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インタビュー取材しました。

環境先進国スイスの知見を日本に伝える スイス在住のガーデンデザイナー・環境専門家 滝川 薫 氏 インタビュー

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サステナブルの先進国スイスでガーデンデザインの仕事をする滝川薫さん。同時に、環境や再生エネルギー、エコ建築、有機農業などをテーマに、情報を発信しています。「身近なことから変化は起こせる」優しくも力強く語る滝川さんに、スイスと日本での活動について伺いました。

「日本には新しいアイデアをお届けできるように、私を受け入れてくれたスイスには庭づくりを通じて恩返しをするような気持ちで取り組んでいます」と滝川さん

環境・サステナビリティ専門家、ガーデンデザイナー
滝川 薫(たきがわ かおり)

スイスの造園学校で植栽デザインなどを修了後、ガーデンデザイナーの夫と共に「Atelier für Oekologie und Gartenkultur」を共同運営。スイス国内の住宅・産業建築の庭園・緑化設計および管理指導に携わる。環境先進国スイスの知見を日本に幅広く伝えるため、環境、エネルギー大転換、省エネ・エコ建築、有機農業、持続可能な地域発展などをテーマに執筆、視察コーディネート、セミナー、ウェビナーなど多岐にわたる活動をおこなっている。
滝川薫ウェブサイト https://www.takigawakaori.com/

身近な環境をエコロジーに

——大学でイタリア語学科を専攻されていますが、もともと海外への関心が高かったのですか?

母は航空会社で、祖父の一人は外国語大学に勤めていましたし、もう一人の祖父はイタリア料理のコックだったので、幼いころから海外の話を聞く機会は多かったです。学生時代にアルバイトをしながらイタリアに通い始めて、外の世界の面白さを経験しました。当時から、将来は環境にかかわる仕事をしたいと漠然と思っていました。

——その環境への興味は、いつごろから深まっていったのでしょうか?

90年代後半に冷暖房システム専門メーカーでアルバイトをしていたころです。そこの社長さんが自然素材の建築や「緑化」を利用した住環境づくりに取り組んでいました。そこに、スイスから招かれていたのが、後に私の夫となるガーデンデザイナーのフリッツです。

彼は、私が最初に出会った筋金入りのエコロジスト。彼が手がけた緑化に大きな衝撃を受けました。オフィス内に実現された五大陸の植物から成る屋内緑化を見て、「こんなことができるんだ」と。住宅においても、当時のスイスですでに一般的であった技術と自然の力を活用することで、快適で環境に配慮した暮らしが実現できることを、アルバイトやスイスの人との出会いを通じて知りました。

——新しい扉が開いたというか。

はい、バブル崩壊を目の当たりにして、大量生産・大量廃棄の社会では立ち行かなくなるという不安を感じていましたが、なにを変えられるかは見えていませんでした。でも彼との出会いを機に、身近な「住環境や市民社会」から変えられる、という形が見えてきたんです。

そこで、大学卒業後に、まずは環境先進国だったドイツのフライブルグで語学を学び、次にチューリッヒのヴェーデンスヴィルカレッジで、ガーデナーやランドスケープデザイナーのための「近自然庭園・景観の設計コース」を受講しました。スイスでの学びは、日本の「趣味の園芸」という印象とは少し違います。自然界の多様な植生や生態系について深く学び、それが庭という空間をどうつくるかという造園の基礎になりました。デザインだけではなく、庭を管理する方法や、環境問題全般やカルチャーについても包括的に学べたことが大きかったです。

その後はベルンの造園学校に進み、多年草や温室植物、樹木といった園芸植物の基礎知識を習得。さらに、3年間の「植栽デザインコース」を修了しました。ここでは、一年を通じて美しい庭を保つために、庭園空間の設計と並んで、植物をどのようにコンビネーションするのかという専門知識を学びました。20年も前の話です。

——その包括的なご経験が、フリッツさんと共同運営されている「生態学と庭園文化のスタジオ(Atelier für Oekologie und Gartenkultur)」でのガーデンデザインの仕事につながっていったのですね。

はい。ただ、学びながら、環境に関する執筆や視察の仕事も並行しておこなっていたので、ガーデンデザインだけに没頭することはできなかったんです。でも今思うと、ガーデンデザインの専門的な視点と、執筆・視察という環境全体を見渡す視点の、両方の視点を持っていたことが、今の私の活動につながっていったと思います。

いつ訪れても
「発見」がある庭を

——2009年に『サステイナブル・スイス』を出版されたのは、どんなきっかけですか?

