カカオレート・ラボの開店から3年。私はこの時間のなかで、カカオレート・ラボを通していくつもの夢を叶えることができました。そのなかでも、今年特に思い入れ深く実現した夢が、東ティモール産のカカオ豆を使用したカカオレートを発売することです。
高校生のころに出合った東ティモールという国。その魅力に強く惹かれ、大学生のころには「この国のことを少しでも多くの人に伝えていきたい」と思うようになり、それを自分のライフワークとして生きていくことを決めました。
東ティモールは2002年に独立したアジアで最も新しい国で、国民の約半数が19歳以下という、若いエネルギーに満ちた島国です。一方で、独立以前には油田を巡る武力行使が繰り返されてきた歴史もあります。
高校生だった私にとって、独立戦争が教科書のなかの出来事ではなく、同じ時代を生きる人々の現実であることは大きな衝撃でした。それでも前向きに、笑顔で日々を生きる人々の姿が、今も心に強く残っています。
この地域はカカオ栽培に適した環境であるにもかかわらず、栽培はまだ一般的とはいえません。苗を植えても買い取り先がなく、切ってしまう農家さんもいます。また、発酵などの工程が十分におこなわれず、本来の風味を引き出せないまま安価で取引されてしまう現状もあります。
現地を訪れた際、試作品のチョコレートを農家さんに渡したとき、こんな言葉をかけてもらいました。「自分は飛行機に乗ったことも、日本に行ったこともないけれど、私の作ったカカオが、私の代わりに飛行機に乗って、世界を旅して帰ってきてくれた」喜んでもらえたら、という気持ちで持参したチョコレートでしたが、こんなにも美しい言葉を返してもらえるとは思ってもいませんでした。
このカカオ豆プロジェクトは、まだ始まったばかりです。収穫量も多くはなく、豆の味や品質にもばらつきがあります。だからこそまだまだ可能性があり、これからパートナーのNPO法人パルシックさんとともに、カカオの品質向上を目指していきたいと考えています。
そして、大きな夢をひとつ叶えた私には、新しい夢ができました。それは、東ティモール産のカカオを使ったカカオレートで国際コンテストに入賞すること。そして、カカオをコーヒーと並ぶ主要な産業へと育て、笑顔の絶えないこの国の持続可能な発展に貢献することです。私の新しい夢をぜひ温かく見守ってください。

プレマルシェ・カカオレート・ラボ
店長
中川 愛(なかがわ あい)
母校である自由学校の教員を経て、プレマ株式会社に入社。高校生時代に東ティモールと出合い、残酷な歴史を背負いながらも、笑顔が絶えない国民性に感銘を受ける。目標は東ティモールのことを少しでも多くの人に伝えること。
