青梅そのもの?塩??漬け方???
梅干は、昔ながらの仕込みをすると青梅と塩以外の原料を必要とはしません。
だからこそ、小粒でもそのものを美味しいと納得できる有機栽培された青梅や、海水ミネラルが豊富な塩を使っているかを確かめてきました。
そのうえで、昔ながらに時間をかけてゆっくり漬込み、土用干しまでされた梅干が一番と考えていたのですが、奈良県吉野で谷迫さんにお目にかかって価値観が一変しました。
梅を漬ける環境と、漬けるひとたちの人柄。
梅干を美味しくしているのは、梅干を育む場の力だったようです。
お父様の代から、40年以上も化学合成農薬や化学肥料を一切使用せずに、
梅の栽培を続けておられる谷迫さん。
志を同じくする仲間とともに、青梅の出荷だけでなく、梅干の仕込みもされています。
漬込み場の周りは、見渡す限りの緑。
見晴らしの良い吉野の山間にあり、屋上の天日干し場に立つと天気の良い日は絶景です。
その景色の良さ以上に、驚いたのは漬込み場のエネルギーの強さと酵母の力強さでした。
まろやかで美味しいと頂いた梅酢は、数日置くとペットボトルの蓋が飛びます。
運送に耐えるように発酵を止めようと、フィルタにかけたり加熱したりしましたが、
しばらくすると酵母数が徐々に増え、液面には酸膜が張ってしまいます。
酵母パワーに満ちた漬込み場で、梅干を仕込んで頂いたらさぞかしステキだろう!
と谷迫さんに頼み込み、「低温製法 海水塩」で漬けて頂きました。
「低温製法 海水塩」は、湯煎でゆっくりと塩を結晶化させた、柔らかで優しいお塩です。
谷迫さんの育てる野生の力に満ちた梅に、柔らかな塩で合うのかは疑問でしたが、
土用干しで頂いた梅酢は、漬けあがったばかりなのに塩辛さも荒々しさもありません。
谷迫さんは、梅酢が上がるか心配されていたようですが、漬込み時期に入ってきた
「大きさも実の肌も一番」と太鼓判の南光種の青梅が、
姿美しい梅干に仕上がっていました。
たった一年寝かせただけなのに、熟成度合いは3年ものと遜色のない、
作り手と作り手、塩と梅、原料と場のすべての出逢いが調和した「出愛い」の梅干です。
圃場を訪問したり、作り手と話したりしても、
変わらず「製法」や原料ばかりを気にかけていた私。
一物全体の理念は、環境まで含んで「全体」なのですね。