前回は、2019年4月26日、京都大学が、京都大学吉田寮生のうち現棟に居住しているとされる者の一部に対して提起した建物明渡訴訟における主要な3つの争点と、それらの意味について、ご紹介しました。
前回ご紹介した主要な3つの争点は、次のとおりです。
①京都大学と吉田寮生との間に在寮契約が成立したか否か
②京都大学と吉田寮生との間に在寮契約が成立したとすれば、その契約はどのような性質のものか
③京都大学と吉田寮生との間に在寮契約が成立した場合、その契約は終了したか否か
この訴訟については、2024年2月16日に、京都地方裁判所において第一審判決が言い渡されました。
そこで、ここからは、3つの主要な争点について第一審判決で示された判断を、簡単にご紹介したいと思います。
なお、京都大学は、2020年3月30日に、他の吉田寮生に対して追加で提訴をしていますが、これについては、先の訴訟と併合して審理がされており、争点や判決の内容も同一です。
争点①に関する京都大学の主張
まず、原告である京都大学の主張を簡単に要約すると、次のとおりです。
吉田寮の施設管理権を有するのは京都大学であり、吉田寮生は、京都大学の自治的管理に服する福利厚生施設である吉田寮の利用を容認されているに過ぎないのであって、京都大学と吉田寮生との間には、在寮契約は成立しない。
また、吉田寮の入寮手続については、吉田寮自治会(吉田寮生が構成員となる団体)がおこなっているが、京都大学は、吉田寮自治会に対して、入寮に関する法的権限を与えたことはなく、吉田寮自治会の入寮選考手続によって入寮した吉田寮生らに吉田寮を占有する権原はない。
争点①に関する吉田寮生の主張
これに対し、吉田寮生らは、主に次のように主張しました。
京都大学当局と吉田寮自治会は、1971年、吉田寮自治会が吉田寮の入寮選考手続をおこなうことを合意し、1972年には、京都大学当局が、吉田寮自治会による吉田寮の自主的管理を認める旨合意した。そして、それ以降も、京都大学当局と吉田寮自治会との間で、繰り返し、同様の合意がなされた。
したがって、京都大学は、吉田寮自治会に対し、吉田寮の入寮選考手続をおこなう権限を与えたのであるから、吉田寮自治会の選考によって吉田寮に入寮した者と京都大学との間で、在寮契約は成立している。
争点①に関する京都地裁の判断
以上の双方の主張を踏まえ、京都地裁は次のように判断しました。
京都大学と吉田寮自治会との間では、吉田寮への入寮者の選考を含む入寮に関する一切の手続を吉田寮自治会がおこなうことについて合意が成立していた。他方、京都大学は、2017年12月19日に、今後吉田寮への入寮を認めないとする基本方針を公表し、吉田寮自治会に対して認めてきた吉田寮の管理権を回復した。
したがって、2017年12月19日までに入寮した者と京都大学との間では在寮契約が成立したが、それ以降の入寮者との間では在寮契約は成立しない。
以上のように、裁判所は、基本方針の公表時期を基準として、入寮者の入寮時期により在寮契約の成否についての結論が異なるとしました。
しかし、基本方針の公表により京都大学が一方的に吉田寮の管理権を回復したとする点には疑問が残ります。
