私は大阪生まれ兵庫県育ちのバリバリの関西人ですが、小学一年生のころ、二ヶ月間だけ鹿児島に住んでいたことがあります。そのころの話はなかなかインパクトが強いようで、私がバリバリの関西人だと知っている人ですら、その話を聞くと、私のことを鹿児島出身だと思い込んでしまうみたいです（笑）。

大阪の小学校へ入学して片道45分の登下校にもなれた6月。父方の祖母が倒れて入院してしまい、農業を営む祖父を手伝うために大阪から鹿児島の祖父母宅へ帰ることに……。私は小学一年生の6月という中途半端な時期に、父も通っていた鹿児島の小学校へ転校したのです。母に学校まで車で送迎してもらって一週間目の早朝のこと。突然、祖父から「いつまで甘えてる！みんな学校まで歩いて行ってる、お前の父さんもここから通っていたんや！一人で歩いて行かんか～！」と傘を持って追いかけ回され、号泣しながらなんと片道徒歩2時間の登下校が始まりました。

友達もおらず、畑と茶畑しか見あたらない自然に囲まれた通学路を一人で2時間歩き、さらに学校へ着いたら朝の会までにグラウンドを2周走って、グラウンドに落ちている小石を10個拾うというルールまでこなす日々。長距離を歩きなれていなかったため、時間制限がある登校は辛かったです。そして下校時は、空腹と喉の渇きとの闘い。ホンマに、毎日必死でした。

歩いて通うようになると、途中まで一緒に帰る友達ができ、彼らのおかげで下校時の空腹が満たされるようになりました。彼らが木の実や野イチゴがなっている場所に連れていってくれるのです。みんなで楽しく摘んだあとは、近くのお墓に行き井戸水で洗って食べたり、たまに雑草を引っこ抜いて食べたりしながら帰宅しました（食べられるか、彼らにチェックしてもらっていました）。歯ごたえがよいもの、ぬるっとしたもの、酸っぱかったり、苦かったり……（笑）。彼らと別れた後も「あの草（実）は食べられるんかな？明日、聞いてみよう！」と道端を観察しながら一人の時間も楽しく過ごせるようになりました。

鹿児島の小学校に通学したのはたった二ヶ月弱のことですが、今振り返ると、貴重な体験だったと思います。この話をすると、「うそやん！いつの時代の話？」と言われますが、ギリギリ平成の話。あの時間は今でも私の気持ちを癒してくれる「心の薬」のひとつです。

私が作ったジェラートが皆さんの「心の薬」になりますように。そんな願いを込めながら、私は今日もジェラートを作るのでした。