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インタビュー取材しました。

健やかな眠りでよりよい明日を 株式会社ハート 代表取締役社長 山岡 弘章 氏 インタビュー

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高知県の自然豊かな環境でオーガニック寝具を作り続けている株式会社ハート。国際的なオーガニック認証のGOTSとOCSを取得更新し、原料から製品完成まで、「最も安心して眠れる寝具」を追求しています。その原点は、子どもの健康を願う両親の想い。山岡氏に、事業の歩みと、その先の未来について伺いました。

お客様はリピーターが多く、三世代にわたって愛用する方も。「一番大切にしている『安心』を感じていただけているとしたら心から嬉しい」と話す山岡氏

株式会社ハート
代表取締役社長
山岡 弘章(やまおか ひろあき)

幼少期に重度のアレルギー喘息を患い、両親がその改善のため1988年に株式会社ハートを設立。20代でイギリス生活を経験した後、2014 年に入社。2020年4月より現職。自身の経験を原点に、オーガニック寝具を通して「睡眠環境の質が健康の質につながる」ことを伝えている。同社では、ふとんやカバー、タオルなど国際オーガニック認証を取得した製品を幅広く展開。経済大臣賞など受賞歴もあり、海外からも注目を集めている。
▶︎公式サイト https://www.heart-kochi.jp

「息子を守りたい」
両親の願いが出発点

——山岡社長のアレルギー喘息をきっかけに、お父様が会社を設立されたそうですね。当時どんな状態だったのですか?

幼少のころから、激しい喘息の発作を起こしていました。かすかに記憶があるのですが、食後にくつろいでいると、急に痙攣を起こして倒れるんです。目が覚めたら救急車の中にいる、ということが頻繁にありました。両親はなんとか私の健康状態を改善しようと、あらゆる方法を探してくれました。ハウスダストや食事など、なにかが原因だと聞けばすぐに実践する。そんなことが何年も続いたそうです。なかでも発作は夜に起きることが多かったので、「とにかく、この子がゆっくり眠れる布団を作りたい」と考えたんですね。もともと祖父が寝具店を営んでいたこともあり、祖父の工場で、家族みんなで知恵を出し合いながら手作りで布団を作り始めました。

——どんな工夫をしていたのでしょうか?

ほこりが出にくい縫い方を工夫したり、無添加の生地を使ったり。一般的な布団で体にダメージを受けてしまう要因を、ひとつずつ見直していきました。そんな両親のおかげで、10歳になるころには、私の病状はかなり良くなったんです。そして父は、同じ悩みを持つ人たちに安全な寝具を届けようと決意し、株式会社ハートを立ち上げました。社名の「ハート」には「真心(まごころ)」の意味が込められていると聞いています。

当初、父は作った布団を車に積んで、売り歩いていました。同じように困っているご両親の役に立ちたい、その一心だったんだと思います。今のようにインターネットの時代ではないので、出会った方と情報を共有しながら、地図を頼りに全国各地へ行ったそうです。そこで、寝具に関するさまざまな悩みを知りました。たとえば羽毛布団は暖かいのが魅力ですが、「においが苦手」という方がいらっしゃること。海外から輸入される羽毛に殺菌目的でホルマリン燻蒸が施され、当時はそれが十分に洗浄されないまま製品になる場合があったそうです。私たちは洗浄するときに、合成洗剤ではなく植物由来の石鹸を使っています。そのように、どうすれば安心して使えるかを探究し、寝具業界の常識を覆しながら少しずつ商品化していきました。

——どのように販路を広げていったのでしょうか?

当時の日本はバブル全盛期で、華やかさがもてはやされていた時代です。「オーガニック」という言葉もまだ一般的ではありませんでした。いくら健康に配慮したものでも、生成りで地味な商品は、なかなか広がっていかなかったんです。それでも1990年代には全国の生協さんのカタログでご紹介いただけるようになり、2008年にはオンラインショップを開設、2010年代には宿泊施設にも導入しました。

父がよく言っていたのが、「私たちは1億人に受ける商品を作るのではなく、アレルギーに悩む少数の人たちに確実に届けるんだ」ということです。そのお客様同士がコミュニティとなって、40年近く私たちの事業を支え続けてくださっています。

最初は父の「一人の子どもの命を守る」という願いから始まった取り組みが、今では作る人、使う人、地球環境、そして未来の子どもたちまで、「すべての命を守る」という使命へと広がっています。

安全を究めて
安心を約束する

——理想の寝具を形にするうえで、難しかったことはなんですか?

やはり、ものづくりの仲間探しでした。理想を形にしてくださる工場を見つけるのが難しかったようです。当時から、繊維製品は安価な海外生産が主流でしたから。国産でこだわって作りたいといっても、話すら聞いてもらえなかったんです。なんとか引き受けてくださってからも、試練続きでした。私たちの製品では、縫い糸は化繊糸ではなく綿糸を使うことや、蛍光増白剤を使わないなど、厳格な安全基準を決めています。一般的な製造ラインに、特別な管理が求められる私たちの製品を混ぜることは、大きな負担になるんですね。たとえば、他の製品の化学繊維や薬品が付着しないように、いったん機械をすべて洗浄する。機械にセットしてあるポリエステルの糸を外して、綿糸に入れ替える。それでも、少しでも蛍光剤が残っていると使えない……そんなことが二度三度とあれば、親身になって協力していただいていたところでも続かなくなってしまいます。

委託することに限界を感じた父は、自分たちで100%品質管理をするために、自社工場を作ろうと決めました。そして高知県の大豊町にあった祖父の工場を改修し、自社生産へと舵を切ったんです。1年ほどかけて設備や管理体制を整え、2005年に日本で初めて、世界的な認証機関エコサートよりオーガニック認証を取得。そして、2009年に国際オーガニック認証「GOTS(Global Organic Textile Standard)」を取得しました。

——高知から日本初のオーガニック寝具というのは最先端ですね。

先端すぎて、当時はほとんど注目されませんでしたね(笑)。認証は更新する必要があるので、父も毎回「これを続けていくべきか」と悩んでいました。ようやくここ数年で環境への意識が高まり、展示会などでも「認証を持っているんですね」と注目してもらえるようになりました。それでも認証を取り続けてきたのは、やはり現時点でこれ以上ないという安全性を、お客様に証明したいからです。

——その安全性を保つために、どんなことを工夫していますか?