2000年代初めにスイスに来てから、省エネ建築や再生可能エネルギーのことを熱心に教えてくださる方に次々と出会ったんです。建築家や医師、エンジニア、弁護士など、さまざまな分野の専門家が、社会貢献のために積極的に市民活動に参加しているんですね。「私の役割はこれを日本に伝えることかもしれない」と思い、発信を始めました。建築関係の雑誌で連載をさせてもらったり、自分で冊子を発行したり。そのうちに出版社の方に声をかけていただいたんです。本をきっかけに「実際に現地を見たい」という方たちが増えたので、環境視察も継続的に実施してきました。

——スイスと日本の橋渡しのような役割を見出したのですね。

そうですね、振り返ってみると、日本でもイタリアでもドイツでもない、自分の生きる道を模索するなかで、これが私にとっての適材適所だったのでしょう。視察に参加された日本の方たちが、スイスで得たヒントを、日本の省エネ建築やまちづくりに活かせた、と聞くことが一番うれしいですね。

——滝川さんご自身は、どんな暮らしをされているのですか?

今住んでいるのは、スイスの標高840メートルの山あいにある、有機農家とレストラン・ホテルから成る集落です。私たちも50平米ぐらいの温室で、ハーブや葡萄、野菜を無農薬無化学肥料で育てています。以前は広大な畑もやっていたのですが、今はお休みしています。あとは家に隣接するレストランの庭園をショーガーデン(模範庭園)として、夫と共に設計・管理させてもらっています。そこではイベントをおこなったりできる、地域に開かれた場所になっています。

——ガーデンデザインの仕事で、特に印象に残っている案件はありますか?

私たちは、ベルン州のコンテックという会社の庭に、25年前からかかわっています。工場とオフィスの屋上庭園と、周囲を囲む庭という、すごく大きな敷地です。コンテックでは、オーナーが社屋建設によって失われてしまう自然を、庭をつくることで回復したいと考えていました。例えば、屋上に貯まった雨水を約100メートル下の庭に流して池に貯め、それが地下に浸透できるような水の循環システムを取り入れるなど、自然の営みを最大限に活かすように設計しているんです。庭づくりは「管理」が要です。植物や樹木の生育具合は天候などの影響で毎年変化するので、どう管理するかによって、生きるも死ぬも変わってくる。それも含めて庭づくりには発見や感動や美しさがあるので、とても楽しいですね。ここで得た気づきが、私たちが今請け負っている2つの大きなプロジェクトにつながっています。

——どんなプロジェクトですか?

ひとつは、スイスの大手製薬会社の工場の屋上庭園です。全体で6千平米ある巨大な面積のうち、3千平米を「人と自然のオアシス」にする。東西南北それぞれにテーマがあり、西側は水面の周囲に湿地性の植生を、南側は気温が上がるので地中海性の植生を主にした庭に。東側はあまり重量をのせられないので、草地のビオトープ(昆虫や生き物の生息空間)のような場所に。日当たりのよくない北側は森のような植生に、という感じです。生物多様性が失われつつある現代では、庭が生物多様性を促進する役割も担っているので、コウモリや鳥類の巣なども設ける予定です。

——ガーデンデザインで大事にしていることはなんですか?

