食の壁を超えるヘルシーなジャンクフード②
ド イツ・ベルリンでの「苦行」から帰国した私は、現地で購入したヴィーガン用のマヨネーズ風調味料を味見することから開発をスタートしました。欧州のヴィーガン市場は非常に広く、専門店の棚には多種多様な品が並んでいますが、その多くは「動物性でさえなければ良い」という考えのもと、大量の合成添加物が使用されているのが現実です。日本国内の製品も豆乳ベースのものが主ですが、納得のいく味には出合えませんでした。「既製品ではなにも解決しない」――そう確信した私は、自らの手で理想のものを作る決意をしました。ジェラートを作る過程とドレッシングやソース類を作る過程はとても似通っています。特に乳化剤を使わない乳化に関してはジェラートで培ったノウハウがあり、「自分なら必ず素晴らしいものができる」という根拠のない自信を感じていました。
粉々の自信
当時、ジェラートの国際コンテストで連勝していた私は、意気揚々と一回目の試作を自宅に持ち帰りました。しっかり乳化してボリュームもあり、時間が経っても分離しない。完璧な出来栄えだと自負し、二人の娘たちに「ほらどうだ!」と言わんばかりに試食させたのです。このときの自信は、味というより、配合した原材料の素晴らしさに対するものでもありました。有機豆乳、有機レモン、有機リンゴ酢、米油、さらにバオバブやアガベイヌリン、天然海塩などを組み合わせたそのレシピには、血糖値の抑制、ミネラル補給、脂肪燃焼、抗酸化力、自律神経を整えストレス緩和、肝臓のケア、腸内環境の改善、消化にも効果的で気持ちが上向くという設計の狙いがありました。
しかし、娘たちの反応はいまいちで、自信満々な父親を前に「おいしくない」とまでは言いませんでしたが、その顔には「まずい」と書いてありました。その表情を見た瞬間、私の自信は粉々に砕け散りました。同時に、私の味覚もまた、既存のヴィーガン系マヨネーズ風に汚染されてしまっていたようで、なにが本当においしいのかを見失いかけていたことに気づかされました。
私はゼロベースでレシピを見直しました。特に慎重に選定したのがリンゴ酢です。リンゴ酢が変わればまったく味が違うものになるのを発見し、自社で扱う5種類のリンゴ酢を徹底的に比較しました。また、私のジェラートを愛してくれる欧米人の方々の味覚にも響くよう、塩も慎重に選定しました。
そうして誕生した「ヴィーマヨ®」の最大の特徴は、一切の加熱工程を経ずに常温で作り上げる点にあります。これにより、熱に弱いバオバブのビタミンCや、リンゴ酢に含まれる「マザー」といったスーパーフードとしての食機能を100%維持することに成功しました。加熱してしまえば失われてしまうこれらの恩恵を、非加熱のままおいしく感じる組み合わせを見つけ出すことが重要でした。
このヴィーマヨは、プレマルシェ・オルタナティブ・ダイナーのメニューの核として欠かせない存在となりました。面白いことに、非加熱で仕上げているにもかかわらず、加熱調理に使うと驚くべき変化を見せます。焼くと非常に美しいきつね色に色づき、特有の風味を醸すのでチーズのような使い方ができます。ベジタリアンの方にはチーズの旨みを引き立てる存在として、ヴィーガンの方には、焼くと形が崩れやすいヴィーガンチーズを支え、香ばしさを補うパートナーとして機能します。
当店の料理で感じる「未体験の旨み」「爽やかさ」「食後の身体の軽さ」「消化の早さ」の理由のひとつは、このヴィーマヨにあります。まさにジャンクフードを食べながら、健康的な機能と体感、優れた味を感じることができるのは、私のボロボロになった自信から生まれたといっても過言ではありません。
