毎月思うままに原稿を書かせていただいておりますが、こちらからの一方的な話だけではなく、読者の方からのリクエストや質問、また今歯科で悩んでいることや困っていることなど、具体的な状況がわかれば、お答えしていきたいと考えております。そんななかでいくつか質問を頂きましたので、今回はそれにお答えできたらと思います。
歯科医院を選ぶのは難しい
頂いた質問のひとつが、「自分にあった歯科医院選びとは、どういったものでしょうか」という質問です。この質問に対して、私は、「残念ですが、世の中で一番難しいのが歯科医院を選ぶことなのではないでしょうか」と思っています。
歯科医院を選ぶ基準はなんでしょうか。その方のお悩み、治療技術や治療方法、知人の紹介やネットの口コミ、医師やスタッフ、病院の設備や雰囲気、もちろん通いやすい立地も大切ですし、時間のない方にとっては早さも大事かもしれません。最新式設備が整っている病院や、新しく綺麗な病院のほうが良いという方は多いでしょう。
患者さんがとても多くはやっている病院がよいかというと、はやっているのにはもちろん良い理由があると思いますが、たくさんの患者さんを時間内に診察しなければならないために、言い方を変えると、なかなかじっくり腰を据えて治療ができないかもしれない、という考え方もあります。かといって、はやっていない歯科医院がよいかというと、本当にはやっていない悪い理由がある場合もあれば、一見はやってないように見えても、一人ひとりにじっくりと時間をかけて治療するために予約を制限している場合もあるかもしれません。また、人から「あそこの歯医者さんがいいよ」と紹介された場合に、紹介してくれた人が良いと思った点と紹介された自分の状態や感覚などが相違していると、なかなか良かったとは思えない状況がでてくるかもしれません。
歯科医院選びは、さまざまな条件に妄想が膨らみ、結局グルグル回りで決断できずにいることも多いのではないかと思います。そうやって迷うのは、どんなことにも二面性があるからではないでしょうか。
経験から学んだ病院の選び方
私は歯科医をしておりますが、小さいころから小児ぜんそくがあったり膝を怪我したりと、その度にそれぞれの病院に行き、いろいろな経験をしました。そのなかで、先生と対面しているときには自分の症状や状態をもっと知ってもらいたいと思うのに、なかなか先生と話ができずに次の患者さんのところに行ってしまい、こんな状態で任せて大丈夫なのかなと思ったことが多々ありました。病院とはいえ、初めて会った人に自分の症状や思いや痛みを短時間で的確に理解してもらうのは難しいものです。自分の身体を預けるということに対してこちら側が慎重になりすぎていたのかもしれませんが、そんなことが多かったように思います。そのような、ある意味貴重な体験があったことが、私が今の完全予約制の診療体系を作った根本なのかもしれません。
先生の技術は直接治療を受けてみなければわからないですし、受付やスタッフの対応も実際に行ってみなければわからないものです。そんななかで病院を決めなければならないわけですが、やはり、実際に病院に行ってみてその雰囲気や先生の人となりを見ることが一番良いのではないかと、自らの経験から思います。自分の一番の希望を叶えてもらえるところが良い病院なのだと思いますが、歯科医学的に現状に適した理想を提案し、それが実現でき、なおかつ痛みや苦痛がないということは、もっとも大切で外せない基本だと思います。また、安心して病院にかかるためにも、現状の症例に対して経験が豊富なことも必要なことでしょう。