水あめは、”あめ”の原点と云われています。
自然界存在する酵素の力を借り、でんぷん質を糖化してつくられる昔ながらの水あめは、
日本書紀にも登場するほど長い歴史を持つ日本古来の甘味料です。
なかでも穀類のでんぷん質を麦芽酵素で糖化させた水あめは、古来の姿そのもの。
麦芽そふとは、もち米やさつまいものでんぷん質をじっくりと糖化してつくった昔ながらの水あめを、
空気を含ませながら真っ白になるまで練り上げてつくります。
琥珀色の水あめが空気を含んで真っ白になるに従って、すくい上げればぽたぽたとこぼれ落ちる液状から、
粘度の高い固形へと変化していきます。
固すぎず、柔らかすぎず。
原材料が素朴でシンプルだからこそ、作り手の技術と熱意が仕上がりを大きく左右します。
口に含むとじわっと広がる優しい甘さと同じように、
口の中でゆっくり溶ける絶妙の柔らかさ加減もまた、
ひとつひとつ手づくりで仕上げる手間のなせる技です。
穀物や野菜由来のでんぷん質に麦芽を加えて得られる水あめには、ビタミンやミネラルが豊富に含まれています。
また原料のひとつであるもち米は、中国においても「血を養う食べもの」とされ、
病後の回復や出産後、授乳期に取るとよいと云われています。
江戸時代には飲む点滴として滋養強壮に活用された甘酒のように、
麦芽を練り上げたあめも「産後の母乳の出がよくなる」と、
地域によっては出産の祝い菓子やお見舞いのお持たせにと重宝されてきました。
現代になり、かたちは持ち運びのしやすいひとくちタイプになりましたが、
350年にわたり代々引き継がれた昔ながらの製法のまま、
ひとつひとつ手づくりで仕上げた自然な味わいを今に伝える逸品です。