や、社会をよりよくする仕事をしよう」と決意して、転職することにしたんです。
——そのなかで、BOODYとはどのように出合ったのでしょうか?
オーストラリアのBOODYの創業者と親しい方から、「日本でブランドを展開するから、一緒にやらないか」と声をかけていただきました。実は、以前から海外の空港などで見かけて、BOODYというブランド自体は知っていました。ただ、当時のパッケージを見る限り、「日本受けは厳しいだろうな」とも感じていて。オーナーと会うまでは、正直、「下着か……」という気持ちもありましたし(笑)ファッションの世界とはかけ離れていたので、最初はピンとこなかったんです。でも、オーナーから「まず触ってみて」と言われて商品を手にとった瞬間、そのやわらかさに驚きました。私は長年アパレルに携わってきた経験から、繊維のことは詳しいつもりです。「この品質で、この価格なら、日本でも必ず受け入れられる」と、直感しました。日本でも食の分野ではオーガニックが少しずつ浸透していましたし、この先衣類の分野でも広がっていくはずだと。
なにより決め手になったのは、サステナブルであるために、なにも我慢しなくていいという点でした。BOODYなら、「気持ちいいから着たい」「手頃な値段だから人にも勧めたい」と思って選んだ結果、それがサステナブルだった、という順番になります。それに、当時はまだ市場にだれもいなかったことにも魅力を感じました。日本でゼロからブランドを育て、新しい価値観を広げていける。その挑戦に、心からワクワクしたのを覚えています。
肌がリラックスすると
心もほどける
——どのようにゼロからブランドを広げていったのでしょうか?
最初に考えたのは、まずは多くの方に手に取ってもらうことでした。私がそうであったように、言葉で説明するよりも、実際に肌で触れていただくほうが、その良さが伝わる商品ですから。それまでアパレル業界で築いてきたつながりを生かして、生活雑貨の「ロフト」さんやホテル、オーガニックへの関心が高いショップなどにサンプル商品を配りました。ありがたいことに、すぐに置いてくださるお店が増え、初年度で事業は黒字化できたんです。ところが、その後に大きな壁がありました。追加注文がなかなか入らない……。なぜだろうと思って売り場へ足を運んでみると、商品は目立たない場所にそっと置かれていました。つまり、店頭の方々には商品の魅力が十分に伝わっていなかったんですね。そこで今度は、店舗スタッフの皆さんにも商品をお配りしました。すると「これ、いいですね!」と感激してくださるのですが、お客様の約8割は女性です。男の私が「このブラジャーは肌触りがいいですよ」と熱く語っても、説得力はありませんので(笑)2年目からは思い切って営業体制を見直し、お客様に寄り添える女性の営業スタッフを採用することにしました。その結果、売上は1年足らずで倍近くまで伸びていったんです。
——すごいですね。通販でもよく売れているのでしょうか?
現在は、売上の約65%が公式通販サイトで、35%が卸売りです。オーストラリアの本社が通販で成功しているので、日本でもそのノウハウを取り入れています。個人・法人のお客様ともに、全国からいつでもご購入いただける仕組みを整えています。ありがたいことにリピーターさんが多いのですが、それはやはり、一度着ていただくと「ほかに戻れない」と感じてくださる方が多いからだと思っています。
——坂爪さんから見て、BOODYのどんなところが優れていますか?
素材も製法も、ほかには真似できない独自性があります。BOODYの製品は、主にオーガニックバンブー(有機栽培の竹)の糸で作られています。竹の繊維は丈夫なのでいろんな製品に成形しやすいのが特徴です。創業者たちが、それをやわらかな下着に仕立てるために、中国の工場とかなり試行錯誤を重ねて実現したと聞いています。糸の細さや、立体的に編み上げる製法により、縫い目が少なく、肌あたりがとてもやさしいんです。
しかも竹は、農薬や大量の水を必要とせず、驚異的なスピードで成長する植物です。原料そのものがエコであるだけでなく、BOODYでは製品のパッケージにも生分解性素材を採用するなど、ものづくりの全工程で環境への負荷を減らすことを徹底しています。
お客様からは、「蒸れにくい」「着け心地が軽い」「汗をかいても肌に張りつかない」といった感想をよくいただきます。機能面でも、毎日身につける下着として最適なんですよ。
——どのようなお客様に選ばれているのでしょうか?
