瞑想はメンタルヘルスに効果的といわれますが、「習慣化が難しい」と感じていませんか? 株式会社エムエムエイト代表の山田剛さんは、幼少期から精神世界に親しみ、脳波を誘導するブレインマシンの普及やセッションに携わってきました。氏の半生とともに、意識変容の仕組みや心身を整える方法について伺いました。

富士山をバックに、南アルプス北岳山頂にて。山登りが好きで、瞑想と同様に「リセット」する手段のひとつでもあると話す
株式会社エムエムエイト
代表取締役 山田 剛(やまだ つよし)
青森県出身。瞑想家・山田孝男氏のもとで幼少期から瞑想を学ぶ。株式会社エムエムエイトの設立に参画後、代表に就任。長年、心と意識の仕組みを探究し、精神世界と科学を融合させたメンタルトレーニングを提唱する。ブレインマシンの最高峰「ヴァイブラサウンド」を導入したサウンド瞑想スタジオ「スタイル 21」の運営や、家庭で使える「ルミナ」の提供を通じて深いリラックスから自己実現まで幅広くサポートしている。
▶︎株式会社エムエムエイト https://style21.co.jp/
精神世界と現実を
行き来した少年時代
——幼いころに瞑想家の叔父さま(山田孝男氏)から瞑想指導を受けたそうですね。当時としては珍しい体験だったのではないでしょうか?
もともと僕は落ち着きのない子どもで、母が「瞑想でもやらせたら少しは変わるんじゃないか」と思ったようです。小学4年生のころ、インドやネパールで修行していた叔父が帰国するタイミングで、夏休みの1ヶ月間、祖父母の家に預けられました。毎晩、叔父に呼ばれて誘導瞑想を受けたんですけど、何時間も座らされるのはイヤでしたね。好きなテレビ番組も観られないし、足はしびれるし(笑)
最初にやったのはオーラの視覚化でした。目を閉じて人の姿をイメージしていくと、だんだん色が見えてくる。そのうちチャネリングのような体験もして、叔父が僕を介して目に見えない存在とやり取りしているのを聞いていました。エーテルやアートマンといった、ヨーガの世界観にもそのとき触れました。もちろん、それは僕の主観的な体験なので、正しかったかどうかはわからないです。でも子どもは先入観がないので、言われるままにやると神秘体験ができてしまう。子どもながらにリアリティを感じて、世界の見え方が変わるような感覚がありました。
——その後、ご自身でも瞑想や精神世界を探究していかれたのでしょうか?
本格的には高校卒業後、上京してからです。サブカルチャーが好きだったこともあり、自然と精神世界に足を踏み入れました。学生時代は、叔父の周りにいたカウンターカルチャーやヒッピーカルチャーの人たちとかかわるようになりました。その方たちの影響もあり、バックパッカーとして世界を旅したりもしました。当時、海外では瞑想がライフスタイルの一部として根付いていたんです。同じバイブレーションを感じられる人たちと出会い、自分の世界観も大きく広がりました。さらに、いわゆる神秘体験を重ねるなかで、まるでコンピューターに情報がダウンロードされるように、明確な感覚としてメッセージを受け取れることも実感したんです。なんとなく宇宙はデジタルなのかもしれないというか、昔ながらの修行法だけでなく、別のアプローチでも同じ意識状態に到達できるのではないかと考えるようになりました。
——その後、叔父さまと一緒に仕事をされたのですね。
はい、大学時代から叔父が瞑想教室などをやっていた事務所の仕事を手伝うようになり、その後、僕が事業を引き継ぐことになりました。でもその直後にあのオウム真理教の事件が起きてしまったんです。もろに影響を受け、僕自身も落ち込んで鬱状態になりました。しばらくは本当に厳しくて、冬眠するみたいにひたすら引きこもってましたね。
——どのように乗り越えたのですか?
ひとつは、いつも話を聞いてくれた仲間の存在です。もうひとつは、ブレインマシンでした。たとえ瞑想や運動が心身にいいとわかっていても、落ち込んでいるときは体が動かないんですよね。でもブレインマシンならスイッチを押すだけでいい。プログラムが自動的に意識を落ち着いた状態に導いてくれるんです。自分では止められない思考を一度リセットする。それだけでかなり楽になりましたし、テクノロジーの力で人の状態を整えるという可能性を、実体験として理解することができました。
科学の力で
心の平安を得る
——現在は「ルミナ」というモデルを展開されていますが、そもそもブレインマシンとはどのようなものですか?
簡単にいうと、特定の周波数の光と音で脳波を誘導するシステムです。海外で開発された技術で、1950年代ごろから脳波の研究が進むなかで、脳波の状態と人の心理状態が密接に関係していることがわかってきました。リラックスしているときの脳波、集中しているときの脳波など、それぞれに違います。その関係性が明らかになるにつれて、目的の状態に脳を誘導するという研究が進んだのです。その結果、点滅する光や音の周波数によって脳波が同調する、いわゆる「ブレインエントレインメント(脳同調)」という現象が確認されました。1980年代にこの技術が製品化され、私たちも日本に紹介し始めたのです。
ブレインマシンでは、ゴーグルやヘッドホンを通して光と音による特定の周波数の刺激を受けます。たとえば、勉強する前に集中しやすい状態に入るとか、眠る前に深いリラックス状態に入るとか、目的別にセッションを選ぶことができるので、自分でコンディションを整えるためのツールとして使えるんです。前モデルの「マインドスパ」は使いやすさを重視したシンプルな設計でしたが、今回発売した「ルミナ」は、その進化版。プロフェッショナル仕様となり、セッションの数も60種類と大幅に増えました。位相といって、音と光の周波数のわずかなズレでも体感が変わるのですが、その微調整がより精密にできるようになって、体験の質が格段に向上しました。
——実際に体験しているとき、脳や意識ではどんなことが起きているのでしょうか?