人間にとってもその場の自然にとっても「故郷となるような場所」をつくることです。庭園は文化と自然の中間にあります。人間にとって手付かずの自然は心地よくないので、心地よく感じられるようなデザインの構成を持たせながら、自然の営みを取り込んでいく。365日いつ訪れても花が咲いていて、美しいこと。自生の植物や自然にとって価値の高い園芸植物などをコンビネーションして、色や形、空間でも美しく見えるようにデザインします。そして、昆虫や鳥類や小動物にとっては食事や繁殖できる場所でもある。私たちがめざしているのは、あらゆる生き物にとってたくさんの発見がある「ダイナミックな庭」なんです。


日々表情を変える、屋上庭園の眺め

持続可能な社会は
すべてがつながってこそ

——近年は、100%ビオ(オーガニック)と資源マネジメントを実装する「ビオホテル」*についても書籍や視察などで紹介されています。

ビオホテル最大の魅力は、衣食住すべてで持続可能性を実現できるというモデルを示していることです。ヨーロッパではオーガニックの消費者層が厚いので、「旅先でもオーガニックの食事をしたい」「再生可能エネルギーで過ごしたい」というニーズがある。宿泊先もサステナブルを選べるということで注目が集まっています。

——日本とスイスで、環境に関する意識の差はどんなところに感じますか?

スイスや周辺国でも、環境問題に対しての意識に幅はありますが、幅広い情報が入ってきやすい環境ではあります。大手スーパーの生協は毎週全世帯にオーガニックや動物福祉、再生可能エネルギーなどについて周知していますし、環境団体などからも情報が入ってきます。一方、日本では、食、建築、地域づくり、生物多様性など、各分野の専門性は高いのですが、それぞれがつながりにくい印象です。特にオーガニックの食や農業は、日本の農業技術は非常に高いにもかかわらず、まだ特別なものという認識があり、あまり浸透していません。

肉食についても同じです。食文化が異なるので一概にはいえませんが、ヨーロッパはもともと肉の消費量が多かった反動もあってか、今は意識的に肉食を減らしている人たちが人口の3分の1ほどいます。私たち夫婦もベジタリアンです。減らすことは環境や生物多様性、健康の面でも大事なことですが、日本ではあまり受け入れられていないようです。

——環境問題への危機感をどのようにお持ちですか?

「2050年までに気候中立にする」という世界共通の目標があるなかで、このままでは間に合わないだろうという危機感はあります。スイスは水力・太陽光発電が盛んで、建物の断熱規制や三層窓の標準化などが非常に厳しくなっています。日本も基準は変わってきてはいますが、それほど厳しくはありません。建物の省エネなどは、やはり政策がもっと強く誘導していくべきだと思います。日本は再生エネルギーのポテンシャルは高いはずですが、原子力を維持したい方針が再生可能エネルギー移行を難しくしているのがもどかしいですね。

——日本でも再生可能エネルギーの普及を加速させるためにできることはありますか?

大企業任せにせず、地域の手でおこなっていくことでしょうか。たとえばソーラー開発はできるだけ地域の人やお金で担えば、地域からも受け入れられやすくなり、利益も地域のなかで循環していく。集合住宅でも有機農業でも、地域が主体となっていろんな施策を進めていくことが、豊かさにつながるのではないかと思います。スイスでは、地方の優秀な人たちが地域変革の求心力となって活躍していて、多くの人が「市民で変えられる」と信じています。もちろんスイスもいい面ばかりではありませんが、今があるのは、一人ひとりの尽力の積み重ね。これがなにより大事だと感じています。

——今後の展望を教えてください。

今後数十年は、どの国でも持続可能な転換への取り組みが求められるはずですから、引き続きこの分野で活動していきたいです。コロナ後に、ドイツ語圏から多方面の専門家を招くウェビナーや、視察セミナー「サステナブルトレイル」を始めました。これは特定の分野に偏らず、横断的な視点での大転換が必要だと伝えたくて。さまざまな人が交流し、視野を広げられる場をつくることをめざしています。日本に少しでもインスピレーションをお届けできたらとてもうれしいですし、これからもたくさんの出会いを楽しみにしています。

* 100%オーガニックの食事と、CO2 を尺度とした資源マネジメントに取り組む厳しい基準をクリアしたホテル。詳細は滝川さんの著書『欧州のビオホテル』にて

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環境先進国スイスの知見を日本に伝える スイス在住のガーデンデザイナー・環境専門家 滝川 薫 氏 インタビュー

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