だれしも、人生に影響を与えた本があると思います。私にとっては、高校2年生のときに読んだロバート・ハリスの『エグザイルス:すべての旅は自分へとつながっている』でした。彼のアウトローな生き様は、若く無垢な心に強烈な一撃。世界放浪に憧れた私は、それ以降、あちこちに旅をしました。
彼が旅をしながら自分の居場所を探し求めていたように、旅は単なる異国の見物に留まらず、精神的な旅の側面も持っています。日常の役割から離れ、自分の本音に耳を傾けること。それまでの常識が崩れ、世界の見え方が変わること。そしてたいてい、旅先で遭遇することは、そのときの自分にとって必然です。自分で意識的に行き先を選んでいるようで、じつは見えない力に導かれている。不思議ではありませんか。
「旅に出たい」と思うとき、無意識の自分が、意識のパラダイムシフトを望んでいるのかもしれません。
今は子育て真っ只中でもあり、気ままな旅に出ることは封印しています。でも時々、いつもの景色からはみ出したくなる。そんな私が、数年前に始めたのが「ブレスワーク」という呼吸の実践です。誘導や音楽に合わせて、意識的に速い呼吸を繰り返すことで、普段とは異なる変性意識の状態に入ることができます。
もともとは、1960年代に精神科医がLSDのような薬物に頼らずに変性意識へと入るために考案したセラピー。自分の呼吸だけで、意識のトリップができてしまう。そう聞くと、いっきに怪しくなりますね(笑)でも自分の内側の世界に深く潜り込むプロセスで無意識下で変容が起き、最後は、あら、すっきり! 戻ってくると世界の見え方も少し違って見えるのです。この「内面の旅」にすっかりハマってしまいました。行って帰ってくるまで、わずか1時間ほどです。
私が初めて体験したとき、今ここに生かされている奇跡に感謝がわいてきて、自分自身が愛おしくなり、大きな幸福感に包まれました。体験することは毎回違いますが、思ってもいなかった自分の感情や考えが体験に映し出されるのは同じ。普段、いかに限られた意識や信念に縛られているかに気づきます。一時的にでもそこから解放され、「自由だ」と感じられることが癒しにつながるのかもしれません。ここで、前出の本の「すべての旅は自分へとつながっている」が腑に落ちてきます。
忙しさのなかでも自分本来のリズムを取り戻すために。外の世界も、内の世界も旅し続けていたいと思います。

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内田 光香(うちだ みか)
京都暮らしを経て、2023年から沖縄に在住。娘が「十三祝い」や「エイサー」など沖縄文化に触れて育つのを興味津々で見ています。本誌「特集」の取材執筆やオルタナティブ・チョイスなどを担当しています。
