以前から、かみ合わせの正常を保つ為には左右のアンバランスをなくすことだとお話ししてきましたが、毎日の生活の中で自然に自分の身体の中心力を整えていた動きがあったことに気がついたのでお話ししておこうと思います。
最近の日本の生活は食事も勉強も仕事もほとんどが椅子に座るスタイルになってきていて、都会では洋間しかないお宅が増えてきています。新築しても畳のある日本間を作らない家も多くなってきているのではないでしょうか。その為なのか普段生活の中で膝をつくことがとても少なくなっているように感じます。
そんな中、毎朝、神様やご先祖様(神棚やお仏壇)に手をあわせる習慣のあるお宅では、毎日必ず床に膝をついて蝋燭に火を灯しお線香に火をつけて木魚とお鈴をならし手と手をあわせて静かに呼吸をして暫し思いの世界に入ります。どこかに痛みが有る場合は別ですが、人は膝をついて身体に左右の差があるのは気持ちが悪いので、僅かな時間でも自然に左右の均等を図ろうと身体を調整しようとします。
しかも膝をつくと決して猫背ではいられません。核家族が増えて家に仏壇がないお宅も沢山あると思いますし、一人暮らしの若い方でしたら忘れかけている動きかもしれませんが、この一連の動作と時間の流れには神仏を敬うことだけではない、非常に大切なものが隠されているのです。食事の前に頂きます、と手をあわせることも同じ行いです。
余談ですが私は幼い頃、朝起きたら、洗顔をして、歯磨きをしてから必ず神仏に手をあわせるようにと毎日、毎朝父親にしつこく言われたものでした。それが私のルーティーンだったのです……。
最近ではラグビーの日本代表選手、五郎丸歩選手がキックの時にとる独特なポーズがたいへん印象的です。彼のこのポーズは元イングランド代表のジョニーウィルキンソン選手に手解きを受け、そこにアレンジを加えたところから始まったようですが、彼なりの解釈と一連のルーティーンで中心力をもとめて確実に成果を上げていることは明白なようですね。
そしてもう一つ大切なことは続けるということです。人はついすぐに結果を求めがちですが、明日になったら急に別人になれるわけはありません。経年的に少しずつ身体が歪んだり悪いところをカバーしていくように、それを回復するには毎日少しずつでも続けること、それが長い目で見て健康に近づく道だと思います。
最近の歯科の学会では歯と全身の関わりや頭蓋の歪みの影響などが盛んに題材となってきています。しかしそれらが沢山の歯科医師に伝わり理解され実証され、沢山の患者さんの治療に活かせるようになるまではまだまだ長い道のりがあるように思います。事実、歯医者は歯だけ診てればいいのよ!!と言われてしまうこともあります……(泣)。
歯が単独で身体の外にあるわけではないので、「身体は一つに繋がっている」の信念のもと、私は、大切なことを皆さんに伝えることを続けていきたいと思っています。
2015年も残り僅かとなりました。2016年も皆様にとって素晴らしい一年となりますようにお祈り申し上げます。
田中 利尚
歯科医師 整体師 日本抗加齢医学会専門医 国際統合医学会認定医 「咬合(かみあわせ)を制する者は歯科をも制す」という、歯科医学の見落とされている最も大切な力学的調和という根本理論に触れ、かみあわせを追求。しかし身体が変位していると良いかみ合わせを構築できないところに西洋医学の限界を感じ統合医療を目指し東洋医学(整体)を勉強。 顎が痛い、お口が開かない、首肩の凝り、腰痛、うつ病までを含む顎関節症の治療にも取り組んでいる。 「健康は歯から」を確信している。 |