父に似た人を見かけると目で追ってしまいます。すっかり白くなった髪に小柄だけどがっちりした体格と作業服。私の父のイメージは仕事人間・超丈夫・変わり者です。父は20代の会社勤めのときも、休みの日はアルバイト。その後自営業になってからは、朝5時ごろに家を出て徹夜仕事をすることも多々あり、休みの日は請求書作成などの事務仕事と身体の休息に充てる日々。家族で出かけた記憶はほとんどありません。基本的に休みはなく、まさに「24時間戦えますか」のキャッチフレーズ通り、仕事づくめの毎日でした。
ヘビースモーカーで仕事が終わればビールが楽しみ。家ではなぜかパンツ一丁でいることが多く、いつからか固いほうが良いと布団で寝ずにフローリングの上に昼寝用のい草を敷いて寝たり、冬はコタツに入ったままや安い寝袋を買って寝たりしていました。それで回復できるのかと不思議でした。
私が高校生のころだったでしょうか。家に近づくにつれて笛の音が聞こえ、不思議に思いつつ玄関を開けると目の前にパンツ一丁の父が寝そべってリコーダーを吹いていました。衝撃的な光景に「えっ!」と内心驚きながらも、年頃で会話も少なかったのでなにもつっこまずに真顔で父をまたいで、家に入ったことがあります。遠い昔に学校で習った曲を思い出しながら吹くのが、ストレス発散だったようです。
また、父は病院に行こうとしません。手を怪我して傷ができたときは殺菌と言いながら熱いお湯につけ、「こうすると瞬間的に皮膜ができる」といい、足を怪我して引きずるように歩いていたときも自然に治るのを待つだけでした。
「固いものを食べなあかん」とさつまいもを生で食べる姿に驚愕し、弟からは「原始人」とつっこまれていました。昔からお腹を壊しそうな怪しい食品でも父なら大丈夫だと皆思っていました。
仕事のことを聞くと70代なのに?と驚くような力仕事もあるので最近よく目にする建築現場などの事故ニュースが頭をよぎり心配になります。数年前から父は仕事を減らし、田舎へせっせと通っています。水道も電気もガスもない土地に自分で小屋を建て寝泊まりし野菜を育てています。食事は? トイレは? 熱中症対策は? 熊や鹿、蛇は来ないのかなど心配になりますが、本人は「大丈夫や」と楽しそうです。あれやこれやと考え手を動かすのが楽しい様子。本当に私と血が繋がっているのかと思うほど丈夫で羨ましい。
今年も厳しい夏がきます。私が呆れるぐらい元気に過ごしてほしいです。
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村上 紀子(むらかみ のりこ)
古民家暮らしで室内に虫がいて当たり前の生活。虫嫌いの娘が叫ぶ声を聞いて駆けつけるため、部屋に虫取り網置いてます。この原稿を書いている今はサッカーワールドカップに夢中。