中心となるのは、40〜50代の女性です。35歳を過ぎたころから肌質や身体の変化を感じ始め、化粧品や食事だけでなく、身につけるものにも自然と意識が向くようになる。その延長線上で、ご自身のケアのためにBOODYを選んでくださっているようです。
それから、アトピー専門クリニックの患者様など、肌トラブルでお悩みの方にもご好評をいただいています。「肌への刺激が少なく、肌あたりがなめらか」「掻いてできた傷が生地にくっつきにくい」といった点など、実用面でもお役に立てていることがとても嬉しいですね。
私の3歳の息子は、BOODYのおくるみを赤ちゃんのころから使っていて、もうボロボロなのにいまだにそれがないと眠れないくらい気に入っているんです。肌触りって、それくらい人に安心感を与えるものなんですよね。8年間、肌に直接触れる下着や肌着にかかわってきて気づいたのは、人は、肌がリラックスすると心もリラックスするということです。着ていることを忘れるくらい自然と肌になじみ、気がつけば毎日こればかり着ている。BOODYはそんな存在であってほしいと思っています。

BOODY を愛するスタッフ。顧客窓口は
「カスタマーハピネスチーム」と呼ばれている
「サステナブル」を
まっすぐに届ける
——心地よさが支持されているとはいえ、順調に成長し続けているビジネスの秘訣はなんですか?
私たちは、短期的にたくさん売ることよりも、長く愛されることを大切にしています。たとえば、お取引先に無理な在庫を持たせないという方針もそのひとつです。アパレル業界では、シーズン初めに大量の仕入れを求めるブランドも少なくありません。一方私たちは、最初に必要な分だけ入れていただき、あとは売れ行きを見ながら追加で発注していただくシステムです。そうすれば、お店は在庫を抱えすぎてセールに追われることなく、定価で長く販売できる。私自身が長年小売の現場に携わってきたからこそ、「お取引先にとって本当に利益になる売り方はなにか」を常に考えるようにしています。もちろんそれが結果として、信頼を得ていくことにもつながりますし。
オーストラリアの本社は創立から14年ですが、派手なプロモーションを好みません。私たちもその姿勢にならい、巨大モールへの出店や、莫大な広告費をかけるといったことはしないと決めています。もしモールに出店すれば、長くお付き合いしてくださっている全国のお取引先へも影響が出ますし、広告費は最終的に商品の価格に上乗せされて、お客様の負担になってしまいます。すべての判断の軸に、サステナブルであることを置いているんです。
——本国のブランドを日本に伝えるうえで、どんな工夫をしていますか?
オーストラリアはエコ先進国ですし、私はBOODYが届けている価値こそ本物だと信じています。私たちの役割は、それを日本向けにアレンジすることなく、そのまま日本の皆様へお伝えすること。プロモーションにおいても、日本の有名人を起用して一気に話題をつくるようなことはせず、ブランドの理念に心から共感してくださる方とのつながりを丁寧に築いていきたいと考えています。特に力を入れてきたのはインスタグラムで、現在は5万人以上の方にフォローしていただいています。ヨガの先生をはじめ、ブランドと調和するアンバサダーの皆さんが、一緒にブランドを育ててくださっている。本当にありがたいことですね。
——今年は、初めて日本企画の商品も誕生したそうですね。
はい。日本の企業と一緒にユニセックスのTシャツを開発しました。しかし、やはり簡単に本社から許可をもらえたわけではありません。数年かけて販路開拓や実績を作ってきたうえでのゴーサインでした。私としては、商品を作れたこと以上に、「これまでの歩みを評価してもらえた」と感じられたことが嬉しかったです。
——今後の展望を教えてください。
これまで通販を中心に育ててきましたが、これからは実際に商品を手に取っていただける場所を、少しずつ増やしていきたいと考えています。この秋には新しい商品も加わりますし、沖縄や関西をはじめ、BOODYと出合える場所が広がっていく予定です。
ブランドのメッセージに「Make Yourself Comfortable(毎日を、もっと心地よく。)」があります。「心地いいから」と選んでいたら、自分にも、暮らしにも、地球環境にもやさしかった。そんな選択がこれからの当たり前になれば、社会が変わっていくと思います。これからもBOODYがそのきっかけのひとつになれたら嬉しいですね。