私たちの製品は、原料が育つ畑から、製品がお客様の手に渡るまで、すべての工程で人の体や地球環境へのダメージを極力抑えています。食品ではトレーサビリティは当たり前になっていますが、直接体に取り込まない衣料品は、意外と気を配られていないのが現状です。「オーガニック」とうたっていても、原料だけオーガニックコットンを使い、副資材や製造工程では有害とされる化学物質を使っているケースも多い。私たちは、国際基準で定められた繊維基準に従って作っています。それでも、どこかで有害な化学薬品によって汚染されるリスクはゼロではありません。だからこそ、ハート独自の安全基準も設けています。そのひとつが、お客様へお届けする前のブラックライト(汚染物質を青白く光らせるライト)での検査です。いちばん大事にしていることは、お客様が寝るときや身につけたときに、心から安心していただきたいということなんです。

——家業を継ごうと思ったのは、どんなお気持ちからですか?

20代のころ、イギリスに4年半ほど住んでいました。ヨーロッパでは社会にオーガニックが浸透していて、周囲に家業について話すと、「素晴らしいね」とよく言われたんです。最初から「継ぐんだ」という強い想いがあったというより、まずこの価値ある事業を継続させたいという気持ちでした。

会社を継いだのは、本当に急なことでした。2020年の春に父が病気で倒れ、余命1年だと言われて。すぐに治療が始まると同時に、私が引き継いだんです。いつかはと思っていましたが、驚きました。ちょうどコロナが流行し始めた時期で、渋谷に実店舗の「SaFo(サフォ)」を開店する準備も進めていました。緊急事態宣言が出て、だれも外を歩いていないなかで店舗をオープン。さらに、全国的にマスク需要が急増したため、「オーガニック生地のマスクを作ってほしい」との依頼があり、高知の工場はフル稼働という異例の事態になっていました。後を継いだことを実感する間もなく、目の前のことに必死になっているうちに、あっという間に時間が過ぎていきました。


熟練の手作業で作られるハートの寝具

いい眠りが
人生の質を変える

——2020年に立ち上げた「SaFo」はどんなブランドですか?

SaFoは「作法」の意味で、自然であること、オーガニックであることを作法として、心地よい生活につながるようにとの想いをこめています。近年は展示会に出展することも増えたので、私たちが大切にしていることを伝えるために、ハートのもうひとつの形として立ち上げました。海外のお客様も増えてきているので、SaFoの意義が大きいと感じています。

——御社の製品に対して、お客様からは、どんなお声がありますか?

お子さんがよく眠れないというお母さんや、化学物質に過敏な方からのお声をよくいただきます。印象に残っているのは、「子どもが夜中に痒がって、しょっちゅう起きるんです」というお母さんです。高密度で、ほこりが出にくい生地がよいと知って敷布団をご購入いただいたところ、翌日に「初めて朝まで起きなかったんです」とお電話をいただきました。寝具を変えて、お客様のお悩みが軽くなったことを実感できるのは、本当にうれしいことです。

一方で、健康な方でも、睡眠環境が原因の不調に気づいていない方は多いのです。寝ているあいだに体が蒸れたり、肌が赤くなったりしても、「暑いから」とか「ちょっと疲れているだけ」と思いますよね。ところが私たちの製品を使って、「え、こんなに違うの?」と驚かれる。その違いに感動され、少しずつ製品を揃えていかれます。

——睡眠の質は、健康にも大きくかかわっているのですね?

はい。人が一日約7時間寝ているとすると、一日の3分の1は寝ていることになります。人生80歳なら、25年ほどを布団の中で過ごすことになるんですよね。そう考えると、びっくりするほど長い時間ではありませんか?

健康的な生活を営むための三大要素は、食事、運動、そして睡眠です。そのなかで意外と軽視しがちなのが睡眠です。でも「どう眠るか」は、体だけでなく心の健康にもつながります。だからこそ、私たちはもっと睡眠の大切さを知ってほしいと思っています。

——山岡社長にとっての「いい眠り」とはどんなものですか?

朝起きたときに、体のどこも痛くなくて、気持ちよく起きられることですね。よく眠れないと、翌日のパフォーマンスにもてきめんに現れます。大げさではなく、睡眠環境の質は、人生の質や幸福度にも直結すると思うんです。昼間は元気に活動し、夜は疲れを癒して、100%チャージされて起きるのが理想的。それをお手伝いできる寝具を届けていきたいです。

——今後の展望を教えてください。

寝具のよさは肌で触れてこそ実感していただけるので、これからも地道に睡眠の大切さを伝えていきたいです。海外のお客様は、触って「これはいい」とわかると、値段も見ずに即決される方も珍しくありません。寝具に対する意識の違いを感じるとともに、「日本のものづくりは優秀だ」と評価されると、国内のものづくりの魅力を改めて実感します。だから、日本のものづくりの魅力をもっと国内外に発信し、減少しつつある担い手を守っていきたい。日本のオーガニック寝具メーカーとして、「選ばれるものづくり」を意識しながら、新しいことにも挑戦し、父から受け継いだ「すべての命を守っていける事業」を、大切に未来につないでいきたいですね。

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