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感情のレッスンと実践

【Vol.59】感情と意識の進化

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 人は言葉を獲得して初めて自我を持ち「内面」を発見しました。自我がなかったら、つまり、動物のように本能だけで自然に対峙していたなら、今、この瞬間だけを生きていればよかったのです。動物たちは、過去も未来もなく、この瞬間だけを繰り返し生きています。生きのびるうえでの苦闘はあるけれども、生きることの悩みは動物にはないはずです。しかし、人間だけが過去を後悔し、未来を心配しています。それは、言葉を獲得すると同時に、時間の感覚も身につけたからです。

 今から約1万年前、現生人類の直接の祖先であるクロマニヨン人は咽喉が進化し言葉が発話可能になると、文化的にも劇的な進化を遂げました。言葉は情報の伝達を容易にし、それから間もなく文字が発明されると、世界各地に国家が次々に誕生しました。

 同時に、人類は言葉で現在を記録することができるようになり、現在を過去にする方法を手に入れたことも重要です。それによって多くの複雑な感情が、過去の記憶の中から生み出されるという人類の悩みが始まったからです。

 というのも人は現在を過去として記憶にファイルする場合、物語という形でファイルするからです。なぜ物語なのかというと、今この瞬間、つまり現在は圧倒的な情報量を持っていて、そのすべてを記述しファイルすることは到底できないからです。そこで、人は過去に意味を与えるためにも物語として記憶する方法を選ばざるを得なかったのです。

 人の記憶の中にある物語は、事実ではあるけれど、実際は現在のごく一部です。にもかかわらず人は、記憶の中の物語を確かな事実そのものとして認識してしまうことになります。そして、この物語はまるで強い磁石のように感情を帯びています。人は感情抜きに物事を見ることができない、自分に関係のある事柄については特にそうです。

 トラウマの構造を考えてみるとそれがよくわかります。例えば、嫌な出来事があると、記憶が甦るたびに腹が立ったりします。腹が立つとさらにその記憶は強化され、思い出したくもないのに思い出してしまいます。その都度記憶が強化されるので、その出来事はまるでコンクリートの構造物のように確かなものになってしまうのです。

 人が持つ悩みは、自我が持つ悩みといってもいいでしょう。古来より多くの賢者は、人類が悩みから解放されるための様々な方法を説いてきました。考えないようにする、悩まないようにする、腹を立てないようにする等々…。確かにそうできればそれに越したことはありません。がしかし、自我の構造がトラウマの構造そのものなので、人はもはや動物の本能に後戻りできない以上、感情を理解することなしに前に進むことができないのも事実です。

 大事なことは、感情を否定することでもなく、また無視することでもなく、正面から直視して理解しようとすることなのです。

 人が持つ自我の構造上、人はどうしても目の前の小さな問題に捕えられやすく、それゆえ視野が限られてしまいがちです。自分の感情に無自覚な状態だと、日常生活の中ではどうしてもマイナスの感情につかまりやすいという弱点があります。なので、まず今の自分の感情を理解することが大事になります。どんな感情であっても、自分が作り出した( 無意識の) 物語が今の強い感情作り出しているということを認めることが始まりなのです。そうしないと、意識の片隅に隠れている物語を発見できないので、永遠にそれを書き換えるチャンスを失ってしまうからです。もちろん、全面的に書き換える必要はありません。物語の筋を少し書き換えるだけで、そこから出てくる感情は変わってくるからです。

 そして、自分の感情が変わったということは、その人が少しだけ成長したということになります。視野を少し広げ、新たな情報を取り入れることができたということはまさしく成長そのものだからです。

 もちろん中には、べつに成長なんかしたくない、いつまでも恨んでいたいという人がいるかもしれません。特に、強いマイナス感情に捉えられている場合は、そう思うかもしれません。しかし、人は、成長することなしには前にすすめないので、またそれが進化の方向性なので、いずれはマイナス感情を手放すことを選択することになります。

 次回は、自分の意志の力で20年来のトラウマを解消できた話と、優れた文学作品が引き起こす意識の変容について。

- 感情のレッスンと実践 - 2012年8月発刊 Vol.59

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