複数の感覚に同時に周波数の刺激が入ることで、開発者のいう「センサリーレゾナンス(感覚共振)」の状態に入ります。脳が「外界に危険はない」と判断しやすくなり、生存本能が落ち着いて、思考が自然と静まっていく。結果として光を浴びているのに心が穏やかになったり、音を聞いているのに静寂を感じたりする方が多いですね。個人差はありますが、私は瞑想状態に近いものだと感じています。禅でいう「空」のような状態です。五感は刺激を受けているのに、内側はとても静かになる。
——忙しい現代人にとっては、より現実的なアプローチとも言えそうです。
短い時間で簡単にできるというのは、大きな意味があると思います。叔父とよく話していたのは、今の時代、どれだけ深い境地に至ったとしても、洞窟の中や山奥にいては意味がないねと。むしろ情報が多くて変化の激しい社会にいながら、いかに心のバランスを保てるかが大事ですから。僕はよく登山にたとえるのですが、瞑想や修行は自分の足で山を登っていくようなもの。一方でブレインマシンは、ある程度のところまでリフトで運んでくれます。めざす頂上は同じでも、そこに至るまでのプロセスは違う。どちらがいい悪いではなく、選択肢のひとつになります。
ただし大事なのは、これはあくまで道具だということです。ブレインマシンが望みを叶えてくれるわけではなくて、自分がどう使うか。最終的には、自分自身で整えられるようになることが理想です。そのために「整った状態」を体感として知る、そのきっかけになるのがブレインマシンの価値だと思っています。
——スポーツ選手のサポートもされているそうですね。
スキージャンプの原田選手とご縁がありました。リレハンメルオリンピックの後、彼が落ち込んでいた時期に、ご相談を受けました。当時アメリカでは、こうしたブレインマシンをメンタルトレーニングに使うのは一般的だったんですが、日本ではまだ珍しかったので、使い方や理論をまとめてお伝えしました。結果として、「よく眠れるようになった」というのが一番効果的だったようです。おそらく、布団に入ると失敗のイメージが浮かんでしまって、眠りが浅くなっていたんでしょうね。それが改善されただけで、パフォーマンスが戻っていった。トップアスリートは技術の差はわずかなので、本番でどれだけ力を出し切れるかが重要です。これを機に、あらゆる分野で活用できるんだなとわかりました。
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スタジオではあらゆる機器を駆使してセッションする
脳疲労をリセットし
自分を取り戻す
——「本来の自分でいる」とは、脳としてはどんな状態なのでしょうか?
ひと言でいうと、思考が落ち着いて、ほぼ停止しているような状態です。ノイズがなくて、「ただ見ている」「ただ感じている」「ただ在る」という感覚。そこには評価も感情もない、すごくニュートラルな状態です。私たちは普段、外部からの影響を受け続けていますよね。でも本来の状態であるには、それ以前のなにもない自分の状態に戻る時間が必要なんです。僕のスタジオでは「リチューン(再調整)」という言葉を使っています。あれこれ考えすぎて空回りしたり、エネルギーが分散しているときは、一度リセットするといい。その手段が瞑想やブレインマシンの力を借りることだったりします。
今はAIも含めてとても便利になりましたが、そのぶん頭を使わない時間やぼんやりする時間が減っています。必ずしも答えがあることばかりではないのに、つい「正解」を求めてしまう。人間らしい感覚が失われ、ロボット化しているのかもしれません。それが積み重なると、知らないうちに疲れてしまいます。いったん思考を止めて再調整する。そうすると自分のリソースをフォーカスしたいところに使えるようになるので、人生の可能性はすごく広がります。本来のパフォーマンスを無理なく発揮できるようになるんです。1日10分でいいので、自分の内側に戻る時間を持ってほしい。断食で体をデトックスするように、脳も定期的にデトックスするのがおすすめです。
——印象に残っている、体験した方の変化はありますか?
職場の人間関係で悩んでいた方です。上司との相性が合わず、辞めるかどうか悩んでいたときに、「私は私らしく快適に仕事ができている」という内容のアファメーションを一緒に作りました。それを音声分析音源にして毎日聴いてもらっていたら、しばらくして「上司が異動になり、相性のいい方に変わりました。自分が変わらなくても環境が変わることもあるんですね」と連絡があったんです。ヴァイブラサウンドの開発者は「この宇宙は周波数(バイブレーション)だ」と唱え続けています。全体の調和がとれると、結果として現実も変化することがある。無理にがんばるよりも、まず土台を整えることがすごく大事だと思います。
——スタジオでは音声分析もされています。
声の周波数には、その人の状態がすべて現れるといわれています。元気な声、弱っている声など、私たちもなんとなく雰囲気で感じ取れますが、それをより精密に解析して、足りない周波数や偏っている部分を見ていきます。それをもとに、その人に合った音の処方箋のような音源を作り、フィードバックする。すると、心身のバランスが整っていきます。
——今後の展望をお聞かせください。
「ルミナ」の価値をより多くの方に届けていきたいです。瞑想や意識変容に興味がある方はもちろん、体調改善や新しい可能性を見つけたい方などにも、知ってもらえたら嬉しいです。最終的には、僕は脳波にも基礎体温のようにその人らしい基礎脳波ってあるんじゃないかなと思っているんですよ。スタジオのセッションでも、マシンのことをお伝えするときも、なるべくご本人がすでに持っている可能性を引き出し、より調和がとれるようサポートしていきたいと考えています。
